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2015年10月20日

クリーンディーゼルのコンセプトは元々無理があったのか?

先月 26日、「フォルクスワーゲンのスキャンダルは飛び火しないのか?」という記事で、「ゴキブリを 1匹見つけたら 100匹いると思え」という喩えをあげて、他のメーカーにもきっと飛び火するだろうと書いた。するとやっぱり出てきたようなのである。

英紙ガーディアンがスクープした英民間分析会社の最新データによると、日本メーカー 3社を含む 4社のディーゼル車の排気ガスから、規制値を大幅に超える有毒成分(NOx=窒素酸化物)が検出された。 4社というのは。メルセデス・ベンツ、ホンダ、マツダ、三菱自動車である。(参照

報道によると、ホンダの実際走行における NOx 排出は、規制値の  2.6倍から6倍の、平均 0.484g/km を検出。同様に、マツダの場合は 3.6倍、三菱は 1.5倍から3.4倍、メルセデス・ベンツは 2.2倍から 5倍の数値を計測した。

これに関してホンダは「ヨーロッパの規制値に合わせてテストしている」とコメントし、同様にマツダは「法令遵守の精神に基づき、全てのディーゼル車、ガソリン車が規制に沿うよう、多大な努力をしている」、三菱は 「NEDC(新欧州ドライビングサイクル=現行の標準)は、路上環境を対象としたことはない」、メルセデスは「路上環境下と実験室の結果は合致しないのが普通だ」とコメントしている。

これらの 4社は、フォルクスワーゲンのように意図的な規制逃れのプログラムを搭載していたわけではないらしい。確かに燃費データでもメーカーのカタログ数値は、実際走行による実感からはかけ離れている場合が多い。ディーゼル車の排気ガスデータも同様と言われれば、「そんなものかな」と思わないでもない。

しかし、三菱自動車の最小値の 1.5倍ならまだ話はわかるが、多くなると 6倍もの開きがあるというのは、いくらなんでも「違いすぎるじゃないか」と言いたくもなる。意図的な制御プログラムは搭載していないかもしれないが、エンジンそのものをテスト状態で有毒ガス排出を最小限にするように最適化してチューンしたことによる結果なのだろう。

要するに「テストさえクリアすれば、実走行までは面倒見切れない」という姿勢は、フォルクスワーゲンと五十歩百歩と言えそうなのである。

ヨーロッパでかなり受け入れられていた「クリーンディーゼル」というコンセプトは、元々無理があったと結論づけられても仕方ないのかもしれない。エコカー開発の今後は、電気自動車、燃料電池車の方向に向いてしまったとみていいだろう。

 

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コメント

私が契約している wi-fi ルーターは、最大150Mという触れ込みですが、実際は1.5M前後しか出ません。何と100倍の差がありますが、「ベストエフォート」いう魔法の言葉で誤魔化されています。

自動車各社もこの魔法の言葉を最初から使えばよかったのに。

投稿: ハマッコー | 2015年10月20日 22:20

ハマッコー さん:

なるほど、「魔法の言葉」ですね (^o^)

投稿: tak | 2015年10月21日 11:03

実際の走行時とテスト時の数値が違うのは当たり前なんじゃないでしょうか。それを前提に、「テスト状態ならこれに収まるようにしてね」というのが現行の規制値であり、コントロールの仕方なんですから。

VWのようにアクティブに規制をdefeatする仕掛けを使ってるのでなければ、記事が問題にすべきなのはメーカーではなくテストの仕組みの妥当性の方でしょう。

今後、走行時ベースの規制値の導入が進むと言われてますが、結局は車の特性やテスト環境、運転手の癖とかによる一定のばらつきは避けられないんじゃないかと懸念しています。

横道に逸れますが、新車の時だけ値が良い車というのもあると思うので、より実効的な環境対策という観点からは、3年とか5年間の使用後ベースの数値によるレーティングみたいなものを導入したらいいんじゃないかと思っています。日本だと車検制度があるので、データ収集は比較的簡単なのではないでしょうか。どこの会社が本当にエコなのか、信頼できるのかよく分かります。消費者にとっては直接的に有用な情報となるし、メーカーの品質向上を促す(&粗悪品メーカーの排除)という意味でもメリットがあります。

投稿: きっしー | 2015年10月22日 15:01

きっしー さん:

>実際の走行時とテスト時の数値が違うのは当たり前なんじゃないでしょうか。それを前提に、「テスト状態ならこれに収まるようにしてね」というのが現行の規制値であり、コントロールの仕方なんですから。

燃費の数値なんかでは、それは当然のごとくに受け取られていますね。

今回報道されたディーゼル車の場合は、テスト走行時と実際走行時の数値が違いすぎるというのが問題で、確かにテストの仕方の方が問題というところはあると思います。

「とにかくこの数値に収めないと、格好がつかないよ」 というところから、「がんばった数値」 を基準として設定しているのでしょう。

そして自動車メーカーは、少なくともテスト走行のパターンにおいてはその 「がんばった数値」 を達成できるように、エンジンを調整するというのが、「当たり前」 になっているのでしょうね

これでは、「基準のための基準」 であって、本当にエコのための基準であるとは言えませんが、世の中、その類いの基準は多いのでしょう。

>3年とか5年間の使用後ベースの数値によるレーティングみたいなものを導入したらいいんじゃないかと思っています。

いいアイデアです。NPO や自動車メーカーから広告をもらっていない雑誌なんかが実施してみたら、反響を呼ぶでしょうね。

投稿: tak | 2015年10月22日 19:41

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