韓国の歴史教科書国定化の動きのねじれ現象
韓国では教育省が歴史教科書を国定化する方針を発表した(参照)。「正しい歴史認識」に基づく教科書を作り、2017年までに一本化するのだという。これに対して、野党は民主主義に逆行すると強く反発しているらしい。
このニュースを読んで、一昨年の「超党派の日韓議員連盟が韓国の韓日議員連盟との合同総会で、中国を含む 3カ国共同の歴史教科書の実現に向けた努力を日韓両政府に促すという内容の共同声明を採択」(参照)というニュースを思い出した。これに関して私は、「3カ国共同で歴史教科書を作るなんて、無理と思うがなあ」と、当たり前に率直な感想を述べている。
「3カ国共同の歴史教科書」というファンタジーを作る動きは、このアドバルーンを打ち上げただけで、その後ぱったりと音沙汰なくなってしまった。ところが今回、韓国でいきなり歴史教科書国定化のニュースが飛び出してきた。
この 2つの動きは無関係なように見えるが、もしかしたら地下水脈的に少しはつながっているのかもしれないという気もする。いずれにしても、「正しい歴史認識は一つ」というファンタジーを信奉するというコンセプトは共通している。
そして今回の動きで韓国野党は、「朴正熙(パク・チョンヒ)政権などの親日・独裁を美化するものだとして批判しているという。現在のパク・クネ政権の反日路線にうんざりしている者としては、「何が親日・独裁を美化だよ」と、シラけてしまうのだが、なにしろ中国と朝鮮半島の文化圏は、何が敵で味方なのかよくわからんところがあって、複雑怪奇である。
私としては前述の一昨年暮れの記事で、「歴史は一つ」というのはファンタジーだと言い切っている。歴史解釈というのは立場によって変わるのが当然なのだ。これに関しては、さらに今年 6月の「歴史認識の落とし穴」という記事でも論じているので、参照いただきたい。
歴史教科書を国定化するなんていうのは、そもそも民主主義に逆行するから問題だというのが、ごくフツーの見解なのだが、韓国野党はそれよりもイデオロギー的な視点で反対を唱えている。こんなような論点だと、下手すると彼らが政権を取ったら、彼らの視点で歴史教科書を国定化すると言い出しかねない。
国定教科書の動きに反対だというなら、「正しい歴史認識は一つ」なんていう幻想からも解放されるべきなのだが、それは別問題というのが、韓国野党の立場であるらしい。私の目からは、韓国の与党と野党のどちらも、エラい「ねじれ現象」を抱えていると見えてしまうのだがなあ。
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コメント
トルコやシリアなどに跨る状態で暮らしているクルド人のように、日中韓三か国に思想的に共通している一部の人々なら歴史認識が一致する可能性はあると思います。
その結果を押し付けられても各国民は到底受け入れられないでしょうけれども。
投稿: ちくりん | 2015年10月14日 09:42
ちくりん さん:
>トルコやシリアなどに跨る状態で暮らしているクルド人のように、日中韓三か国に思想的に共通している一部の人々なら歴史認識が一致する可能性はあると思います。
なるほど。
投稿: tak | 2015年10月14日 19:11