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2016年5月15日

経費支出の公私混同

東京都知事の政治資金の私的流用が取り沙汰されている(参照)。家族旅行のホテル代や私的な備品代を政治資金として支出していたようだ。しかもそれが結構高額なので、都知事になってからのやたら豪華な出張の件も合わせ、「この人、かなり金遣いの荒い人だなあ」と思ってしまう。

ただ政治資金に限らず、経費の公私混同というのは決して珍しくないことで、中小企業の経営者なんて、家族の牛乳代まで会社の経費で払ってるなんて言われきた。とにかく「経費で落とせるものはなんでも落とす」のが、この世界の常識みたいになっている。舛添さんを批判する人は、その辺りのことはさぞかしきれいに処理しているのだろうと思うが、実際はどうなんだろう。

私が自分の会社(私一人だけのワンマン・カンパニーだが)を作った時、税理士からは「どんなものでもいいですから、領収書は保存しておいて下さい。個人的な外食代や、ちょっとしたコンビニでの買い物でも、できるだけ経費で落とすといいです」と指導された。この世界ではそれが当然なのだそうだ。

だがそういうのって、何となく気持ち悪くて性分に合わないので、個人的な支出は会社の経費にはしていない。税理士からは、「なんでもいいですから、もっと領収書を保管しておいて下さい」と言われたが、結局従っていない。

舛添さんはこうした「世間の常識」に関して、気持ち悪いとは思わない性分なんだろう。そしてそれは、舛添さんだけというわけじゃない。しかしよく考えれば、こうした税理士の指導って「気持ち悪くて性分に合わない」どころか、れっきとした犯罪じゃないか。

思い返せば、亡くなった父は脱サラして零細企業を始め、まあまあ成功した部類に入るのだが、家族で食事をしても領収書なんかもらっているのを見たことがない。昔はレジから自動的にレシートが出てくるなんてことも少なかったから、手書きの領収書を書いてもらうことになるのだが、父はそんな面倒なことは要求していなかったと思う。

父は零細企業経営者としては、多分少数派に属するタイプだった。出張の際の食事代ぐらいは多分経費扱いにしていたと思うが、仕事とプライベートはかなりきちんと区別していた。私にはその父の血が流れているので、こんなような性分になってしまったのだろう。

そして父は、自分がきれいな経理をしているからといって、公私混同している連中を批判するなんてこともなかった。「俺はそういうことはしないから」と言うだけで、他人まではどうこう言わなかったのである。私はそんなところまで父に似てしまったようで、このブログで鬼の首でも取ったように舛添さんを批判しまくったら、さぞかしウケるだろうが、どうもそんな気にはなれないのだよね。

そりゃまあ、「困ったもんだ」とは思うが、それを本気で言い出したら、世間一般がほとんど「困ったもんだ」ってなことになってしまう。このブログはその昔、「世の矛盾を爽快に斬りまくる」なんて言い方で紹介されたことがあるが、私は「斬りまくる」なんてことはしたくないんだけどなあ。その辺のことは、9年前に "そりゃ、「斬る」方が楽さ" というタイトルで書いたまんまである。

 

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コメント

先日とその前の定例会見をみて思いましたが、大学出たての若い記者ばかりで、質問の内容が甘い。都知事もそのことは充分わかっているので、定例会見の場ではこの程度で逃げ切れると安心しきってましたね。

「安いホテルに泊まってると、その程度の人物かと言って人が会ってくれない」というのがスイートルームにした一つの理由として挙げてましたが、出発前にどこで誰と会うかはすべて決まっているのは当然。
それに、都知事は世界中どこへ行っても都知事なわけで、ホテルのランクを見て「じゃあ、会わない」なんて急に言い出す人物がいるとはとても思えない。

この辺りのおかしな言い訳を「爽快に斬りまくる」記者が全くいないのはとても不思議。記者達は多分、スイートルームを不正に経費で使ったという身に覚えはないはずだから。
若い記者は舛添さんの前に出ると、反論されてやり込められたらどうしようと委縮してしまい声が出なくなるんでしょうね。

都議会もこの問題については殆ど黙っているのは不思議と言うより当然ですね。「爽快に斬りまくる」ことができない理由を身に抱えてているからでしょう。

舛添さんは、都知事の自覚はなく東京都株式会社の社長のつもりなんですよ。そう考えるとすべてが腑に落ちる。

文春砲はまだ弾をたくさん持っているはず。舛添さんはもう覚悟しているでしょう。
乱文失礼しました。

投稿: ハマッコー | 2016年5月16日 13:25

ハマッコー さん:

>「安いホテルに泊まってると、その程度の人物かと言って人が会ってくれない」というのがスイートルームにした一つの理由として挙げてましたが、出発前にどこで誰と会うかはすべて決まっているのは当然。

その言い分を認めるにしても、あまりにも高すぎますね。下手すると、ちょっとした国の国家元首並みです。

>舛添さんは、都知事の自覚はなく東京都株式会社の社長のつもりなんですよ。そう考えるとすべてが腑に落ちる。

まさに言い得てますね。その通りだと思います。

投稿: tak | 2016年5月19日 21:59

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