「楽しめ、少女たちよ!」 という広告
今日、久しぶりで「つくばエクスプレス」に乗って東京都心まででかけた。秋葉原行きの快速電車に乗り、座席に腰を下ろした時、乗降口付近に貼られたポスターを見て、ちょっとほっとした。それは「ミュゼ・プラチナム」という脱毛サロン(らしい)の広告で、ちょっと前まで気になってしょうがなかったのである。
いや、私が脱毛しようと思っていたわけじゃない。何が気になっていたのかというと、少なくとも先月末までは、この脱毛サロンのポスターは、ちょっと可愛い女の子の写真にかぶせたキャッチ・コピーが、"ENJOY the GIRL!" というものだったのである。下に証拠写真をあげておく。
「その女の子を楽しめ!」とは、あまりといえばあんまりな言い草で、このポスターが目の前に貼られているだけで居心地悪い気がしていた。気の毒なのはこのモデルの女の子である。「変な楽しみ方されなければいいが」なんて思っていたよ。
しかるに今日の電車内のポスターのキャッチ・コピーは、しれっと "ENJOY, GIRLS!" に変わっていたのだった。誰かが「あまりに下品」とか言って、抗議の電話かなんか入れたのかもしれない。結局コンマを加えて "the" を取っ払ってくれたおかげで、「楽しめ、少女たちよ!」になった。まあ、初めからこれを言いたかったんだろうとは思うのだがね。
思わずゼクシーというブライダル・ビジネス大手が、長らく使っていたキャッチ・コピーの "Get Old with You"(お前と共に年を取れ) を、いつの間にかしれっと "Get Old with Me"(私と一緒に年をとってね)に変えていたのを思い出してしまったよ (参照)。
少しはほっとしたものの、いずれにしてもちょっと気持ち悪い英語には違いなく、何を楽しむのか明確でない場面で、目的語なしの "enjoy!" なんてあまり言われつけないから、少女たちは思わず「何を?」と聞きたくなってしまうだろう。もしかしたら、「怪我(毛が)なく楽しめ」という洒落かもしれないが。
"Girls, Enjoy Yourselves"(少女たちよ、楽しく過ごしてね)ぐらいに添削したくなったりするが、それでもまあ、決して魅力的なコピーではないよね。
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コメント
連投スマソ(笑)
これも、デザイナアがチヤチヤツと作つたコピイをクラヰアントに見せて「OKOK、OK牧場」とそのまま通つたのでせうかね(汗)。
今、手元に50年前の雑誌がありますが、カラア広告で女性モデルさんがギヨツとするような顔でポオズを決めてゐます。この業界は昔から「ギヨツとさせたら勝ち」といふ不文律でもあるのでせうかね。
私はギヨツとするのは好きではなひので、電車に乗つたときなど、目をつむつて広告などをなるべく見なゐやうにします(おいおい)。
投稿: はぎ腹みづ寝 | 2016年6月13日 22:52
”幸せというのはその人の考え方ひとつです。
でもあなたは幸せになりましょうね。”
という、デヴィ夫人の登場する電車内ポスターがあります。
https://www.google.co.jp/search?q=%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%83%B3%E5%A5%B3%E6%80%A7%E6%8E%A2%E5%81%B5%E7%A4%BE&hl=ja&biw=1129&bih=528&source=lnms&tbm=isch&sa=X&sqi=2&ved=0ahUKEwi5kaz_lKXNAhVEj5QKHYgEAREQ_AUIBigB#imgrc=_Z4j2DsHSlCuEM%3A
見る度に、ウッ となります。
デヴィ夫人がそう言ったのか、発注者がそう言ったのか、広告会社が考えたのか不明ですが、広告業界って不思議な世界だなぁって思います。
投稿: ハマッコー | 2016年6月13日 23:36
制作者の真意としては"Enjoy being a girl" だったような気がします。日本語で「『オンナノコ』を楽しめ!」なんてありそうなキャッチフレーズじゃないですか。
でも結局のところ文法も本来の意味もさほど重要ではなくて、シンプルで"Enjoy"と"Girl"が目立つデザインが重要だったんでしょうね。
投稿: たに | 2016年6月14日 10:35
はぎ腹みづ寝 さん:
このポスターに関しては、ぎょっとはせずに、ひたすら 「このおねえちゃん、気の毒に」 と思うのみでありました ^^;)
投稿: tak | 2016年6月14日 11:02
ハマッコー さん:
本当に広告業界とは不思議な業界だと思います。
これを言ったら怒られるかもしれませんが、かなりの部分、「口先だけの世界」 だと思っています。
投稿: tak | 2016年6月14日 11:06
たに さん:
>制作者の真意としては"Enjoy being a girl" だったような気がします。日本語で「『オンナノコ』を楽しめ!」なんてありそうなキャッチフレーズじゃないですか。
その通りなんでしょうね。
もしやと思って 「オンナノコを楽しめ!」 を Google 翻訳にかけてみたら、
Enjoy a girl .
と出てきました。後で 「"a" じゃ弱い、ここは "the" で行かなくちゃ!」 なんて力技で修正された可能性もあります (^o^)
>でも結局のところ文法も本来の意味もさほど重要ではなくて、シンプルで"Enjoy"と"Girl"が目立つデザインが重要だったんでしょうね。
ターゲットの多くは、難しい単語を知らないですしね。どうせ英語は言葉じゃなくて記号だと思ってるから。
投稿: tak | 2016年6月14日 11:15