スーパー・オタクは、別のマーケットを形成してくれ
「新しい(という気がする)もの」 を作り、提案し続けることによってメシを食っている人にとっては、「安心できるお馴染み」的なものは、それだけで「悪」ということになるみたいなのである。Google のデザイン担当バイスプレジデントが、「Windows 10 はフラットデザインにした XP だ」と批判しているという(参照)。
それは Matias Duarte という人なのだが、確かに Windows 10 に関して「XP にフラットデザインのスキンをかぶせたもの」とか「10年前のWindows」だとか tweet している。それだけでなく、「Windows 8で新しい試みをした Microsoft が好きだった」なんてことも言っている。
こうした主張を聞く度に私は、「OS としての Windows のバージョンアップは、そういう『新規 のものが好きな人たちだけの楽しみ』としてやってもらいたい」と思うのである。Windows を「楽しみ」としてでなく、単に「日々の仕事の道具」として使っているユーザーの多く(本当は「圧倒的多数」と言いたいのだが)は、「余計なバージョンアップは迷惑千万」と感じているはずだ。
例えば、クルマを「楽しみ」 ではなく「移動のための道具」として使っているドライバーは、アクセル・ペダルやブレーキ・ペダルの位置を変更されたり、方向指示器の使い方を「画期的なもの」なんかにされたら、「大迷惑」と感じるどころか、命の問題になってしまうだろう。
PC の場合は多少戸惑っても命の危険はないのでまだマシだが、それでもいっぱしベテランの PC ユーザーを自認していたのに、いきなり初心者レベルにまでたたき落とされたような気がして、大変なストレスになる。新しいシステムを試すのが楽しみで PC を使っているのではなく、日々の仕事を効率よくこなすために使っているだけなのだから、それは当然の反応だ。
PC 関係のプロが喜ぶものと、フツーのユーザーが求めるものとの間には、今ではかなり大きなギャップが生じてしまっている。革新的なファッション・デザイナーの作るぶっとんだ洋服をみて、フツーの消費者が「そんな服、一体どこに着ていくの?」と感じてしまうような感覚と似たものがある。
私は最近、PC の世界でも「アヴァンギャルドなユーザー」と「ベーシックなユーザー」というカテゴリーを想定したシステム開発が行われるべきだと思うようになっている。クルマの世界で、「ポルシェでなきゃ」というようなスポーツカー愛好者と、「フツーに動いて燃費がよければ、それでいいわ」というベーシックなユーザーとに、同じクルマを提案してもしょうがない。それと同じである。
そのためにはちょっと逆説的に聞こえるかもしれないが、「ギンギンに革新的なシステム」を求めるスーパー・オタク的なユーザーがある程度のマーケットを形成してくれなければならない。そうでないと、いつまでも圧倒的多数を占める「フツーのユーザー」が、ごく少数の「スーパー・オタク」のニーズに付き合わされて迷惑することになる。
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コメント
そのとおり!
せめて「動作が速くなる」とか「安定する」とかならイイのですが、毎回こんなにインターフェイスを変えられると覚えるのも辛いですねぇ…(+_+)。
仕事で使っている人間からすると、使わないわけにもいかないので仕方なく覚えていますけれど。できればあまり変えてほしくないところです。
「変わらない」ってのも、ひとつのブランドになると思うんだけどなぁ~。
投稿: るー | 2015年11月 9日 12:33
るー さん:
>せめて「動作が速くなる」とか「安定する」とかならイイのですが、毎回こんなにインターフェイスを変えられると覚えるのも辛いですねぇ…
本当ですね。
ちなみに 「今のハードウェアで MS-DOS を走らせたら、ものすごく速くなるんじゃないか」 と言ったら、MS-DOS は統御できる記憶領域が小さいので、今のハードは扱いきれないそうです (^o^)
だったら、Windows 2000 あたりを走らせたら、かなり速いでしょうにね。
投稿: tak | 2015年11月 9日 14:47