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2015年7月 2日

今、米国で注目の "Marketeer" (マーケティア) とは?

emi さんが "Marketeer" という記事を書いておられる。まだ日本ではまったくお馴染みじゃないが、英語には "marketeer" なる言葉があるらしい。 "Marketer"(マーケター)ではなく、"pioneer"(パイオニア)や "volunteer"(ボランティア)と同様に、「マーケティア」と発音すべき単語である。

この単語は単に「マーケティングをする人」という意味の "marketer" とは異なり、上述の "pioneer"、"volunteer" などの単語から喚起される意味合いを含み、極めて先進的なマーケティングを、企業活動に従属するのではなく、生活者視点から自発的に独立して行う人を指す。今、米国ではこのような自由なマーケティングが時代を切り開くものとして注目されている。

…… というのは、真っ赤な嘘である。手持ちの Wisdom 英和辞典では、「市場商人、(特定の)市場制度の支持者」 とされているが、はっきり言って、こんな説明ではよく分からない。「市場商人」なんて言っても、市場に立脚しない商人なんて見たことないし。しかし Oxford Dictionaries では、そう言うほかないようなことになっているようだ (参照)。

とはいえ、実際には "marketer" とほとんど違わない、あるいは、多くの人は違いをあまり意識しない言葉として使われているらしい。emi さんはとりあえず 「マーケティング担当者」という訳語を当てようとしているようだ。 "Marketer" というよりちょっと今風な感じであるらしい。

とまあ、ちょっと小洒落た単語ということなので、日本で流行ってしまうかもしれず、そうなると、emi さんは次のような心配をしておられる。

この語の存在が知られたら一気に流行りそうだな。
ただ、そういう感覚派の人たちのやることなので、
「マーケターと何が違うんですか?」ってなったとき
いいかげんな説明をつけて広めちゃうんだろうな。
そうやってまたガラパゴスなカタカナ語が生まれるのかな。

というわけで、emi さんが危惧しておられる事態が生じるとしたら、多分こんなようなことになるんじゃなかろうかと、先回りして書いてみたわけなのである。前もってこんな風な「釣り」と「バラし」をしておけば、あまり妙なことにはならなくて済むんじゃなかろうかと思ったわけなのだが、なにしろ「感覚派」の人たちのことだからそんなのお構いなしに、いろんなことを言い出すかもしれない。

まあ "enginieering"(エンジニアリング)みたいな感じで、 "marketeering"(マーケティアリング)という言い方が、 "marketing"(マーケティング)よりちょっとお洒落っぽい、「最近の高度なマーケティング」というような雰囲気を指す言い方として、一部の「感覚派」が使い出すことはあるかもしれないね。

そういえばその昔、"image engineering" なんてことを標榜する「感覚派英国人」のマーケティング・コンサルタントがいたなあ。ちっとも役に立たなかったけれど。

 

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コメント

おそらくは、オポチュニスティックな売り込みに対する蔑称ないし自虐的なユーモアの表現として使われ始めた造語(marketerとracketeerとの合成という説も有り)がいつの間にか市民権を得たという感じではないでしょうか。
動詞形にしてみると、わりと明確になります。

"I'm shocked, surprised and appalled, and can only assume that some of you must work in marketeering, not marketing"
(marketerかmarketeerかという議論の掲示板より)。

オンライン辞典では下記のような注釈もありました。
Usage notes
Used especially in the term black marketeering, referring to the black market.
http://www.yourdictionary.com/marketeering

投稿: きっしー | 2015年7月 3日 10:43

きっしー さん:

ほほう、そうだったんですか。

Marketing がまっとうな話とすれば、marketeering は、中東辺りの前近代的なバザール経済の市場に分け入るみたいな印象から始まったんでしょうかね。

投稿: tak | 2015年7月 4日 05:27

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