テキスト派と感覚派の間の深い溝
今月 12日の 「日本語ウェブページの 5件に 1件以上が "Hallo Ween" と誤記」 とかいう実例を目にしたり、"fresh juice" (生ジュース) を "flesh juice" (肉体ジュース?) と誤表記したメニューや、"flyght (空の旅) を "fright (恐怖)" と書いちゃったりしているのを見ると、多くの人が「どうして辞書を引かないのだろう?」と疑問に思う。もっともな疑問である。
しかし最近、私は確信するに至った。プロモーション用のウェブページを作成したり、お洒落なメニューを作ったりというアートワーク系の「感覚派」の人たちは、まず辞書なんて引かないのだ。英語を意味のある言葉としてではなく、お洒落な感覚を演出する小道具ぐらいにしかみていないためだと思われる。
せっかくのお洒落な小道具なのに、正確な意味なんか調べてしまうと「理に落ちて台無しになる」みたいな気がして興醒めするので、そんなことしたくないのだろう。意味や正しいスペルを調べるよりも、感覚的なテンションを維持することの方が大切なのだ。
それに対して、私を含む「テキスト派」は案外マメに辞書を引く。言葉をモロに言葉として使っているから、意味を間違えたら大変なことになる。だから感覚派の人たちの途方もない冒険を目の当たりにすると、ハラハラしてしまうのである。
しかし感覚派の人たちにしてみると、多少の語法やスペルの間違いなんて、大したことじゃないらしい。「何かおかしい?」ってなぐらいにしか感じられないようなのである。「いいじゃないの。わかれば」と言いたいみたいなのだが、テキスト派にしてみると、「いや、わからないから」と言わざるを得ないのだ。
しかしそのテキスト派の言い分にしても、感覚派からみると「ずいぶん意地悪な見方」に見えて腹が立ってしまうらしい。
この溝はなかなか埋まらない。
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コメント
なるほど、文字は文字でなく、それ自体がデザインなんですね、きっと。
だから、文字でデザインすると、某エンブレムのように、似てる似てないの話になる…と。(笑)
投稿: もりけん | 2015年10月21日 23:54
ブティックなどの紙袋にナンチャラカンチャラ書いてあるのを以前は何とか意味を見い出そうとしていましたが、今ではただの模様だと気付きました。デザインする方もただの模様のつもりなんですよね。
"flesh juice" 一度遭遇しました。5秒間固まりました。
どこかの Menu に lice をまだ見たことがないのは幸いです。まだ遭遇してないだけかもしれませんが。
投稿: ハマッコー | 2015年10月22日 00:40
もりけん さん:
>だから、文字でデザインすると、某エンブレムのように、似てる似てないの話になる…と。(笑)
なるほど。なまじ 「文字」 と思ったからいけなかったのか (^o^)
投稿: tak | 2015年10月22日 19:28
ハマッコー さん:
アルファベットは単に 「お洒落な小道具」 なんでしょうね。
>"flesh juice" 一度遭遇しました。5秒間固まりました。
これは、結構あちこちで遭遇しますよ。
数年前に羽田空港内の店で遭遇した時は、お店のおねえちゃんに「これ、マズいよ」 と注意してあげましたが、「はあ、そうなんですか」と、遠くを見る目で返事されただけでした。
私なら、慌ててメニューを隠しちゃうところですけどね。
投稿: tak | 2015年10月22日 19:29
まさに今、アルミコンテナに「PRESENTETER」と書かれた2トン車が隣に停まってます。
違和感を感じて調べてみたら、presenterが標準英語で、presentatorは和製英語だと…。
名古屋弁なら、「ぷれぜんてぇたぁ(てぇにアクセント)」なんで、コンテナの表記が正しいのかな。(なんちゃって)
投稿: 乙痴庵 | 2015年10月23日 15:01
乙痴庵 さん:
うぅむ、そもそもどういう意味合いのつもりで、そんなの書いてるんでしょうかねえ ^^;)
"Presentator " は、日本人だけでなく香港人もよく使うようです。もしかしたら、アジア英語なのかもしれません。
投稿: tak | 2015年10月24日 01:18