「気持ち」という便利な単語
やや「今さら」感のあるテーマだが、ベッキーというタレントの例の不倫云々ということについて、ちょっと書きたいと思う。
ただ、是非とも書いておきたいというようなテーマでもなく、ネタ枯れの時期の埋め草なので、読んでくれる人も「そうそう、そうだよね!」ってな感じで膝を打ってくれるような内容にはならない。なにしろ私はベッキーというタレントの顔は知っているが、相手の何とか乙女のかんとかいう男については何も知らないのだから、深いことなんか書けるわけがない。
基本的に私は、タレントが不倫云々で休業するということに、あまり興味がない。そんなようなことでいちいち休業しなければならないのだとしたら、もっとずっと多くのタレントが休業していなければならないだろう。要するに、世間にバレちゃったのがいけないのだ。
どうやら CM 関連のスポンサーが視聴者の反発を恐れるというのが大きなファクターらしいが、私個人としては、そんなことでいちいち反発するほどヒマじゃないよと言うほかない。色恋沙汰なんて当事者同士でテキトーにやってくれればいい話で、こっちは別にカンケーない。
しかしこの分野では、そんなことでいちいち反発するようなヒマな人が、大きな影響力を発揮するようなのだね。テレビ局やスポンサーに抗議の電話をかけたりするんだから、そんな電話の応対をしなければならない側としては、そりゃあうっとうしくてしょうがないだろう。
とにかく、どーでもいいことでやたらといろんなことを言わなければならない世界のようなのだ。しかし所詮「どーでもいいこと」なので、それに対しての言い草も「どーでもいい」言い方になる。ただ、その「どーでもよさ」が、曰く言いがたい趣きがあって、それはそれでちょっと面白い。
何が「面白い」のかというと、ベッキーというタレントが週刊文春に寄せたという手紙の内容である。曰く言いがたい「どーでもよさ」をもっともらしく書き連ねると、こんな感じになるのだなあと、私は半分は感心してしまった。私にこういう文章を書けといっても、まず無理だ。ある意味、たいしたものである。
Intergate というサイトにその手紙の全文が載っている(参照)ので、そこから一部を引用する。
出会って好きになった後に奥様がいることを知りました。そこで気持ちをとめるべきでした。
川谷さんへの気持ちはもうありません。
文春さんで奥様が話された記事を読み、そこで初めて奥様のお気持ちを知り、自分の気持ちの整理がつきました。
私がとった軽率な行動は謝って済まされることではありませんが、せめて奥様の前で頭を下げてお詫びをさせていただければと思っております。
記者会見についてですが、私は気持ちの整理もつかないまま会見の場に立ちました。
短い 5つのセンテンスのうちに、「気持ち」という単語が 5回も使われていて、しかもそれぞれ意味合いはビミョーに異なっている。「それぞれの『気持ち』という言葉は、以下の何をさしているか」 なんて、現代国語の試験問題が作れそうだ。
まあ、コトの内容をぼかすには、ちょうどいい便利な単語なんだろうね。とくに「気持ちはもうありません」という言い方は、ちょっと「気持ち悪い」けど。一方で「ぼかし」だけにとどまらない凄みすら感じてしまう。こうしたレトリックを学ばなかったことが、私の世渡り下手を象徴しているんじゃないかとさえ思った次第である。
| 固定リンク
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- ディズニーランドって、ちょっと特別な場所なのかも(2023.11.28)
- スタッドレスタイヤが要らなくなれば、ありがたいが(2023.11.24)
- 「東海道・山陽・九州新幹線でも喫煙ルーム廃止」歓迎!(2023.10.18)
- 明日から、急に忙しくなってしまうので・・・(2023.10.06)
- 「残暑見舞い」に八つ当たり(2023.08.26)
コメント
庄内中学定期試験 現代文
次の「気もち」に関する内容を、をそれぞれ具体的に説明せよ
1、そこで「気持ち」をとめるべきでした。
>記者会見では友人関係と説明したが、実際には恋愛感情のこと
2、 川谷さんへの「気持ち」はもうありません。
>好意のこと、友達付き合いもする気はない。
3、文春さんで奥様が話された記事を読み、そこで初めて奥様のお気持ちを知り、
>嫌悪、怒りなど私たちへの不快の念のこと
4、自分の気持ちの整理がつきました。
>「浮ついた恋愛感情」のこと、目が覚めた。
5、 記者会見についてですが、私は「気持ち」の整理もつかないまま会見の場に立ちました。
友人関係という説明で乗り切りたいという甘い期待のこと、正直にすべてを話す決心は出来ていなかった。
こんな感じで如何でしょうか?
投稿: ちくりん | 2016年5月 6日 13:26
ちくりん さん:
満点ですね (^o^)
ちょっとした解釈の必要な手紙だったわけです。
投稿: tak | 2016年5月 6日 18:01
ベッキーさんの手紙は現代文の問題として使えそうなので、「五ヶ所で気持ちという単語が使われいるが、それぞれを適切な単語に置き換えよ」なんていう形式で、投稿しようと考えていましたが、連休中にちくりんさんに先を越されてしまいました。
それにしても、手紙を書き上げてから読み返してみて「ちょっと同じ単語を使いすぎて、気持ちが伝わらないかも」って思わなかったんでしょうか。美文字で書かれていただけに残念。
投稿: ハマッコー | 2016年5月 7日 01:04
ハマッコーさん、こんにちは。
このたびは失礼いたしました。
私も同じ言葉を繰り返して使うのが嫌いです。
ベッキーさんは手紙を読み返さなかったのか?
読み返しても違和感を感じなかったのか?
どっちなのかなぁと思います。
投稿: ちくりん | 2016年5月 7日 10:53
ハマッコー さん:
それぞれの場面で別の意味に使っているので、よもや同じ単語とは思われなかったんだと思います。
それほどまでに、ずっと 「気持ち」 で生きてきたんでしょう。
投稿: tak | 2016年5月 8日 14:28
ちくりん さん:
文章としての完成度はあまり気にかけないタイプなんでしょうね。
「気持ち」 が伝わったような 「気持ち」 になりさえすればいいので。
投稿: tak | 2016年5月 8日 14:30