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2015/08/30

遺伝子組み換え作物に反対することは 「非科学的」 なのか?

当初は「遺伝子組み換え作物」(以下、"GMO" = genetically modified organism と標記する)に否定的な立場をとっていた毎日新聞記者の小島正美氏が、ある時期から開始した「バイアスの強すぎる報道や情報を是正する活動」の集大成として、『誤解だらけの遺伝子組み換え作物』 という本を 世に送り出すという。(参照

これは、アメリカ人が中心になって書いた"The Lowdown on GMOs" という電子ブックを翻訳したもので、結論的には「農家の方の選択肢として(GMO は)あってもよいのではないか」とする内容になっているらしい。まあ、早く言えば GMO 擁護の立場で書かれたものと言っていいのだろう。

小島氏は、2002年に米国の農業を視察し、実際に GMO の生産に関して取材したことをきっかけに、考えを変えたという。彼は「(GMO の)生産者は口をそろえて『収量は増えます』『農薬も確実に減ります』『殺虫剤をまかなくて済むので、環境にもいいです』と言うのです」 と証言している。

つまり小島氏は、GMO は「いいことずくめ」と言っているのである。「農薬を使わなくて済むので環境にいいし、しかも収量が増えるのだから、何が悪いのか?」というわけだ。どんどん拡大してしかるべきではないかということになる。

しかし、小島氏の主張は一見すると「いいことずくめ」のようでいて、実は落とし穴だらけとみることもできる。「農薬を使わなくて済む」といえば聞こえはいいが、その中身は、「害虫」と呼ばれる虫やバクテリアを寄せ付けないか、それらの生殖を阻害するような仕組みを、作物が遺伝子的に持つということである。

ということは、「農薬を使わないから環境にいい」という幻想のもとで、より深刻な環境改変につながることが確実だ。つまり種の多様性を人為的に破壊してしまうのである。さらにそれは「害虫」を抑えるだけでなく、こうした GMO 作物の栽培を推進することで、作物自体の種の多様性も損なわれる。

「それがどうした?」と言われるかもしれないが、このような「人間の都合による強引な自然操作」が、過去にうまくいったことなどないことを忘れてはならない。現在の状況に「最適化」する形で種の多様性が損なわれれば、今後一定の環境変化が起きた際に、それに対応できる可能性が著しく低下してしまうのである。

ずっとうまくいっていると思われてきた「化石燃料活用による経済発展」が、今や地球温暖化という大問題を引き起こす元凶になっていることをみれば、人間の一方的な都合による自然界の改変が、巡り巡って非常に都合の悪い結果につながる可能性は、非常に高いとみていい。

つまり一つの視点による「都合のいいこと」は、たいていの場合、総合的にみると「自然界のバランスを崩す」という都合の悪い結果につながる。それは当然といえば当然だ。自然というのは微妙なバランスによって成立しているものなのだから、それを局所的に変えてしまったら、全体のバランスが崩れて当然である。

最新の科学や哲学の世界では、すべての物事は非常に複雑に関係し合って成り立っているという「複雑系」の知見が優勢となっているのに、こと農業に関しては「人間の一方的な都合」に立脚して、大規模な種の多様性破壊に確実につながる意思が働いているというのは、かなりな驚きである。

「人間にとって一方的に都合のいいこと」は、結果的にいろいろな弊害を生み出す。GMO だけは例外という根拠はない。しかも従来のやり方で致命的なデメリットがあるわけではないのに、無理に GMO 適用を拡大するというのは、あまりにも強引なやり方といわざるを得ない。

 

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コメント

おっしゃる通り「いいことずくめ」があるはずがありません。
私たちはまだ、自然の摂理、仕組み、バランスを変えることの恐ろしさの一部しか知らないんですよね。


「遺伝子組み換え作物」絶対に反対。三菱モンサントも住友化学も、大嫌い。
日本の食を支配し、農家を壊滅的にすることが目に見えている TPP も、反対です。

▽遺伝子組み換えの何が問題?
http://altertrade.jp/alternatives/gmo/gmoreasons
▽悪魔のモンサント
http://blogs.yahoo.co.jp/tokaiama/1327855.html


この記事にコメントしたいと思いつつ、遅くなりました。

投稿: さくら | 2015/09/03 11:52

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