「鬱憤晴らし」の行きすぎを後悔する英国民
一昨日 "英国の EU 離脱が示す「鬱憤晴らし」の時代" という記事を書いたが、その鬱憤晴らしで EC 離脱に一票を投じた人の多くが、早くも気を取り直して後悔し始めているらしい。多くのニュースがそれを報じているが、毎日新聞の記事の見出しは "英EU離脱 公約「うそ」認める幹部「投票後悔」の声も" と、とても直接的だ。
何しろ離脱派のキャンペーンの中でもかなり目立っていたのが、EU への拠出金が高額すぎるという話だったのだが、英国独立党のナイジェル・ファラージ党首が、投票に勝利した翌日のテレビ番組で、これが間違いだったとあっさり認めたというのである。「おい、マジかよ!」 と言いたくなるではないか。
彼は週 3億 5000万ポンド(約 480億円)にのぼる拠出金を、国民医療サービスの財源にすべきだと主張していたのだが、実は EU から還元される補助金を差し引くと、拠出金は週 1億数千万ポンドだったらしい。さらに EU を離脱すれば大陸からの移民を制限できると主張してきたが、実際にはそんなに簡単なものではないらしい。離脱後に EU との貿易協定を有利な形で締結するためには、「人の移動の自由」を認めることが交換条件になるとみられるので、移民が減るというのもほとんど幻想のようだ。
結局のところ、23日の国民投票は壮大なる感情論に支配された結果とみるのが妥当のようで、ちょっと落ち着いて我に返ると、多くの人が 「やば!」 と思ってしまっているわけだ。人間は感情に流されるとろくな事がない。そのせいで、21日の "英国の EU 離脱派が抱える矛盾" という記事で指摘した通り、スコットランドでまたぞろ独立論が高まっているようだし。
英国の国民投票の結果を聞いて、米国ではドナルド・トランプが大喜びしていたわけだが、ちょっと落ち着いてみると、まともな米国民なら、これまでトランプ支持を表明してきたとしても、「待てよ、俺たちも頭を冷やして考え直してみる必要がありそうだ」と思っているだろう。結局のところ彼にとっては、それほどいいニュースではなかったということになる。
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コメント
>まともな米国民なら、これまでトランプ支持を表明してきたとしても、「待てよ、俺たちも頭を冷やして考え直してみる必要がありそうだ」 と思っているだろう。
一票をお祭り気分で投票してはいけない、双方の主張を冷静に分析、判断しなければいけないという教訓になりますね。日本人にとっても遠い国の話ではない。
投稿: ハマッコー | 2016年6月28日 19:41
「国民投票」の恐ろしさというものを見せつけられました。
代議制度の中に唯一残された「直接民主政」の制度で、これは本当に最後の最後に行使されるべきものです。
少なくともここに至るまでは、政治のプロである為政者、経済学者等その道の専門家が徹底的に議論を交わし、それを国民に開示し、国民もそこそこの知識と思考を駆使した上で、それぞれのメリット・デメリットを理解し、大きな覚悟を持って投票をすべきなのに、なんと軽率なやり方をしたものです。
こんなに簡単に、ど素人の国民に「国民投票」という形で丸投げしたキャメロンさんの罪は大きいと思います。
いみじくも、ハマッコーさんおっしゃるように「お祭り気分」のイベントでもやるようなノリノリの雰囲気がテレビを通じて伝わって来ました。
「直接民主制」というのは、大概「衆愚政治」に陥るという理が、紀元前の古代ギリシアの衰退・滅亡で証明済みです。
日本も他人事ではないです。「憲法改正」に向かって猛進しているトップがいる以上、万一「国民投票」ということになったら、国民一人一人が真剣に情報を集め、熟慮した上で投票に臨み、結果の責任は自分自身にあるということを自覚しなければならないことを、今回のイギリス・EU騒動から学ぶべきでしょう。
投稿: K.N | 2016年6月29日 13:21
ハマッコー さん:
まさにその通りです。
キャメロン首相は 「冷静に考えればわかるだろう」 と自信たっぷりに国民投票に持ち込んだわけですが、離脱派は思いっきりお祭り騒ぎにしてしまいましたね。
今回の結果は、大衆というのはそんなに冷静に理性的に物事を考えられるわけじゃないということを示したのだと思います。
投稿: tak | 2016年6月29日 19:37
K.N さん:
まさにおっしゃる通りです。
国防だの憲法改正だのを、「鬱憤晴らしのお祭りイベント」 にしてしまいかねない政権は危険です。改憲派の私でさえ、安倍政権の手で改憲なんかさせたら大変なことになると思っています。
投稿: tak | 2016年6月29日 19:40