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2015年8月24日

「勝ち組/働き者」と「負け組/怠け者」は、相対的なものである

All About の "「働かないアリ」のおかげで、アリの社会が長く存続できるワケ" という記事を読んで、私が 13年前に紹介した「グッピー理論」というのを思い出した。

まず、「働かないアリ」の件だが、これは All About というサイトのいつもの手で、ちょっとオーバーな見出しにしているもののようだ。決して「働かない」というわけではなく、要するに「反応閾値(いきち)」の問題で、「率先して働くアリ」と、「働き出すのに時間がかかるアリ」がいるというのである。

個体間の「反応閾値」の差異によって、必要に応じた労働力がうまく分配されているらしい。率先して働き始めたアリがちょっと疲れてしまった頃に、閾値が高くて調子が出るまでに手間のかかっていたアリがようやく働き始め、結果としてアリの労働が平準化され、アリの社会が円滑に運営されるというのである。

 

おもしろいことに、閾値が低くて率先して働き始めるアリばかりを集めると、その中で閾値が高くなって、調子が出るのに手間のかかるのが現れて、結果的にアリ社会がうまく機能するようになる。働き者ばかりを集めれば全員競って働き始めるってわけじゃない。同様に、閾値が高くてなかなか働き始めないアリばかり集めると、その中で閾値が低下して率先して働き始めるアリが出てくる。

働き者は天性の働き者で永遠に真面目であり続けるってわけじゃなく、同様に怠け者が天性のもので、どう転んでも働き者になれないってわけでもない。人間に限らず、アリの場合でも世の中というのは、案外うまくいくようにデザインされているようなのである。

で、「グッピー理論」である。これは私が「知の関節技」というサブサイトに紹介した(参照)、元龍拡散会長、故・藤井康男氏の唱えた説である。ちょっと自分のページから引用しよう。

氏によると、水槽に熱帯魚のグッピーを 100匹入れて飼うと、餌をやっても、それを口にできる「勝ち組」と、ありつけない「負け組」に分かれる。それはほぼ 50匹対 50匹の半分ずつになるという。それでは可哀想なので、負け組だけを別の水槽に移して、50匹ずつにする。すると当初の勝ち組と負け組の中でも、それぞれ 25匹対 25匹で、新たな勝ち組と負け組が生まれてしまう。

これだけでも充分興味深いが、本当におもしろいのはそれから先で、新たに生じた「勝ち組の中の負け組」と、「負け組の中の勝ち組」を一緒の水槽に入れると、今度は、一度は負けたはずの「負け組の中の勝ち組」の方が餌にありつくようになるというのである。

この 「グッピー理論」 の教訓は、次のようなものだ。

  1. 集団はある環境の中におかれると、その中に優劣、強弱の差が必ず出てくるものである。

  2. 勝ち負けは、絶対的なものではない。一度負けても、次に勝ち癖がつけば、それからは勝ち続ける可能性もある。

  3. これを企業の人事に当てはめると、一流大学卒業の優秀な人材ばかり集めても、半分は使い物になるが、残り半分は戦力にならずに埋もれてしまうということである。逆に、三流大学卒の人材ばかり集めても、その半分はきちんと戦力になるということだ。

これをアリ社会と対比させてみると、やはり 「働き者/勝ち組」 も 「怠け者/負け組」 も、絶対的なものではないということがわかる。状況に応じてどちらにもなる可能性があり、そしてそれぞれに存在意義があるのである。

 

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