「環境的回心」 ということ
ちょっと旧聞になってしまったかもしれないが、Christian Today の "ローマ教皇、回勅「ラウダート・シ」発表 環境問題で回心呼び掛け 正教会・WCC・聖公会・ローザンヌも歓迎" という記事について触れよう。フランチェスコ 1世 (最近は「フランシスコ」 という表記が目立つが、私としてはずっと「フランチェスコ」を採用しているので、これで通させていただく)が、「回心」を呼びかけているというのは、最大限に大きなニュースだ。
「回心」というのは、「えしん」と読めば仏教用語で、「邪心を改めて仏道に帰依する」という意味だが、キリスト教では「かいしん」と読み、英語で言えば "conversion" である。「改宗」あるいは 「これまでの生き方を悔い改めて、信仰に目覚めること」といった意味だ。動詞は "convert" で、野球の守備位置を変えることも同じ単語を使う。
つまり、これまでとはがらりと変わった立ち位置に立つことである。フランチェスコ 1世は、このほどの回勅で「環境的回心」(ecological conversion)が必要であると訴えている。つまり、これまでの「人間中心主義」を改め、「統合的エコロジー」によって自然との共存を目指す生き方をすべきとしている。
つまり、これまでは「自然は障害であり、人間によって作り替えられ、乗り越えられるべきもの」という「人間中心主義」を改め、「自然は保護し、共存すべきもの」としている点で、従来の西欧的哲学をひっくり返すほどの意味をもつのである。
これはむしろ東洋的な思想に近付いているともいえるが、同時に最新の科学的知見をしっかりと取り入れている点で、科学と宗教の和解を促進するものともいえる。つまり今回の回勅は、十分な科学的裏付けをもつ現代的なものなのだ。そうした点で、私はフランチェスコ 1世は歴史に残る偉大な教皇であると思う。
私は過去にも "「フランチェスコ 1世」という名のローマ教皇" (2013/03/15)、"ローマ教皇が、自然破壊は「モダンな罪」と指摘" (2014/07/13) という記事で、「今のローマ教皇はエコロジカルな視点をかなり重視している」と指摘しているが、今回の回勅はその本領を発揮されているようなのだ。
重要な点は、この回勅をカソリックのみならず、他のキリスト教諸派も歓迎しているという点である。もっとも保守的な勢力とみられていたカソリックが、これほどまでにラジカルなエコロジーを推進するというのは、西欧の宗教哲学が大きな転換を図っているということであり、世界の精神世界に大きな影響を与える。
世界は今、大きく方向変換を始めているのである。これはフツーの日本人が思っているよりずっと大きな意味をもつ。これを理解できないと、世界の潮流に取り残されると言ってもいい。原発再開なんて言ってる場合じゃないのである。
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