時代は 「面倒な世の中」 の様相を呈している
今は昔の物語となった「米ソ冷戦時代」というのは、ある意味で結構なガス抜きの機能を果たしてくれていたのだなあと思う。当時、左側は「反米帝国主義」なんて叫んでいれば気持ちよかったし、それに抗して右側は「反共、反共」と声を揃えていればよかった。
物事をもっと深く考えてみようなんて人は、そう多くなかったし、ちょっと反抗的なポーズを取ることさえ 「カッコいい」 ことで、ジェームス・ディーンが時代のアイコンになり、日本でも『太陽の季節』なんていうのがもてはやされた。この小説の作者が右翼の頭目というのも、今はなるほどと頷ける。
しかしその「冷戦時代」はソ連の自壊で幕を閉じ、一時は「これで世界は平和になる」なんて幻想をみる人もいたが、世の中というのはそれほど単純なものではなかった。単純な図式思考で大きな声を張り上げてさえいればいいという時代が終わった分、世の中はもっと面倒くさいものになってしまったのだと、今となっては思う
「テロの時代」である。テロ問題は「反米」でも「反共」でも解決されない。政治的イデオロギーの問題じゃないのである。例えば中国の問題を考えてみればわかる。いや、「わかる」というのは、「わかりにくい問題であるとわかる」というだけのことだが。
世界最大の共産主義国家である中国は、今や妙な形で発展を遂げつつある「超資本主義経済」の国家であるともいえる。この国では富の分配が共産主義のコンセプト通りにはまったく進んでおらず、特権階級と成り上がり階級が独占する形で経済成長を遂げている。これって、マルクスが主張した「共産主義革命前夜」を彷彿とさせる状況ではないか。
マルクス主義の理論上では、こうした状況に不満を抱くプロレタリアート階級が、武力を用いて共産主義革命を起こし、特権的ブルジョアジー階級を駆逐するのである。ところが中国では、既に共産党が権力を掌握しているから、これ以上の共産主義革命が起きる余地はない。あるとすれば、「遅れてきた市民革命」だろう。
そして遙か昔に市民革命を経験したヨーロッパは、今はテロの標的となっている。テロを行っているのは、イデオロギーではなく、別の情念によって動かされる過激なイスラム教徒たちだ。世界はこうした連中にどう向き合うか、まだ明確な解答を得ていない。はっきりしているのは、従来の「反米」も「反共」も、ほとんど役に立たないということだ。
根本的な話をすれば、世界は「富の配分」のシステムを根底から作り替えなければならないということだろう。富の配分システムから脱落してしまった層が、「鬱憤ばらし」で滅茶苦茶な行動を起こす。そして最も組織化された鬱憤晴らしが、IS だ。
何かを破壊して新システムを構築するという作業を行わなければならないとしたら、まず真っ先に破壊の対象として考えなければならないのは、現在の「いびつな経済システム」だろうと思う。IS の連中はそれに気付いてか、あるいは無意識のたまたまか、それを行い始めている。彼らに歴史的な意義があるとしたら、その点についてでしかないだろう。
しかしそれはものすごく困難なことで、しかも彼らはやり方を根本的に間違えているから、必ず失敗するだろう。とにかく、時代は「面倒な世の中」の様相を呈しているのだ。
(写真は宮崎市の平和台公園にある、ちょっとおどろおどろしい感じの 「八紘一宇」 の塔)
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