子供の頃は、イノシシって想像上の動物と思っていた
名前は忘れたが、ラジオに出ていた芸人が自分の出身地がいかに田舎かを言うジョークとして、「十二支すべての動物が出没します」なんて言っていた。「さすがに虎は出ないでしょ!」というツッコミに、「いやいや、毎年虎と竜の被害がスゴいんです」と、かなり根性の入ったボケをかましていた。そこまで言えれば大したものである。
自分のことを言えば、十二支の中で想像上の動物である龍(つまり辰で、私の干支)を除くと、未だに生で見たことのないのがイノシシである。さすがにトラを生で見たのは動物園だけだが、その他はフツーの生活の中で生で見たことがある。あまり田舎に縁のない人はサルも動物園でしか見たことがないだろうが、東北では奥羽山脈に分け入ればサルはいくらでもいる。
また、ヒツジも日本人には案外馴染みがなく、動物園以外でみたことがないという人も多いだろう。それに関しては、昨年の正月に「羊を巡る小さな冒険」という記事で、日本人はどうしてヒツジを数えても眠れないかを解き明かしている。要するに、日本人はヒツジに馴染みがないから、それを数えようとすると想像力が必要になって、つい脳が活性化してしまうのである。
イノシシの話に戻ろう。私の場合、イノシシは動物園ですら見たことがない。イノシシの北限は、太平洋側では宮城県南部とされていたが、温暖化の最近は岩手県まで進出したという説もある。しかし日本海側は雪が深いので、さすがに私の生まれた山形県では見られない。イノシシは足が短いので、雪の中では思うように動けず、冬を越せないのだろう。
だから子供の頃はイノシシなんてまったく縁遠い存在で、想像上の動物ぐらいに思っていた。北海道の人たちはゴキブリを知らないなんて言われているが、私はイノシシを知らずに育ったのである。
里山に近いところではイノシシが普通に出てきて、夜になると畑を荒らすなんて知ったのは、関東に出てきてからである。さらに福島では原発事故のために避難地域となった辺りで、イノシシが爆発的に増えているらしい。想像上の動物なんてもんじゃない。
しかし関西の山間部に住む人の話によると、いくら山里でも昔はそんなにイノシシの害に悩まされることなんてなかったという。集落と里山との間の地域が開発されすぎた結果、人とイノシシとの間の緩衝地帯が消滅して、イノシシが直接畑に現れて荒らすようになったのではないかと言う人もいる。
なるほど。それを言ったら、東北方面でのクマも似たような状況にある。ということは、山間部の限界集落と言われるところに、今後人が住まなくなってしまったら、人とイノシシやクマとの関係も元に戻るだろうか。
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コメント
イノシシを見たこと無かったですか・・・。
最近ですが、雪国会津にもイノシシが定住するようになりました。
イノシシに関しては、再分布と呼ばれる現象が進んでいるらしいです。
すでに田畑に、被害も出始めています。
イノシシのいるところにはクマはいない、クマのいるところにはイノシシはいないと言われていたのに、家の周りで両方と付き合わなくてはならないかと思うと、頭が痛いです。
そのうち、酒田でもイノシシ!?なんてことになるかもですよ。
投稿: Mikio | 2016年5月17日 23:21
Mikio さん:
会津にもイノシシが出ますか。びっくりです。
若田でイノシシが駆け回るようになったら、どうしよう。
投稿: tak | 2016年5月18日 06:07
>未だに生で見たことのないのがイノシシである。
↑へぇ~、そうなんですか。
娘が通っていた神戸市東灘区の学校では、裏門から侵入したイノシシの集団が校内を疾走して、正門から出て行ったなどという話がザラでした。
投稿: ちくりん | 2016年5月18日 08:37
虎(タイガース)と竜(ドラゴンズ)に地元の球団が負けている、というジョークでしょうか?
投稿: カズ | 2016年5月18日 11:57
ちくりん さん:
たまたま今、神戸にいます。
神戸では本当にイノシシが身近な存在のようですね。
日本も広いものです。
投稿: tak | 2016年5月18日 19:11
カズ さん:
いえいえ、本当にジョークでもなんでもなく、イノシシは生で見たことがないんですよ。
見たいとも思っていませんけどね。
投稿: tak | 2016年5月18日 19:12