生き返ったヒラリー・クリントン
私はヒラリー・クリントンには何の恨みもないのだが、昔から辛辣なことを言い続けてきている。9年前の中間選挙の時には「ヒラリーは、ただスマートなだけかも」と評した。何をやらせてもそつなくこなす常識と「勘の良さ」はちょっとしたものだが、質問への応答の仕方が想像通り過ぎて(つまりマニュアル通りってこと)、人間的な魅力が感じられないのだ。
つまり、彼女はどう振る舞えば魅力的に見えるかを知っていて、その通りに演じているだけだったのだよね。9年前のジョージ・ブッシュ(息子の方)との大統領選を私は「何を言えばスマートに見えるかを熟知しているヒラリー・クリントンと、どのように振る舞い、何を言えば馬鹿に見えるかを知らないジョージ・ブッシュ」の戦いと言っている。
その上で、米国南部を中心とする保守層は「スマートな人間が嫌い」なので、どう転ぶかわからないとしていて、その懸念通り、馬鹿に見えまくりだったジョージ・ブッシュが勝ってしまったのだった。本当に世の中はマニュアル通りにはいかないものなのだ。
さらに前回のバラック・オバマとの指名争いの時には、「賞味期限切れのヒラリー」とまで書いちゃっていて、米国初の女性大統領が生まれるとしたら、ヒラリー以外の誰かだろうなんて言っている。しかし、ここに来て私はこの前言を撤回しなければならないようだ。
ヒラリーは一度賞味期限切れしていたが、周回遅れで走っているうちに、いつの間にか生き返ってしまったようなのである。リモデルしてラベルを貼り替えたような勢いになっている。
彼女はこのほど、米国の再生可能エネルギー生産を大幅に拡大する方針を示し、大統領就任から 4年以内に(つまり最初の任期以内に)太陽光パネル 5億枚以上を設置し、10年以内(任期は切れてるけどね)に国内すべての世帯に十分なクリーンエネルギーを供給するという目標を示した。
さらに「公平な経済」という理念を掲げ、「富める者がより富めば、低中所得者層にも富がしたたり落ちる」という新保守的な考えが誤りだったことを指摘した。低中所得者層の家族の生活を引き上げることで、国の経済成長につなげる必要性を説き始めている。
私のような者からすると、「ようやくそこに気付いたか」ってなぐらいのことだが、まあ、これまでのヒラリーからはあまりイメージできなかったことを、大まじめに言い始めていることは評価していいと思う。望むらくは、今言っていることを本当にしっかりやってもらいたい。
とくに共和党候補のトップが、あの怖いもの見たさ人気のドナルド・トランプというのだから、現時点では最も可能性の高い候補ということになる。長い選挙戦だから、これからどんなどんでん返しがあるかわからず、序盤でトップを走っていた人間が最後に笑うことにはならないのが、米国の大統領選だが、今回ばかりはヒラリーも過去 2回でかなり学んでいるはずだから、期待していいかもしれない。
【2022年 6月 24日 追記】
今さら遅すぎる追記で恐縮だが、ヒラリー、やっぱりダメだったわけである。この時の大統領選直後に、「米大統領選挙に関する記事では、めちゃくちゃ反省だ」という記事を書いているので、宜しければどうぞ。
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