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2016年1月28日

「住基カード」 ってものがあったのだが

昨年の 10月に 「マイナンバー制度との付き合い方について」 という記事の中で「『個人番号カード』は当面申請しないでおこうと思う」と書いた。そんなものなくてもちっとも困らないし、そのうちいろいろな問題が出てきそうだから、遠ざかっておこうと考えているのである。

その記事に、乙痴庵さんが「住基カード…。どこしまってたっけ?」という皮肉たっぷりのコメントをくれた。そうそう、「個人番号カード」って、「いつか来た道」のような気がしていたのだが、「住基カード」なんてものがあったんだった。すっかり忘れていた。

乙痴庵さんのコメントに私は、"「そういえば、『住基カード』って、聞いたことあるなあ」という程度で、取得しようという発想すらありませんでした" というレスを付けた。ところが最近、妻が「住基カードって、引き出しの奥に眠りっぱなしよね」と言い出したのである。

「えっ、そんなの、ウチにあったの?」
「あることはあるんだけど、全然使ったことないわよね」
「見たこともないんだけど」
「まあ、引き出しの奥の方に、あることはあるはずなのよ」

というわけで、我が家の場合も乙痴庵さんのお宅と同じようなことになっているようなのである。いや、旦那がその存在すら知らなかったというのだから、さらに始末が悪い。さらにひどいことに、「どれどれ、どんなものなんだ?」なんて探し出してみる気にさえならず、今も引き出しのどこかでほとんど永眠させている。

で、その住基カードだが、昨年末でお役御免になったようだ。総務省のサイトに、次のように告知されている(参照)。

平成 28年 1月から個人番号カードが発行されることに伴い、住基カードの発行は平成 27年 12月で終了します。

ただし、現在住基カードをお持ちの方は、住基カードの有効期間内であれば、平成 28年 1月以降でも、個人番号カードを取得するまでは利用可能です。

住基カードの有効期限は 10年間なので、我が家のはとっくに期限切れになっているはずだ。さっさと捨ててしまっても構わないのだろうが、捨てるために探し出すのも面倒なので、このままずっと永眠しっ放しになるだろう。

マイナンバーの「個人番号カード」にしても、こんなふうなことになるんじゃないかと、私は思っている。知り合いのおばあさんが、マイナンバーの通知書が送られてきた時に、何がなんだかさっぱりわからないので、役所に電話して問い合わせたそうだ。その時のやり取りは、こんなふうなことだったらしい。

「マイナンバー通知書っていうのが届いて、カードの申請とか、いろいろ書いてあるんですけど、どうしたらいいんですか?」
「別に何もしなくて結構です」
「ああ、そうですか。安心しました」

というわけなので、我が家では 10年以上前は何かの間違いで住基カードを取得してしまったようなのだが、今回は完全に静観している。なくても全然困らないし、将来「あればこんなに便利」ということになっても、便利の裏側にあるリスクを考えると、ますます躊躇してしまう。

何よりも確かなことは、こんなにまで役立たずのまま使命を終えた住基カードで、巨額の利益を得た企業があるということだ。「IT 利権」というのは、かなり大きいもので、IT 企業は国から多額の金をもらって、今この時も、役に立たないシステムを作り続けている。

前に関係していた仕事の視点からすると、IT 関連の補助金事業の「打率」は、率直に言って 2割以下という印象で、残りの 8割以上に使われた税金は、「まったくの無駄金」に終わっている。そんな中で私の関係したプロジェクトは、今でもしっかりと実効的に稼働しているというのが自慢なのだがね。

 

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コメント

住基カードの発行システムを構築するのに390億かかり、年間の経費が190億らしい。(平成19年の河村たかし氏の質問主意書より)
国が掛けた費用は総額2000億円。カードの普及率は5%強でこれではベネフィットなどあるはずもない。

以前、パスポートの電子申請システムがあったが、運用コストを申請者数で割ると、1600万円/人 になるらしい。これに開発費用を考慮すると、3000万/人だという。

私もIT化には大賛成です。数年前、家族が難病を発症し障碍者認定を受けましたが、その手続きのための大量の書類を集めるのに何日もかかりました。市役所・保健所・税務署などがネットワークで繋がっていれば一か所で済みそうなもんですが。

障碍者の認定は一回限りでなく、更新手続きが毎年あるんですね。
マイナンバー制度が煩雑な手続きから解放させてくれればいいのですが。
いったい何が原因でIT化がベネフィットを生み出さないのでしょうか。素人には不可解ですね。

行政のIT化といえば総論では皆賛成だろうが、結局はIT業界に食い物にされてるのか。

投稿: ハマッコー | 2016年1月28日 23:30

ハマッコーさんのコメントに反応して。

IT業界が食い物にしているという面もあるでしょうが、IT化の現場の問題もあると思います。

つまりIT業界の人々は電子化の専門家ではあるけれど、それぞれの業界については(ほとんど)無知なので導入予定の人々にヒアリングして設計していきます。

私は医療業界に身を置いていますが、電子カルテなどの導入時に医師・看護師・薬剤・会計などの部門とは個別に打ち合わせがありますが、利用者(患者様やご家族)に使い勝手を確認されたことはありません。

もちろんシュミレーションは繰り返し行いますが、実際に稼働してみるとこちらの想定通りに患者様は行動されずにトラブル頻発、手直しに大わらわというのが、どこの医療機関でも繰り返されてきました。
それでも一応サービス業界ですので、1から2か月の間に何とか実用に合わせていくようになります。

おそらく役所の都合だけを聞いて構築されたITシステムならば、利用者にとっては全く役立たずでお役所が苦情を聞く耳も持たないならば、IT業界の努力だけでは何ともならないと思います。

投稿: ちくりん | 2016年1月29日 08:38

ハマッコー さん:

下のちくりんさんのコメントとも、さらに、私のこの翌日の記事とも関連するのですが、IT 業界はある意味、「言われた通りにプログラムを作ってるんです。それを使いこなせないのは、運用の問題です」 と言いたくもなると思います。

ということは、プログラムを作る際にヒアリングを受ける現場が、システムというものをわかってないことと、お金を出すお役所(直接公的な事業でなくても、こうしたものは大抵補助金をもらって作るので) が、書面上だけで 「美しい作文」を要求しすぎるるのが、「ガン」 なのだと思っています。

投稿: tak | 2016年1月29日 21:08

ちくりん さん:

>IT業界が食い物にしているという面もあるでしょうが、IT化の現場の問題もあると思います。

私も、両方の合わせ技だと思っています。

IT 業界は「言われた通りに作ってるんです。文句ないでしょう」とばかり、成果物の実際の運用まではほとんど責任をもちません。
(「業界は、多分使いこなせないんだろうな」ということぐらいは、過去の経験で想像が付くと思うのですが、なにしろ言われた通りに作れば大金が入るので、作りっぱなしに近い状態です)

そして、使う方の現場は IT というものをわかっていないので、実際にどんな使い心地のプログラムができてくるのか、見当が付かない。できあがってきたものを見て、「????」 となって、結局使いこなせずに放り出すというケースがかなり多いようです。

もっと単純な、オッサン、オバサンでも使いこなせるプログラムから入るべきなんでしょうが、そうした単純なシステムにはお役所が金を出してくれないので、つい 「美しい作文」 で 「あれもできる、これもこなせる」 という、聞こえはいいが、複雑すぎて使いこなすのが大変というシステムを作ってしまいがちです。

投稿: tak | 2016年1月29日 21:14

恐縮です。(照れまくりです)

「住基カード」は、当家でも未だ発見されておりません。(探す気になりません)
届いた当時、封筒を見た程度です。

住基カードの方が、セキュリティー高かったかも!(誰も触ってないから?)

投稿: 乙痴庵 | 2016年1月30日 01:52

乙痴庵 さん:

確かに、セキュリティ高かったですね (^o^)

投稿: tak | 2016年1月30日 08:49

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