「ヘアトニック」と「気分の問題」と「経済活動」
実は、6日間のどさ廻りから帰宅したところである。旅の様子はもう一つのブログ、「和歌ログ」の方でちょこちょこっと書いてある。
今回の旅では 4カ所のビジネスホテルに宿泊したが、そのうち 2カ所が大浴場付き(うち 1カ所は、源泉掛け流しではないが、天然温泉という触れ込み)だった。私は図体がでかくて客室の狭いバスタブは苦手なので、できれば大浴場付きのホテルを選ぶようにしているのである。
こうしたホテルの大浴場(実態は決して「大浴場」というほどじゃなく、せいぜい「中浴場」程度のところも多いのだが)の脱衣所には、決まって大きな鏡付きの洗面所みたいなのがあって、風呂上がりに必死にドライヤーで髪の毛のセットをしたり、オーデコロンみたいなのを塗ったくったりするオジサンなんかがいたりする。
で、そこにはサービスの「ヘアトニック」の瓶なんかがおいてあったりもするのである。私はこの「ヘアトニック」というものを自分で金を出して買ったことが一度もないが、だいぶ前に人からもらったことはあるような気がする。もらったことはもらったが、何だかよくわからないので使わないまま放っておき、結局捨ててしまったと思う。
本当にこの「ヘアトニック」というのは、一体何なんだろうか。ついに思いあまって Wikipedia で調べてみると、「ふけ・頭臭を防いで、頭髪を清潔に保つ効果、かゆみ・蒸れを防いで、頭髪に関する不快症状を消し去る効果、抜け毛を予防し育毛を促進する養毛効果などを期待して使用する」とある(参照)。へえ、ずいぶんいろんな効果があるものだ。
しかし、「頭髪を清潔に保つ」だの「かゆみ・蒸れ」を防ぐだのいうのは、何かの事情で風呂に入れなかったりシャンプーできなかったりする時に意味があるのだろうから、「大浴場」の鏡の前に置いても屋上屋を重ねるだけだろう。さらに「育毛/養毛」と言っても、薬品じゃないんだから実質的には期待するだけ無駄だ。
要するに「ヘアトニック」というものの効果は単に「気分の問題」なのだと想像が付いた。アルコールが配合されているらしいから「スッとする」感じがあるのだろう。世の中には「気分の問題」に結構なお金を使う人がいて、それなりの市場を形成しているということだ。
ところがさらに web を辿ってみると「毛髪や皮膚はたんぱく質でできてますが、アルコールはそのたんぱく質を分解してしまう」と指摘しているヘアサロン業者の記事が見つかった。頭髪の少ない人は、シャンプー後の毛穴の開いた状態でアルコールが毛根に浸透すると、さらに薄毛、脱毛の原因になるという(参照)。
ということは「気分の問題」で自らの頭髪にダメージを与え、そのダメージから回復させるために高い育毛剤や養毛剤をさらに買い求める人もいるというわけだ。髪の毛に限らず世の中の経済活動というのは、かなりの部分が「金を使って自分で自分を痛めつけ、そして回復するためにさらに金を使う」ということなのだと、最近しみじみ思っている。
「経済成長」といえば聞こえがいいかもしれないが、実はこうした馬鹿馬鹿しいことで成り立っている部分がものすごく大きいのだよね。働き過ぎてヘトヘトになり、アリナミンなんかを飲んで体力回復ができるような「気がする」ってのも、そんなようなものだ。ゆったり暮らせば、アリナミンもいらない。
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コメント
小生の亡き父も、薄毛のため憑かれたやうにヘアトニツクの類いを使用してゐました。
情報が少なひ時代でしたから、メイカアの宣伝文句を疑ふこともなくドバドバとおつむに振りかけて居りました。
何も考へなくともボウナスが出、家が建てられた遠い昔のことです。ああ。
投稿: 萩原水音 | 2016年1月21日 13:52
萩原水音 さん:
思えば、ヘアトニックというのは中産階級の必需品みたいなものだったのかもしれませんね。
投稿: tak | 2016年1月21日 20:04