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2015年11月17日

ファッションはカッコ悪い

つい 10年ぐらい前まで、私は繊維産業をバックグラウンドとしていて、とくにアパレル業界関連で収入の大半を得ていた。しかし正直言ってこの業界、深く関われば関わるほど、愛着が薄れていくのだった。そして今、私はアパレル業界とはほとんど関わりのないところで収入を得ている。

どうしてアパレル業界への愛着が薄れてしまったのかというと、構造的に「持続可能なビジネス・モデル」を作りにくい産業だと気付いたからである。ファッションというのは基本的に、「古いものをどんどん捨てて、新しいものをどんどん買う」という消費モデルがないと、利益を上げられないのだ。

それで、「2015-16 秋冬コレクション」なんてものを発表してしまったらすぐに、「1016 春夏コレクション」の製作に取りかからなければならない。今はもう 「2016-17 秋冬コレクション」を視野に入れている頃だ。どんどん新しいものを作り続けなければならない。

新しいものを作って、それを買ってもらうためには、古いものをどんどん陳腐化させていかなければならない。1年前に作ったものを自分で陳腐化させて、新しいものを買ってもらうというのが、ファッション産業の基本的なビジネス・モデルである。

つまり、「まだ着られるもの」を「もう着られないもの」にしていくのが、ビジネスとしてのアパレル産業なのである。「ファッション人間」といわれる人たちは、そうした意識付けをリードする人たちだ。私はアパレル業界でメシを食いながら、「ファッション人間にはなりたくない」という思いを年々強くしていたのである。

もちろん、ファッションには別の価値感も存在する。「いいものを長く着続ける」ことに価値を見出すトラディショナルな消費者もいるのである。しかしアパレル産業はそうした「趣味のいいライフスタイル」をあまりオススメしない。それをやられてしまったら、自分たちが干上がってしまうからだ。基本的には「どんどん買って、どんどん捨てる」ことで成り立っているのだからしょうがない。

さらに、繊維産業は石油産業とともに「最大の環境汚染源の一つ」と言われている。その最大の要因は、「染色」の工程だ。繊維を染めるために、繊維業界は大量の水を使い、化学染料で汚染して、河川に垂れ流しにしている。中国は今、それで環境を汚染しまくっているのだ。

今、繊維業界は環境意識を高めようとして、節電や紙資源の節約などを呼びかけている。しかし基本的にファッション業界というのは紙を大量に使う。デザイン画を何度も描き直し、パターンを何度も引き直し、仕様書を何度も書き直し、挙げ句の果てに製品ラベルやラッピング、ショッピングバッグにまで紙を使いまくる。

本来は紙を使わずにデジタル・データでやっていけるはずなのだが、ファッションに関わる感覚人間たちは紙でないとピンとこないみたいで、やはり紙をどんどん使いまくる。元々資源を無駄遣いし、水を汚す構造の上に成り立っているのだから、ほんの少しばかり省エネを心がけたところで、持続可能なオペレーションとはなりにくい。

私はこれまでの「ファッションはカッコいい」という意識を、「ファッションはカッコ悪い」という方向に変えなければならないとまで思っている。ちょっと考えてみれば、本当に時代遅れでカッコ悪い産業なのだ。

 

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コメント

なるほど、アパレル業界の抱える問題点がよく分かりました。国レベルで問題にならないのはなぜなんでしょうね。
汚染を輸出している面もありますね。

私がネクタイをして着る服は、英国屋で誂えた礼服と、J.Press の紺ブレ二着だけで30年以上吊るしています。チノパンも二年は穿き続けるので、raggy pant です。
私のようなライフスタイルでは業界は成り立っていかないですね。

投稿: ハマッコー | 2015年11月18日 00:59

tak-shonaiさんごきげんよう~
私は初めてこんな考えがあることに気がつきました。
驚きました。
人生、ファッションなくして何があるのか?と思って生きてきました私です。
ありがとうございます。
目が覚めた気がします。
ふ~~~~~~~~ん・・・・・・・・
う~~~~~~~~~~~む・・・・・・・・・
地球を汚す・・・・・
ううううううう~~~~~~~~ん。
そうか・・・・・・・
私にはむずかしい問題です・・・・・・・・

投稿: 朱鷺子 | 2015年11月18日 08:42

う~ん、「捨てさせて新しいものを買わせる」構造くらいはもちろん分かっていたけど、染色過程の水質汚染なんてところは知らなかったなぁ。

ところでハマッコーさんの「英国屋で誂えた礼服と、J.Press の紺ブレ二着」に親しみを感じてしまいました。オレもJ.Pressの紺ブレは夏冬1着ずつ持っているので……。英國屋のスーツも1着ある(^^)(←たぶん私が持っている服のなかで一番高級。長年着たい)

投稿: 山辺響 | 2015年11月18日 17:15

幸い、体型が変わらないので、10年、20年は当たり前に着ています。
細身のパンツスタイル、天然素材、ベーシックなデザイン、基本カラーはブラック、紺、グレイ。
それにプラスしてポイントカラーを数種。
買う時は、デパートではなくメーカーが会する「ファミリーフェア」などで結構お得に買っています。
私もアパレル業界にあんまり貢献していないかも、ですね。(^^;ゞ

投稿: さくら | 2015年11月18日 17:56

tak-shonaiさんごきげんよう~おはようございます~
あのね、
やはりファッションも行きすぎはいけないって事は理解できましたけれど、
tak-shonaiさんの考えも行きすぎては駄目ですね。
だって、究極は丸薬ひとつで生きろと言う結論になりそうですし、
無駄な生き方を止めると究極、管理社会になる恐ろしさもありますよね。

投稿: 朱鷺子 | 2015年11月20日 03:30

ハマッコー さん:

国としては、アパレル産業を潰したくはないんでしょうね ^^;)

紺ブレ 2着にチノパンというのは、なかなかのものですね。
それこそが、ファッショナブルなライフスタイルといえそうです。

投稿: tak | 2015年11月20日 22:36

山辺響 さん:

ハマッコーさんと同様に、拍手ものです。
それで十分なのに、どうして他に買う必要があるかってことですね。

投稿: tak | 2015年11月20日 22:38

さくら さん:

おお、ハマッコーさん、山辺響さんの女性バージョンみたいなライフスタイル!
拍手です。

投稿: tak | 2015年11月20日 22:39

朱鷺子 さん:

いつの場合も、アンチテーゼはエクストリームな方向に振れやすいものとご理解ください ^^;)

投稿: tak | 2015年11月20日 22:41

遅コメスマソ(失礼)。
私も、今はなき父の、大量にあるワードローブをなんとか活用しようと画策中であります。
ジャケットとかのサイズは合うんですが、パンツがちょっと短いんですよねぇ(自慢かよ!)。

投稿: 萩原水音 | 2015年11月21日 07:38

萩原水音 さん:

いいですね。あの世のお父様も喜ばれることと思います。

ズボンの丈は、お直し屋さんに頼めば、少しなら伸ばすことができると思いますよ。

投稿: tak | 2015年11月21日 17:38

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