「農作物」 という言葉から、いろいろ波及してしまって
これはだいぶ前に書いてしまったような気がしていたのだが、どう検索しても見つからないので、書いたと思っていただけのようだ。何かといえば「農作物」という言葉の読みである。私はかなり長い間「のうさくもつ」とばかり思っていたのだが、正しくは 「のうさくぶつ」 と読むというのである。

iPhone にインストールしている『大辞林』で「農作物」を調べると、次のようにある。
のうさくぶつ 【農作物】 (「のうさくもつ」 とも)
田畑で栽培する野菜・穀類など。農耕による生産物
ここでは一応申し訳程度に "(「のうさくもつ」 とも)" と書かれてはいるが、それじゃあと、「のうさくもつ」で調べても出てこないのである。これはどうやら "「のうさくもつ」とも読まれることがあるが、大辞林としてはそこまで付き合いきれない" というココロのようだ。
翻って「作物」という言葉の読みは、正真正銘の「さくもつ」である。「さくぶつ」とは決して読まない …… と思っていたのだが、それが素人のあさましさ。今回念のため調べてみると、なんと「さくぶつ」という読みもあるのである。『大辞林』には次のようにある。
さくもつ 【作物】
① 田畑に植えて栽培する植物。農作物や園芸作物。
② → さくぶつ(作物) に同じ。
というわけで、なんと「作物」と書いて「さくぶつ」とも読むというのだ。ならばと、「さくぶつ」の項に行ってみると、次のようにある。
さくぶつ 【作物】
作ったもの。とくに、芸術的作品。
へえ、いわゆる 「作品」 のことは、私はそんな使い方したことが一度もないが、「作物 (さくぶつ)」とも言うらしい。それどころか、「さくもの」という読み方まであるというのだから、世の中、わからない。
さくもの 【作物】
① 刀剣、器具など名工の製作品。名作。
② 地唄で、滑稽な内容を持つ曲の称。宝暦(1751〜1764)頃から始まった。
まったく言葉というのは意外なほどの広がりがあるものでだ。少し立ち入って調べてみると、地唄の「作物」というのは、「コトバンク」によると 「本来座興的に作られたものが多く,作詞者,作曲者を明らかにしない」とある(参照)。その場で即興的に作ったものだから「作物」 なんて言うのだろう。
さらに Wikipedia の「上方舞」の項によると、「作物」には『忘れ唱歌』『三国一』などがあるという(参照) 。私はどちらも知らないが、ネット上で歌詞を見つけた (『忘れ唱歌』『三国一』)。
さて、ここでもう一度「農作物」(のうさくぶつ)という言葉に戻るが、これが今イチ馴染みにくいのは、元々は「作物(さくもつ)」と言えば足りていたからなのだろう。「農作物」という言葉は、かなり新しい言葉なのではないかと思われる。
「農作物」 という言葉の成り立ちは、「農作」によって得られる成果物ということなのだろう。繋がり方としては「農・作物」ではなく、「農作・物」だ。そして「作物」(さくもつ)と言えば元々田畑で収穫されるものなのだから、本来「農」を付ける必要がない。
最後に蒸し返しになってしまうが、「さくぶつ」と読む「作物」は、「とくに芸術的作品」というあたりがしっくりこない。だって、「著作物」 や「創作物」という言葉の成り立ちは、「著・作物」や 「創・作物」ではなく、どうみたって「著作・物」「創作・物」 だと思うがなあ。
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それは山形県に帰郷するとより強く感じる。昔は表示された法定速度プラス 10km/h ぐらいで流れていることが多かったが、最近では法定速度以内ということが珍しくない。法定速度 40km/h の道路を 35km/h ぐらいで延々と走っている軽トラなんかもフツーに見られる。


































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