"I love you." と "This is a pen."
私には長年にわたる不思議があった。それは「どうして日本人の多くは、"I love you." を発音する時に、"I” と “you” にアクセントを置いて、"love” をあっさりと言うんだろう?」というものだ。
実際、多くの日本人はカタカナとしての「アイラブユー」は、味も素っ気もなく平板アクセントで発音するが、英語としての "I love you.”というフレーズを声に出して読ませてみると、大抵「アイ・ラブ・ユー」 と発音する。(フォントの大きさの違いによって表現してみたが、スマホ表示だとその変化がわからないかもしれない)
これ、ネイティブ・スピーカーの実際の場面ではまずこんなことはない。相手を見つめて言うのだから、「私は」と「あなたを」の部分は言わずもがなであり、強調する必要なんかない。言いたいのは「愛してる」ということに尽きるのだから、当然のごとく真ん中の "love" を強く言う。多くの日本人式の言い方なんかしたら、「僕はぁ、君をぉ、ごにょごにょ」に聞こえてしまい、確実にフラれてしまう。
「なんでまた、こんなに変な言い方になってしまうんだろう」と、私にはずっと疑問だったのだが、今日、突然の天啓のごとくにその疑問が氷解した。気付いてみれば、「なんだ、そんなことだったのか!」と言いたくなるほど、簡単なことだ。
日本人が 「愛」 を軽視しているからとか、照れくさがっているからとか、そんな大げさな理由では決してない。それほどまでにシリアスな意味合いを、英語のこのフレーズに投影しているとは到底思われない。
それは単に、多くの日本人が "I love you." を "This is a pen." と同じリズムとイントネーションで発音してしまうからである。思えば日本人にとっての英語は、すべて "This is a pen." に集約されてしまうのだ。
思えば、日本人が発音すると "I am a Japanese." も "I go to school." も "I like football." も、単純なフレーズはみんな同じ調子になる。これもすべて "This is a pen." のバリエーションに過ぎないのだ。
そうだ、きっとそうに違いない。ああ、すっきりした。
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コメント
なみだぁ〜のとぉおぉ〜きょぉ〜!
投稿: 乙痴庵 | 2015年7月 8日 18:07
乙痴庵 さん:
黒沢明とロスプリモスだったっけ?
投稿: tak | 2015年7月 8日 20:10