「保育園落ちた日本死ね」 を巡る冒険
例の「保育園落ちた日本死ね」発言が国会で取り上げられ、それに対する自民党議員の野次がお粗末過ぎてますます話題になり、野次が一番目立った平沢勝栄議員が、テレビに出演して謝ったりしちゃってるらしい。昨日と今日は山口県まで長旅していたので、そんなことにまでなっていたとは知らなかったよ。
ホテルのテレビででちょっと見たところでは、民主党の山尾志桜里議員の質問に「やめろよ、やめろ!」「誰が書いたんだよ」「匿名じゃないか」「出典を明らかにしろ」など、まあ、次元の低い野次が飛びまくっていた。この日本の国が、堂々と本名を名乗らないと何を言っても通らない国だったとは、初めて知った。
頭の古い議員たちにとっては、匿名ブログでの発言なんてわけのわからないものは、唾棄すべきものなんだろう。そしてそれに対する野次のヒステリックさは、自民党議員たちのこの問題に関する理解のなさを物語っていた。
彼らは要するに、女性は外に出て働かずに、家にいて家事と子育てをすべきで、自分の率直な考えをブログや SNS に書くなんて、大和撫子らしくないことと思っているのである。その価値感に真っ向から勝負を挑む「匿名の口汚い発言」なんて、ますます口汚くののしって「なきもの」にしなければならないと思っているのだ。
それだからこそ問題の本質を見ずに、「日本死ね」という言葉が汚いなどと、枝葉末節に反応しまくってしまうのである。人は自分の理解できないことに対しては、沈黙して無視するか、無駄にヒステリックになるかのどちらかだ。
あの野次を飛ばした議員は、「私は今の世の中に付いて行けてません」と、大声で宣伝しているようなものだったのである。だったら国民としては、「ああ、やっぱりそうなのね」と理解して、次から票を投じなければいい。
それから、「保育園落ちたの私だ」デモに関して、「落ちてないやつまで参加してる」「詐欺だ」なんて、次元の低いことを言う発言がネット上で相次いだというのにも、やっぱり笑ってしまった。
「落ちたの私だ」というのは、「私はこの問題に関する怒りを共有する者である」との意識を象徴的に示すレトリックである。「落ちてねえじゃねえか」なんて非難するのは、これまた「私は頭悪くて、単純事実以外は理解できません」と告白しているようなものだ。
今回「落ちてねえじゃねえか」と言うなら、例のシャルリー・エプドの新聞社襲撃事件で "Je suis Charlie"(私はシャルリーだ)と書いたプラカードを掲げて行進した人たちにも、「お前、シャルリーじゃねえじゃねえか」と言うべきだった。
私は別の意味で
"Je ne suis pas Charlie" (私はシャルリーじゃない) と言ったけどね。(参照)
| 固定リンク
「ニュース」カテゴリの記事
- 「夕刊フジ」が休刊 - 活字と紙の媒体は衰退期?(2024.10.02)
- 日本でも「たぬき汁」なんて食ってたらしいけど・・・(2024.09.22)
- 見たくないモノは見ないし、聞きたくないことは聞かない(2024.09.19)
- 神戸の小・中学校の 9割以上が「土足制」だそうだが(2024.09.16)
- SNS が「台風 10号が消えた」で盛り上がったらしい(2024.08.31)
コメント
感情的な展開のほうが、(メディア的に)盛り上がるんでしょうねぇ。やれやれ。
> 私は別の意味で "Je ne suis pas Charlie" と言ったけどね。
なんというか、さすがです!!
投稿: るー | 2016年3月15日 12:31
「大和撫子はおとなしく」
一致団結して世界と闘っている皆さんが、「なでしこジャパン」とは是如何に。
投稿: 乙痴庵 | 2016年3月15日 12:59
なお「保育園落ちた日本死ね」は、TwitterなどのSNSではなくて、匿名ブログの記事です(その後、筆者がTwitterアカウント取得して呟いているようですが)。
http://anond.hatelabo.jp/20160215171759
「国会議員を半分位クビにすりゃ」は首肯しかねるけど、基本的に、良い文章だと思ってます。
投稿: 山辺響 | 2016年3月15日 13:54
るー さん:
>感情的な展開のほうが、(メディア的に)盛り上がるんでしょうねぇ。やれやれ。
マスコミもその程度の認識だったりしますね。
「お母さんたちの怒り」 なんて言ってるのなんか、まさに「わかってない」わけで。
投稿: tak | 2016年3月15日 22:36
乙痴庵 さん:
「なでしこジャパン」は、よくできた反語表現だと、ずっと思ってきました。
ところが今回は、できの悪い反語表現になりかかって、ちょっと心配です。
投稿: tak | 2016年3月15日 22:37
山辺響 さん:
>なお「保育園落ちた日本死ね」は、TwitterなどのSNSではなくて、匿名ブログの記事です(その後、筆者がTwitterアカウント取得して呟いているようですが)。
そういえば、そういう経緯だったんですね。
(あんな長いテキストが、Twitter に載るわけない ^^;)
本文訂正しときます。ご指摘、ありがとうございました。
投稿: tak | 2016年3月15日 22:40