「タッグを組む」という言葉
ペアを組んで共同作業することを、日本語でフツーに「タッグを組む」と言うことがあり、これをキーワードにググってみると、かなり一般的に使われていることがわかる(参照)。とくに芸能ニュースなどで、人気俳優同士が共演する場合に「○○ と ×× がタッグを組む」なんて表現されるケースが多いようだ。
これ、古くからのプロレスファンだと「タッグマッチ」から来た言葉と当然のごとく知っている。2人か 3人のプロレスラーが「タッグチーム」を組み、味方同士でタッチすることで交代しながら戦う試合形式だ。
最近はプロレスが下火になってしまったのに、「タッグを組む」という言葉は妙に市民権を得てしまっているようなのだ。元々プロレス用語だったことはことさら意識されずに、しれっと使われている。
そんなわけで、「Yohoo 知恵袋」では "「タッグを組む」という言葉は、具体的にどんな意味ですか? (中略)男性っぽい言葉の感じを受けるのですが、女性が使うのも変ではないですか?" という質問に対して、次のような誤解が、なんと 「ベストアンサー」 とされている (参照)。
タッグは tag です。
荷札や正札などの意味もありますが、付添うとかつきまとうという意味もあります。
tag team で二人以上のチームになります。
転じて仕事などでチームを組む時もタッグを組むと使うことがあるようです。
女性が使ってもおかしくはないと思います。
この場合の「荷札/正札」からくる英語の "tag" は「付きまとう」のニュアンスが強く、そこから直接にいわゆる「チーム」とするには無理がある。これを「ベストアンサー」とするのは、問題ありすぎだ。
プロレスの「タッグマッチ」はちょっと違うのである。これは「鬼ごっこ」とか 「タッチする」とかいう意味の "tag" という単語から来ている。鬼ごっこでは、タッチすることで鬼が交代するので、同じ言葉なのだろう。「荷札」という意味の単語とは、もしかしたら語源は一緒なのかもしれないが、一般的には同音異義語と認識されている。
野球で「ランナーにタッチする」というのは和製英語で、本当の英語では "tag" である。「タッチアウト」は本当は "tag out" で、犠牲フライでランナーがベースに「タッチアップ」するのは "tag up" である。ことほどさように、野球用語はものすごく和製英語が多い。
そういうわけでプロレスでも、選手同士の「タッチ」(本当の英語では "tag")で交代するので「タッグマッチ」(本当の英語では "tag team match" だが)という。まあ、女子プロレスでもタッグマッチはあるので、「女性が使ってもおかしくはない」のかもしれない。
「タッグを組む」というのは、本来はお堅い話題ではあまり使いたくない言葉だと、私は思っているのだが、政治の世界でも「○○党と××当がタッグを組む」なんて言い方をすることがある。先日の安保法案の時みたいに「肉弾戦」になることもあるので、イメージ的にはさして問題ないかもしれないが。
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コメント
ウチの小僧が“少年野球”やってた頃、お手伝いお父さんのための「審判講習」で習いました。
“タッチ”ではなく、“タッグ(tag)”が正しいコールだと。
塁間で挟まれてタッチされたランナーに、「(指差しながら)タッグ!アウト!」などと、野球における「tag」と、元来プロレスファンであるがための「tag」の両立できてますから!
…、スンマセン。
久々に酔っ払い状態のコメントでっす!
投稿: 乙痴庵 | 2015年10月13日 23:20
乙痴庵 さん:
おお、日本の野球の世界でも、由緒正しくは 「タッグ」 となっているんですね。
それを聞いて安心しました。
投稿: tak | 2015年10月14日 01:55