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2016年4月 2日

陶器と磁器の違いを、この年になって初めて知って

まことに恥ずかしながら、陶器と磁器の違いというのを、この年になって初めて知った。「陶器 磁器 違い」というキーワードで検索してみて、トップにランクされている「陶器と磁器は違います - 全国やきもの案内・日本六古窯」というページを読んで見ると、なんのことはない。すらすらとわかってしまった。

要するに原料の違いということのようなのだが、感覚的には、陶器というのは備前焼に代表されるような、ちょっとラジッドな表面感のやつで、磁器というのは有田焼に代表されるような、地が真っ白で洗練された感覚のやつと思えばいいようなのである。なんだ、わかってみれば実に単純なお話じゃないか。

私がこの年になるまで陶器と磁器の違いをわかっていなかったのは、決して調べてみなかったからというわけじゃない。実はかなり前に調べてみたことはあるのだ。それはインターネットが普及していなかった頃だから、30代前半のことだったろう。多分、どこかの図書館に行ったついでに、百科事典で調べてみたんじゃないかと思う。

私はその時、「陶器」と「磁器」の項目をそれぞれ読んでみたんだと思う。その時は 「陶器と磁気の違い」を調べようなんて思って図書館に行ったわけじゃなく、何かのついでだったはずだから、じっくりと読み込んで両者の違いを比較検討するなんて余裕はなかった。それで、それぞれの項目のかなり長い説明をざっと流し読みして、「違いは、結局よくわからん!」と、あっさり匙を投げた。

そしてそのまま「陶器と磁気の違いというのは、よくわからんものである」 と、ほぼ 30年間にわたって思い込んでいたのである。実はこんなに簡単なことだったとは、何十年もにわたって思いもしなかった。

30年前と今との違いは、結局は調べてみる時の「項目の立て方」によるものだ。30年前は「陶器」と「磁器」に関する長々とした説明を、ざっと流し読みした。そこにはそれぞれの歴史、材料、技法、種類、代表的産地・作家、流通、用途など、「これでもか」 というほどの情報がてんこ盛りだった。てんこ盛りすぎて、両者の違いを端的にフォーカスすることまでに至らなかった。

ところがインターネットの時代となった今、自分の知りたい「陶器と磁器の違い」というただ一点にフォーカスして調べることができるようになった。ありがたいことである。おかげで他の豊富すぎる情報に埋没することなく、知りたいポイントに絞り込んだ情報に、さくさくっと行き着くことができたのである。

18世紀フランスの百科全書派のような啓蒙主義、教養主義をひょいとパスしながら、我々は知りたいことをとても楽に、いながらにして調べることができる世の中に生きている。だから我々の「知識の平均点」は、3世紀前に比べれば少しは高いところにあると思う。しかし気をつけなければならないのは、「知識の深さ」がどうかという点だ。

私は 「陶器と磁器の違い」 について簡単に知ることができたが、「陶器そのもの」「磁器そのもの」 について詳しく知ったわけじゃない。それぞれについての知識は、甚だおぼつかないものである。それは知りたいポイントを、まさにピンポイントで楽に知ることができたために、その周辺の情報をせっせと読み込むことをパスしたからだ。

1つのことを知るために、その周辺の膨大な情報の山に分け入り、さんざん遠回りをした挙げ句にようやくゴールにたどり着いた者は、簡単に 1つのことを知ってしまった者とは比較にならないほどの「知識の深み」を身につけているだろう。ピンポイントで得た知識は、大きなバックグラウンドに裏付けられた知識に太刀打ちできない。

時には回り道をすることも、とても大切なことなのだ。私も及ばずながら、陶磁器の世界の迷路を折に触れて、これまでより深く楽しんでみたいと思う。

最後にちょっとした付録。私はこれまで、英語の china, pottery, porcelain は「陶器」の同義語かと思っていたのだが、ものはついでと調べてみたら、陶器は pottery で、china と porcelain は磁器を指すのだとわかった。へえ! ちっとも知らなかったよ。ちなみに総称としての 「陶磁器」 は "ceramics" なんだそうだが、"ceramic industry" は、ガラス、セメント、煉瓦、タイルの業界も含むという。

ふうむ、なるほど。英語とセットで考えると、頭の中の整理がつきやすい。粉を練ったのが paste で、練って熱して固めたのは ceramics なのだね。

 

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コメント

自分も以前気になって、ボーンチャイナといった光沢あるものが磁器、素焼きの風合いのある素朴なものが陶器ということまでは把握したつもりですが、いざ見た目で判断できるかというと「分からない」という結論に至ったことがあります。
陶磁器の代名詞である「瀬戸物」の初期のものは中国の磁器を模倣した陶器であったり、反対に(「黒備前」などと称した)安物の食器は陶器や炻器の風合いを模倣した磁器であったり。釉薬次第でどうにでも見えてしまうのが混乱の元な気がします。

投稿: clark | 2016年4月 3日 15:56

混乱ついでに。
「コレール食器」という割れにくい器があります。
見た目も風合いも磁器ですが、正体はガラスだそうです。

磁器にも、「ボン土(並土)」や「ニューボン(白磁)」などがあります。
厚めのマグカップなどは「ボン土」、エレガントな薄手のティーカップなどは「ニューボン」を使うことが多いと聞きます。

アタクシも、まだまだ勉強中ですハイ。

投稿: 乙痴庵 | 2016年4月 3日 23:19

clark さん:

あわわ、掘り下げてみると、そんなに単純なお話じゃなかったんですね。

これから少しずつ勉強していきます。
(各地の博物館なんかで、陶芸は結構興味深く眺めてるつもりではあるんですが、なかなか難しいものですね)

投稿: tak | 2016年4月 3日 23:42

乙痴庵 さん:

さすが、よくご存じで。

茨城の笠間市にも「陶芸美術館」というのがあるので、時々は寄ってみて、勉強しなきゃ。

投稿: tak | 2016年4月 3日 23:43

訂正いたします,!
ボン土は、ホンマのボーンチャイナの原料となる高級土だそうです。

並土は実に並の土で、一番安価な土です。

誤情報、深謝します。

投稿: 乙痴庵 | 2016年4月 4日 08:26

乙痴庵 さん:

了解しました。
(って、本当はよくはわかってないんですが ^^;)

投稿: tak | 2016年4月 5日 23:56

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