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2016年6月25日

英国の EU 離脱が示す「鬱憤晴らし」の時代

英国で EU 離脱派が勝利したので、私は「米国ではトランプが密かに喜んでるだろう」と思ったら、さすがにドナルド・トランプである。「密かに」なんてもんじゃなく、大喜びしていた。わかりやすい人である。CNN Japan が、"トランプ氏「次は米国」大統領選でも反エリート感情が鍵か" と伝えている。

私はこの流れは日本の安倍政権支持の大衆心理とも共通していると思う。CNN Japan では「反エリート感情」と総称しているが、原文では "populist anger" (大衆主義的怒り)とまとめている。要するに感情論であり、別の言葉で言えば「鬱憤晴らし」だ。ドナルド・トランプは次のように述べているという(参照)。

The referendum campaign -- just like the U.S. election -- has boiled with populist anger, fear-mongering by politicians, hostility towards distant political elites and resurgent nationalism, and exposed a visceral feeling in the electorate that ordinary voters have lost control of the politics that shape their own lives.

彼は、英国の国民投票は米国の大統領選と同様に、大衆主義的怒りの現れであるとしている。その内容というのは、政治家による恐怖の扇動への反発、政治的エリートたちに向けた敵意、ナショナリズムの復活、有権者の腹の底からの感覚の表現だとしていて、英国の EU 離脱は、一般民衆が政治家のコントロールから脱していることを示すと言っている。

さすがトランプで、核心を突いている。米国のシンプルなオッちゃんたちの心の琴線に触れる。しかしそれほどのパワーをもつのは、徹頭徹尾「感情論」に立脚しているからだ。感情論は簡単に理屈に勝つ。面倒な理屈をごちゃごちゃ述べ立てるより、喜怒哀楽に訴える方がずっと強力なのだ。だからこそ厄介なのである。

日本では安倍内閣がこのメソッドに立脚している。「美しい日本」なんて言って、実態のわからないことを単なる感情論で引っ張ろうとしているように見える。一杯飲み屋のおっちゃんたちの政治談義と変わらないレベルのもので、煎じ詰めるとやっぱり「鬱憤晴らし」なのである。

こうした「鬱憤晴らし」がこんなにも力をもってしまうのは、やはりそれだけ「鬱憤」がたまっているということで、その「鬱憤」は、これまで続いてきた新自由主義的な政治経済によって、社会の底にたっぷり沈殿してしまっていたものだ。だからちょっとかき混ぜただけで、こんな不透明なことになる。

その「鬱憤晴らし」というのは、イスラム過激派の心情とも一致していて、だからこそドナルド・トランプは、近親憎悪的にあれほどイスラム教徒を排斥しようとしているのだ。自分よりストレートに命がけで「鬱憤晴らし」しようとしている連中を、恐れてしまうのである。

 

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