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2016年9月21日

新幹線車内の電源コンセントを巡る冒険

一昨日の 「新幹線車内の電源コンセント」 という記事になかなか興味深いコメントがついて、思わぬ展開を見せている。

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北陸新幹線では全座席に電源コンセント設置が実現しているが、東海道新幹線や東北新幹線では窓際の壁にしかない。記事中でその理由として 「E5 系 (注: 東北新幹線で使われる車両) の場合は高速運転を行うため、電気容量的に全座席コンセントの実現が難しかった」という、川重車両カンパニー技術本部設計課の大橋良和課長のコメントを紹介した。

私は 「ふぅん、そんなものか」 と思いつつ、部分的に 300km/h の高速運転をする東北新幹線では仕方ないかもしれないが、東海道新幹線ならいけるんじゃないかという疑問を差し挟んでおいた。まあ、ユーザーとしては当然の要望みたいなものである。

その記事に、ハマッコーさんから「この説明は大ウソ」というコメントがついた。その根拠を要約すれば、新幹線 1編成の電源コンセントで実際に使用される電力なんて、15A 程度と見積もられ、電磁調理器  1台分ぐらいのものということである。つまり、新幹線 1編成を走らせる電力量と比較すれば無視できるほどのものなので、この説明は信用できないというのだ。

言われてみれば確かにその通りで、設計側の説明を文字通りに受け取れば、東北新幹線は電子レンジ 1台分ぐらい(仮に全ての電源コンセントが使用されたとしても 10台分ぐらい)の余裕しかない「かなり一杯一杯の状態」で走行しているということになる。まともに考えれば、そんなことはあり得ないだろう。

まさにうさんくさい理屈であり、JR 東日本は単にコストをかけたくないだけなのではないかと勘ぐるに十分なずさんな説明である。

ところがその後に、禅堂さんから 「これ、走行用モーターと電気容量がかち合うって意味じゃなく、サービス用補助電源の容量の話だと思いますよ」というコメントがついた。禅堂さんの紹介してくれたウェブ・ページには、車両の床下に設置される「補助電源装置」というものの説明があり、「低電圧・定周波数の電力供給が目的であるため、主制御装置とは別に設置されています」とある。

つまり、走行を制御する「主制御装置」に使われる電力と、「補助電源装置」とは別系統であるらしいのだ。禅堂さんは、東北新幹線では床下スペースや重量などの問題で、大容量の補助電源装置を設置するだけの余裕がないのではないかと推測されている。なるほど、説得力のある説明である。

少なくとも、「電気容量的に難しかった」 などという説明よりはずっと説得力がある。つまり東洋経済の記事に載った川崎車両カンパニーの説明は、「もっともらしいことを言ってお茶を濁しておけばいいや」という姿勢が見え見えのテキトーな言い逃れにすぎないのではないかと疑うに十分なのだ。

そうでなければ、担当者の説明が言葉足らずだったのか、さらにまた東洋経済の記者のリテラシー不足で、批判的、実証的な書き方ができなかったのだろうと疑うことになる。多分こうした要素の合わせ技なんだろうが、いずれにしてもきちんと納得できる記事ではないということだ。

というわけで私は、将来的には 「補助電源装置」 というものの小型化、軽量化が期待されるので、北陸新幹線以外の新幹線、そして在来線の特急に至るまで、全座席に電源コンセントを設置してもらいたいものだという希望を述べておきたいのである。

【22日 追記】

この件に関しては、川崎車両カンパニーの大橋課長さんという方は、他の関連記事を読むに付け、専門的な説明を結構きちんとされる方のようだとうかがわれるので、東洋経済の記者が不適当に端折った記事にしてしまったのではないかという疑いの方が強まった。

大橋課長さんの名誉回復のため、追記しておく。

東洋経済の大阪直樹記者も勉強し直したのか、3ヶ月後の記事では結構まともに書いている。

 

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コメント

ラップトップの電源供給に、コンセントは必要かもしれませんから、将来的に全席コンセント設置になると思います。

反面、モバイルのバッテリーが大容量化するのと、どっちが早いかなぁ、ってな感じです。


新幹線利用者時代、通路側に座った女子が延長増設コンセントケーブル出してきて、窓側コンセントをシェアした経験があります。
その後真似して、出張時はコンパクト増設ケーブルを持つようになりました。(遠い思い出です)

投稿: 乙痴庵 | 2016年9月21日 23:16

tak さんの望みは2020年に叶うようですよ。
東海道新幹線で開発中の次期車両N700Sでは、全席にコンセントがつくようです。

このことを紹介した同じ東洋経済の大坂直樹記者の記事の中で、今度は「電気設備の大幅な小型軽量化により、全席にコンセントを設置できる電源容量を確保できるようになった」というJR東海の説明を引用していますね。

うーん、確かに、こっちの方が正確な説明なんでしょうけど、なんとも味気ない気がするのですが、どうでしょう?「高速運転を行うため、電気容量的に全座席コンセントの実現が難しかった」の方が、僕は好きだなあ。

れいの大橋良和さんという設計課長さんは、ライブドアの記事によれば、E7系の開発の中心にいた人物とのこと。こういう技術者が「鉄道最前線」なんて記事の取材を受けるんですから、そりゃあ張り切って説明したと思いますよ。たぶん記事にする段階で、ずいぶんと大胆に要約されちゃったんじゃあないかな。

投稿: 禅堂 | 2016年9月21日 23:23

実は、全席アウトレット化しても大きな問題があるようです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
・東京―金沢の2時間半のうち、1時間は「圏外」となる
・長野―金沢(約228キロ)のトンネル率は44.3%
・エリア化の予定は今のところなし
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
という事のようです。
WiーFi使いたい人は、東京長野間でさっさと用事を済ませなさいということですね。
いつかは全線で使えるようになるんでしょうが、これも2020年までということでしょうか。

投稿: ハマッコー | 2016年9月22日 07:11

乙痴庵 さん:

通路側に座って、延長ケーブルを使わせてもらったこと、実は私も 1度だけあります ^^;) モバイルバッテリーの残量もアヤしくなっていた時のことです。

窓際に座った人も電源使いたそうな時に、それで使ってもらったことも、何度かあります。

延長ケーブルは、ホテルの部屋の電源が決定的に足りないことが多いので、出張時にはいつも持ち歩いています。

私の場合は単なる延長ケーブル (口は 1つだけ) と、それに付ける 3つ口のあるアダプターの組み合わせです。延長ケーブルが要らない場合は、アダプターだけで済ませます。

投稿: tak | 2016年9月22日 09:17

禅堂 さん:

なるほど。関連記事を合わせて読めばよくわかってきますね。

大橋課長さんは、専門的なことをしっかりと説明したのだけれど、聞いた記者の方が、理解できなかったのか、いい加減に端折ってしまったのか、結果として 「なんじゃそりゃ?」 というような記事になってしまったと推測するのが自然ですね。

投稿: tak | 2016年9月22日 09:26

ハマッコー さん:

北陸新幹線は、確かにやたらとトンネルが多くて、「圏外」表示の区間もありました。調べ物の時とか、クラウドにおいたデータを参照したい時とかには、かなりイラりました。

長野にさしかかる前に、必要なデータはダウンロードして、一時的にローカルに保存する方がよさそうです。

そうでなければ、居眠りしてるとか。

投稿: tak | 2016年9月22日 09:31

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