「山場 CM」の宿業から逃れるには
昨日の "広告、CM というものについて" という記事の中で、「山場 CM」というものについてちょっと触れた。ところが「まてよ、前にもそれについて書いたことがあったな」という気がして検索してみたところ、一昨年の 8月にまさに "「山場 CM」という業" という記事を書いていたのだった。
このブログを始めた頃は、「決して同じことは書かない」というポリシーみたいなものをもっていたが、10年以上も前にうっかり同じネタの繰り返しをやらかしてしまってから(参照) は、「まあ、長い間にゃ、そんなこともあるさ」と開き直っている。同じネタでも、料理の仕方が変われば別の味がするだろう。
で、早速同じネタで料理の仕方を変えてみることにしたい。「山場 CM」 ということについて、まだ書いていないことがあるので、今日はそれを書く。
「山場 CM」 について、Wikipedia には次のような記載がある(参照)。
山場 CM に関しては86%が「不快である」と感じており、CM 明けのシーンの繰り返しには、74%が「イライラする」と回答した。山場 CM を含む番組については、84%が「見たくない」。山場 CM の商品について 42%が「好感が持てない」、34%が「絶対買いたくない」と回答。
つまり多くの視聴者が「不快」と思い、流された CM の商品を「絶対買いたくない」と回答しているにも関わらず、山場 CM は宿業のごとくなくならないのである。それはなぜなのか? そこには私が「民放がじわじわと自殺行為をしている姿」と言う所以があると思うのだ。そのヒントは、同じ Wikipedia にある次のようなデータである。
話の流れが落ち着いたところで出る「一段落 CM」と比較すると、山場 CM が「商品を買いたくない」で 3.8倍、「商品を覚えていない」も 2倍と本来の効果をうち消していた。
「山場 CM」はとても不快なので、そこで訴求された商品に関しては、「買いたくない」とさえ思う視聴者が多い。しかしここで思い出されるのが、選挙カーの「連呼」である。
選挙カーで連呼ばかりしている候補者に関しては、「うるさくて迷惑なだけで、政策がちっとも訴えられていないから、絶対に投票しない」と考える有権者が少なくないが、実際の結果は、大々的に連呼した候補者がぬけぬけと当選するケースがほとんどだ。それは、有権者は 「誰が連呼ばかりしていたか」なんて、すぐに忘れてしまうか、忘れないまでも、投票の場面においてはそれが絶対的な基準とはなりにくいからである。
もっと言ってしまえば、ほとんどの候補者が連呼ばかりするから、実際には「あいつには絶対に投票しない」と狙いを定めることすら難しい。連呼ばかりの候補者を消していったら、連呼する費用も捻出できない泡沫候補しか残らないというパラドックスがある。
「山場 CM」の商品にしても、「連呼ばかりする候補者」と同じなのだ。上述の Wikipedia の記述でも、「商品を覚えていない」という回答が 「一段落 CM」 の 2倍に達する」との記述があるが、これは注目すべきことである。「反感」よりも「印象にすら残らない」ということの方が、実際にはより悪く作用するのだ。
「山場 CM」が始まるとすぐにチャンネルを変えてしまうとか、CM の間はひたすら感覚遮断してほかのことを考えながらやり過ごすとか、トイレに行くとか、録画して CM の部分だけ早送りしてしまうとかいう反応は、CM の「無力化」を意味する。
「否定」よりも「無力化」の方が深刻だ。「嫌い」は「好き」より困ったことだが、「興味がない/冷淡」はさらに扱いにくいのと同じである。一番神経にひびく「イジメ」が 「シカト」なんていうのとも通じる。選挙における投票率がやたら低いのと同じ構造が、CM の世界にもある。視聴者は CM に興味を失っているのだ。
ここまで考えると、昨年 5月の記事で触れた "「意識の95%は非言語」に広告の未来があるかも" という指摘が俄然現実味を帯びてくる。その最たるものが「サブリミナル効果」に訴えたりするヤバいやり方だ。
ドラマの中で特定商品を印象的な場面でさりげなく登場させるなんていう手法は、最近のハリウッド映画ではごくフツーに使われていたりする。いい場面で特定ブランドのビールが登場したりしたら、それはビール会社から金が出ているのだ。ハリウッドは映画の莫大な制作費を、この手の「スポンサー料」で補っている。
こうした手法は、使い方によってはかなりヤバいものにもなるから、かなり注意しなければならないのだがね。
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