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2016年4月 6日

日本で FAX が今でも幅をきかせているのは

NewSphere に 「ハイテク日本はなぜファックスを使い続ける? 高齢者の執着が要因と海外紙分析」という記事がある。確かに、日本では今でも FAX を使う機会が多い。私自身は E-mail でいきたいと思っても、受け取る側が FAX しかできないとなると、こればかりはしょうがない。

受け取る側がケータイ・メールしか対応しておらず、添付ファイルを開けないというケースも案外多い。そんな場合は、プリントアウトしたイメージを FAX で送るしかなかったりする。そうした人が 3人いると、メールで一括同報送信した後に、3人に向けてそれぞれ FAX を送らなければならない。エラい手間である。

そうかと思うと、我が家の FAX に真っ黒につぶれた写真の画像を送付してくる人もいる。「地元紙に掲載された孫の写真です」なんて説明が付いているのだが、その孫は怪物状態で何が何だかさっぱりわからない。先方は「画像なんだから FAX で送るのが当然」なんて思っているようだが、「きちんとスキャンしたイメージを添付ファイルで送ってくれよ」と言いたくもなる。いや、もっと率直にいえば、そんな写真、別に要らないし。

そんなケースでなくても、FAX が幅をきかせることがある。芸能人の結婚、離婚の報告なんかは、今でもマスコミに FAX で送られる場合が多いらしい。

これに関して私は昨年秋の記事で、何故なのか考察している(参照)。インターネットの Q&A サイトで検索すると「自筆であることを証明するため」とか 「一斉に同報送信するため」とかいう、おめでたすぎる回答が幅をきかせていて、まあ、送る側はそのように信じている場合もあるのかもしれないが、ナンセンスにもほどがある。

私としてはこの記事の中で、次のように推理している。

私が思うに、マスコミのプレス・リリースを受け付けるメルアドって、案外不明確なんじゃないだろうか。個々の記者は当然のごとくメルアドを持っているが、その記者はしょっちゅう担当が変わる。発表の分野や内容ごとに最適な記者のメルアドをリアルタイムでおさえておくのは、案外難しかったりするのだろう。

それだったら、代表番号みたいな位置づけの FAX に送る方が確実だ。それに個々のプロダクションは、昔から FAX の同報送信用のセットがしてあるのだろう。FAX 機に原稿をセットして同報送信用のボタンをピッと押せば、後は順繰りに送ってくれる。

多分、これが正解だと私は思っている。日本のマスコミでは頻繁に人事異動、配置転換が行われるので、「個人」をベースとしたメール・システムではこの日本スタイルに対応できないのだ。「〇〇 様」ではなく、「ご担当者様」で送るには、FAX が手っ取り早いのである。

マスコミに限らず、日本の企業では何をするにも「個人」ではなく「チーム」が窓口になることが多い。この「チーム」に送るには、着信したら誰でも見ることができる FAX の方が、「馴染み」がいいのである。つまり、日本では「個人」に立脚したビジネス・スタイルが根付いていないのだ。

逆に海外では、特定個人に送った通信文でも周囲に丸見えになる FAX なんて、とても抵抗があるんだろうね。そんなこともあってか、1980年代の欧米では、FAX の普及が日本に比べてものすごく遅れていた。新聞記者時代に海外出張して原稿を送るのに、郵便局まで行かないと FAX が送れないということが珍しくなかったのを記憶している。

そして欧米では E-mail が普及すると、普及の中途半端だった FAX は急速に廃れた。日本はなまじ FAX 先進国だったし、それが日本のビジネススタイルに妙にフィットしていたこともあって、今でも幅をきかせているというわけだ。

 

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コメント

企業間のFAXのやりとり多いですね。
ある大手の建設会社のFAX番号と我が家の固定電話(FAX兼)の番号が一字違いの為、頻繁に宛先違いのFAXが送られて来ます。

昔のFAX機のモニター画面は相手の電話番号だけが表示されるので、印刷して初めて誰からのものかを確認するしかなかったので、これがしょっちゅう数枚にもわたり、かなり迷惑でした。

相手も困るだろうと、数度にわたってその会社に連絡して、送信者名を告げ、注意してくれるように頼んではみたものの、全く改善されなかったので、FAX自動印刷をoffにしました。

投稿: K.N | 2016年4月 7日 09:37

faxは電話回線さえあれば、一台9000円位の機器をお互いが買うだけで、原稿が瞬時に遠隔地に送れるので便利ですね。通信料金も使った分の電話代を払えばよく、ネットの様に別途数千円の料金を毎月払う必要がない。ということで細々と生き残るとおもいます。

尤も、
30年くらい前は:
☆国内の電話回線の質も現在ほどよくなく、またモデムの変復調技術がメーカーによって差があり通信できないことが多々あった。今はこの問題はほぼ皆無。

☆ロシア、アジアなどへは、相手国内の回線の質が劣悪で、送信不可のケースが多かった。

☆価格が初期の物は300万もした。(それでも、これは便利だということで多くの企業が飛びついた)
今は、当時より高性能の機械が一万以下で買える。

ファクシミリに関する問題が解決したのと入れ替わりに、あっという間にメールにその立場を奪われてしまいましたね。

私はプリンターを買うときは必ずfax機能付きを選びますが、年間30通くらいは受信するからです。そのときはないと不便なんですね。

一昨年、幕張で開催された”ceatec japan(電子機器展)”に行きましたが、「カラーファクシミリ」のブースがありました。業界団体は何を考えてるんだろうと不思議な気分になりました。誰も買わないとおもいます。

投稿: ハマッコー | 2016年4月 7日 11:04

K.N さん:

それはさぞ迷惑なことでしょうね。

実は私も、商談や見積もりなどの詳細を記した FAX を誤配信されたことが何度もあります。

企業間のでデリケートな部分の連絡が相手に届かないばかりか、無関係の個人や企業に漏れてしまうことのリスクなんて、まったく関知していないのですね。

無造作に FAX を送信する人というのは、実はその辺のことがよくわかっていないようで、決まった企業から何度でも誤配信してきます。きっと商談が壊れちゃってるでしょう。

投稿: tak | 2016年4月 7日 20:19

ハマッコー さん:

メールがまだあまり普及していなかった20年以上前は、私もよく FAX を使いました。「まいトーク FAX」 なんていうソフトで、自動同報送信もしたりしていましたが、今やほとんどメールで済ませています。

FAX ソフトで 20社に同報送信すると、A4 1枚でも 1件に 2分ぐらいかかり、中には FAX 兼用電話で無造作に受話器を取り、「なんじゃこりゃ?」 なんて言ってガチャリと切っちゃう相手もいて、何度も送り直すので、終わるまで 1時間ぐらいかかっていました。電話代も、何百円もかかります。

ですから、連絡を取り合う必要がある立場にありながら未だにメールに対応していない人には、「あんたは周囲に余計な手間と金をかけさせてるんだよ」 と軽く嫌みを言うのですが、全然通じません ^^;)

それにしても 「カラーファクシミリ」 とは、ガラパゴスにもほどがありますね。

投稿: tak | 2016年4月 7日 20:38

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