近頃台頭している 「ぶっちゃけ本音主義」
去年の夏、「生き返ったヒラリー・クリントン」という記事を書いた。10年前に「ヒラリーは、ただスマートなだけかも」と書き、8年前には「賞味期限切れのヒラリー」とまで書いたが、なんと周回遅れで復活しちゃったので、それまでの発言を修正したのだ。まあ、「ただスマートなだけ」というのは、まだまだ払拭されてないけどね。
そして去年の夏の記事では、ことのついでに「怖いもの見たさ人気のドナルド・トランプ」なんて書いていたのだが、それについても反省しなければならない。トランプ人気は、単なる「怖いもの見たさ」なんかじゃなかったようだ。
今年の 1月に「ドナルド・トランプと『本音主義』 の危なさ」という記事でも触れたが、それがいよいよ現実のものとなってしまった。今から思えば、ヨーロッパでの排他的政策を掲げる極右政党の躍進とも一脈通じる流れとして捉えておかなければならなかったのだろう。直近のフィリピンでのロドリゴ・ドゥテルテにしてもそうで、世界は今、身も蓋もない「ぶっちゃけ本音主義」に傾斜しているようなのである。
そもそも米国という国はそうした傾向の強い国だった。これまではそうした「本音」を大きな声で言う候補者がいなかっただけで、それをドナルド・トランプが始めてやってみたら、なんと大人気になってしまったのである。
このまま行けば、米大統領選はヒラリー・クリントンとドナルド・トランプの対決になるのだろう。常識的に考えれば、ヒラリーが勝つと予想されるが、トランプが好きな中西部の連中は、たいていヒラリーみたいな女が嫌いだから、どう転ぶか知れたもんじゃない。
こうした「ぶっちゃけ本音主義」の台頭というのは、実は民主主義そのものの危機なのかもしれない。この危機を乗り越えるのは、1月の記事でも触れたが「建前論」である(参照)。「建前」は「本音」の前では無力に見えるかも知れないが、「ぶっちゃけ本音主義」で突き進む「業」の暴走をくい止めるのは、「きちんとした建前」だろうと思うのだ。
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コメント
「選挙に立候補する人は、私を含めて、ろくでもない人ばかりである」
「選挙に立候補する人は、異性にもてたいとか、お金を儲けたいとか、権力を握りたいとか、目立ちたいとか、せいぜいそんなところが目的である」
「選挙とはろくでもない人の中から、現時点で税金を上手に分配できそうな少しでもましな人を選び続ける忍耐そのものをいうのである」
以上は全てチャーチルの言葉です。
アメリカは今、忍耐のなかにあるのでしょうか。国民がそういう意識を持っていればいいのですが。
投稿: ハマッコー | 2016年5月14日 23:23
ハマッコー さん:
いかにもチャーチルらしいというか、シニカルな言葉ですね。
日本で政治家がこんなことを言ったら、それこそ大変なことになりますが、さすが英国。
投稿: tak | 2016年5月15日 17:54
「国民のために」
という言葉がしらけてしまっている今日この頃。
身を切る改革も、組織の末端にしか影響しない構図が見え隠れで、それを決める人にはなぁんも響かない。
本音が強くなると、修正意見や反対意見が排斥されて、過激化していく懸念があるそうです。(ラジヲで言ってた)
まるで、昭和のイデオロギーに回帰してんじゃないかと。
投稿: 乙痴庵 | 2016年5月16日 12:58
乙痴庵 さん:
この国の現状をみると、本音が強くなると過激化し、建前が強くなると、まさに「建前のための建前」 か 「本音を隠すための建前」 にしかならないようです。
そうこうしているうちに、民進党は 「平成の社会党」 になってしまいそうで、「なんだかなあ」 という感じです。
私としては、「何でも反対するための野党」 ではなく、「自民党にいたんでは、人脈的に日の目を見ない連中が、野心をもって運営する野党」 ぐらいになってもらいたいと思ってるんですがね。
投稿: tak | 2016年5月19日 22:05