漢字の「保」の字をどう書くか
この年になって初めて知ったのだが、保険の「保」の字の右下の部分は、カタカナの「ホ」ではなくて「木」と書くのだそうだ(参照)。私はずっと「ホ」だと思っていて、「木」という形に書いたことなんて、生まれてこの方、一度もなかったよ。
手書きで書くと、左のようになる。私はメモや署名など以外はワープロを使うことがほとんどなので、楷書で手書きすることなんて滅多にない。左は比較的ゆっくり書いた場合だが、大抵は右のようになる。自分でわかりゃいいのでね。
上でリンクした朝日新聞の記事によると、常用漢字表では「保」の字の右下部分は「ホ」でも「木」でもどちらも認められているのだが、文化庁の調査では 「20代の 8割以上が『木』だけが適切と答えたのに対し、70歳以上の 7割は『ホ だけが適切と回答」したのだそうだ。てぇことは、ナニかい。私は年寄りってことなのかい?
そういえば、最近は小学校の漢字書き取りテストなどでも、「とめ/はね」などにはうるさく言わなくなったらしいが、私が子供の頃はやたら杓子定規だった。「木」という字でも、縦棒をはねたりすると間違いとされていたのを思い出す。まったくナンセンスな基準だ。その辺りのことは、時代や字体によってどうとでも変化するのである。
そのやたら杓子定規な時代においても、私が「保険」の「保」の字の右下を「ホ」と書いても間違い扱いにはされなかった。それは当時の教師が、現在の「70歳以上」となるから、それこそが「正しい」と思っていたからなのだろう。もしかしたら「木」と書いたら、×印を付けられていたかもしれない。
どうも明治時代以降は「楷書」だけが正しい字体で、行書や草書は行儀悪く崩した字体だという思い込みがあるようなのである。しかし実際は、隷書が先にあり、その後に行書ができて最後に楷書が確立したらしい。だから最近まで甚だしかった小学校の杓子定規な漢字教育は、馬鹿馬鹿しいにもほどがある。
ちなみに、平仮名の「ほ」の字は、漢字の「保」の草書体から発生したものだ。上の画像の右側は草書体ってわけじゃないが、かなり「ほ」に近いよね。
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コメント
ほほう…
僕はずっと木だと思ってました
若い方なのかな?
~(°°;)))オロオロ(((;°°)~
投稿: ひろゆき王子 | 2016年2月29日 20:17
「木」の縦棒は、しっかり跳ねます。そうしないと気持ち悪いし、次のノにいけませんよね。
もう高齢者なのかも。
投稿: ハマッコー | 2016年2月29日 22:07
ひろゆき王子 さん:
そりゃ、明らかに若いです (^o^)
投稿: tak | 2016年3月 1日 04:21
ハマッコー さん:
私は 「木」 に関しては縦棒をはねません。
小学校の時にはねると間違い扱いされて、矯正されてしまったようです。
投稿: tak | 2016年3月 1日 04:23
私が4歳くらいだったと思います。母に「おばあちゃんの名前なんていうの?」と聞いたら「ヤスさんよ、タモツって書くの」「どういう字?」「にんべんに、つくりの方はくち書いてその下は」私は聞きながらそのへんにあった紙に書いていました「カタカナのホ」私が「木じゃないの?」「木じゃないのよ。木って書いたら間違いよ。カタカナのホよ。」手書きではない「保」の字は(誰かの手書きの字を見ることのほうが少ないこの頃ですね)口の下は木に見えますし、私は最近は木と書いていたみたいですが。読んでいて最高に面白いブログです。ありがとうございます。(現在56歳です。母は83歳です。)
投稿: 吉本七重 | 2016年4月 5日 11:50
吉本七重 さん:
「保」 の字に関しては、やっぱりそのあたりが分かれ目なんでしょうかねえ。
この字が年齢のバロメータになるとは、最近まで思いもよりませんでした。
投稿: tak | 2016年4月 6日 00:06