「コアなゲームマニア」と「フツーのゲーム好き」 の絶妙な棲み分け
Wired に "モバイルゲーム「課金」の半分はわずか 0.19%のユーザーから" という記事がある。モバイルゲーム売上の48パーセントは、わずか0.19パーセントのユーザーから生み出されているというのである。この数字はモバイル・マーケティング会社スワーヴ(Swrve)が報告したものであるらしい。
これはゲームに多額の金をつぎ込む極々少数のゲームマニアによって、市場全体が支えられていることを意味する。何しろ 0.19% というのだから、ハンパなゲームマニアじゃない。そしてこの数字は 2年前からほんのわずかしか変わっていないというから、ずっとこんなもののようなのだ。
「上位 20%で、全体数量の 80%を占める」というパレート法則どころじゃない。いや、もっと大ざっぱにみると 20% で 80% になるのかもしれないが、いずれにしても、ものすごく極端なデータである。Wired の記事は、モバイルゲームのターゲットは「語弊はあるかもしれないが、いわゆるゲーム依存症のプレイヤー」と言い切っている。
ここで思い出すのが、現在の新日本プロレスの親会社、プロシードの、木谷高明社長のコメントだ。「すべてのジャンルはコアなファンが潰す」というのである (参照)。彼はまさに、「コアなファン」の思い入れによって市場性を狭めていたプロレスを「フツーのにいちゃん、ねえちゃん」に解放し、「ライトなプロレスファン」を作り出すことで、再生させたのである。
1000人のうちのたった 2人ぐらいに支えられているにすぎないモバイルゲームなんて、極々小さな市場というように聞こえる。そんな極端にオタクっぽい小さな市場がどうして潰れずにすんでいるのか、摩訶不思議に思われてしまう。
なんで潰れずにすんでいるのか、よく考えてみればそれは多分、モバイルゲームの市場は全然狭くなんかないからなのだろう。電車に乗ればかなりの乗客がスマホでゲームに興じている。モバイルゲームの市場は実はものすごく広いのだ。
このものすごく広いモバイルゲームの市場は、圧倒的に「無料アプリ」によって支えられている。彼らは電車内での時間つぶしにちょうどいいモバイルゲームを、金を出して買おうなんて、あまり思っていない。あるいは、一度金を出して買ったゲームでずっと長くプレイする。コンスタントに金を出すのは、極々少数の「コアなゲームマニア」なのだが、金を出さない「フツーのゲーム好き」は、その何百倍もいる。
つまりコアなファンなんて、全体からみればほんの少数派に過ぎないので、逆に市場としての健全さが保たれている。「金を出すのがほんの少数なのに、どうしてやっていけるんだ?」ではないのだ。「ほんの少数のコアなマニアの外側に、ものすごく広大な裾野がある」からこそ、モバイルゲームは潰れないと考えるのが、多分正解なのだろう。
言い方を変えると、「コアなゲームマニア」と「フツーのゲーム好き」が、絶妙な形で棲み分けているのだろう。これって、マーケティングのケーススタディとして、なかなか面白い分野と言えるんじゃなかろうか。
| 固定リンク
「マーケティング・仕事」カテゴリの記事
- レナウンが名実ともに消滅するというので(2024.07.14)
- 「50歳からの」という通俗マーケティングの怪現象(2024.02.15)
- また営業コンサルタントの戯れ言が始まった(2023.12.22)
- 実際の成果より「忙しそうに見せる」ことが重要な日本(2023.08.17)
- 最近のモロゾフの包装紙、唐草模様の風呂敷みたい(2023.08.10)
コメント