忘年会と会社の看板
忘年会の季節である。その昔、団体職員などという名のサラリーマンをしていた頃は、12月に入ると週に 1度以上のペースで忘年会に出ていた。何とか部会、かんとか委員会など、自分の担当する集まりすべてで忘年会なんてものをやるから、こちらは酒浸りになってしまう。
こうした集まりの忘年会は、企業から手弁当で派遣されたメンバーへの一種の「ご苦労さん会」みたいなものなので、決まって会費無料である。ただで飲み食いできるのだから、メンバーは大喜びで集まる。そして年末とてやや羽目を外す。
しかし彼らは一度きりだからいいが、こちらは毎週 1〜2度それに付き合わなければならないのだから、いくらなんでもうっとうしくなる。思えば私は団体職員としていろいろな部会や委員会を担当し始めた頃から、大勢で酒を飲むのがだんだん嫌いになってきたような気がする。
仕事関係で大勢の宴会をやるというのは、かなり気詰まりなところがある。「今夜は無礼講で」なんていいながら、日本のビジネス社会の縦割り感覚に根ざした慣行を守ることだけは、無言のうちにしっかり要求される。
そしてなんだかんだ言いながら、自分がいかに仕事のことだけ考えて生きているかを、さりげなくアピールする者が続出する。仕事以外の話をしても、当たり障りのない野球やゴルフの話なんかの他は、結局シラける。
私としては「仕事のことだけ考えて生きているやつ」となんか、あまり付き合いたいと思わないのだが、こうしたグループは同業者の集まりで、まあ、いわば仕事上での情報交換には格好の場となるから、みんな喜んで仕事の話に付き合う。無礼講だったはずの忘年会も、結局仕事の話に終始する。
しかしそうしたメンバーも年上の者から順々に定年になり、一度だけ型どおりの「お別れ会」なんかを開いてもらうだけで去って行く。そして一度去ってしまうと、仕事を離れたお付き合いを継続するなんてことは、極めて希なことになる。
たまに会社を定年になってからも独立して、それまでの仕事を継続する者がいる。そうなると、まあそれまでのいきさつもあるから、少しは付き合いが続く。しかしそれもやはり以前勤めていた会社の看板の威光が色褪せるまでの 2〜3年のことで、それ以上続くことは滅多にない。ある時期から急に疎遠になっていく。
70歳を過ぎても付き合いが続くのは、勤めていた会社の看板の威光が失せても、その人のもつ人間的魅力の方が優っている場合だけである。しかしそれは滅多にないケースだ。
今の私はもう完全に、大勢で酒を飲むのはうっとうしいと思っているオッサンだから、そうした「滅多にない稀なケース」の人間的魅力の勝ったオッサン(おっと、オバサンもいるかと時々付き合えばいいという今の状況が、至極快適に感じられるのである。
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コメント
元々、宴会嫌い。酒は小ジョッキ一杯までしか飲めない。宴会で出てくるのは総じて粗末なものが多い。鍋料理だったら絶対食べない。でも会費は均一で私にとってはお金をどぶに捨てるようなものでしかなかった。
無礼講を真に受ける輩がいて、トラブルが発生することもよくある。そんなものに付き合わされるのは真っ平ごめん。仕事の話しなんかされたら増々シラケる。
出世する人物は宴会での座持ちが多分いいのでしょう。そしてそれをうまく仕事に利用するのでしょうが、私にはそんな高等技術はなかった。
齢を重ねるにつれて、忘年会は個人的な付き合いのみになり ”ああ、すっきりした”。
投稿: ハマッコー | 2015年12月27日 23:46
ハマッコー さん:
>出世する人物は宴会での座持ちが多分いいのでしょう。
それは、言えます。本当に言えます。宴会嫌いだと出世できません。
よほど飛び抜けた能力があれば別だと思っている人がいますが、実は宴会嫌いだと、その飛び抜けた能力故に疎まれ、排斥されます。
投稿: tak | 2015年12月28日 13:52
この流れで、恐縮です。
業界のシンポジウム後の懇親会で、酒が入った勢いに任せてキーマンに近寄りました。
名刺交換しておわりでした。
アタクシ、気の小さい者なり。
投稿: 乙痴庵 | 2015年12月31日 00:01
乙痴庵 さん:
大抵は名刺交換してそれっきりなんですが、その名刺にずうずうしく連絡を取って、「講演会の講師をお願いします」ってなことになったら、それから先、長いお付き合いができますよ (^o^)
投稿: tak | 2015年12月31日 13:15