北京冬期五輪招致ソングのパクリ疑惑
北京冬季オリンピック招致活動のテーマソング『冰雪舞動』が、ディズニー映画『アナと雪の女王』の "Let it go" に似すぎていると、ネット上で話題になっている。中国お得意のパクリがこんなところにまで登場したかと、YouTube で聞き比べてみた。
客観的にいえる事実は、次の通り。
- キーが同じ (どちらも C)
- テンポもほぼ同じ (どちらも ♩= 144 ぐらい)
- リズムの刻み方もほぼ同じ
- アレンジ・コンセプトがクリソツ (とくにイントロのピアノの入り)
- ミキシングもクリソツ (ピアノのトーンはもろにそっくりに調整されている)
- メロディに関しては、とりたてて言うほど似ているわけじゃない
試しに上の方の "Ler It Go" を再生させてから、5.5秒後ぐらいの時間差で下の方の北京五輪招致ソングを再生させてみると、とても面白い。イントロから歌の数小節にかけては、あまり違和感なく同じ曲みたいに聞こえてしまうが、それ以後はありありと別の曲になってしまう。
つまり、曲そのものがパクリっぽいというよりは、キーとテンポとリズムを含めたアレンジとミキシングのコンセプトがほぼ共通しているので、曲想としてもろにそっくりに聞こえてしまうということだ。パクりじゃない曲をここまでパクリと感じさせてしまうのは、逆説的に素晴らしいアレンジ・テクニックである。
ということで私としては、作曲に関しては完全無罪で、アレンジが「罪作り」なのだと結論づけたい。大ヒット曲のアレンジにあやかるぐらい当たり前という中国的認識と、関係者の誰も「レリゴー」をまともには聞いたことがなかったので、「ヤバいんじゃね?」とも思えなかったことの合わせ技なのかもしれない。
それから最後に、最も重要なポイントは、映画 "Frozen" (日本語タイトルは 『アナと雪の女王』) の中国語タイトルが 『氷雪奇縁』 だったということだ。今回の招致ソングのタイトルが 『氷雪舞動』 だというので、アレンジャーとしてはつい余計なサービス精神で、同じイメージにしちゃいたかったのかもしれない。
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コメント
肝心のサビの部分に入ってからがだいぶ違うので……。おっしゃるとおりアレンジ面でのパロディというかオマージュというべきですかね。
これで思い出すのが、「ビートルズがクリスマスソングを歌ったら」という設定で作られた「Xmas!
The Beatmas」というアルバムです。演奏しているのはRubber Bandというビートルズのパロディバンド。
一番好きなのはこれかなぁ(原曲はAll My Loving)。
https://youtu.be/NxP4QSEKReQ
投稿: 山辺響 | 2015年8月 6日 11:45
山辺響 さん:
これはすごい!しばらくは頭の中で "Close your eyes..." に翻訳されてました。
アレンジの力は大きいですね。
投稿: tak | 2015年8月 6日 14:21