ボブ・ディランのノーベル文学賞受賞に、しっかり納得
一昨日から長崎に出張し、今日の夕方に乱気流の中を羽田に降り立ち、日が暮れた道を自転車をぶっ飛ばして帰って来たら、ボブ・ディランがノーベル文学賞を受賞したというニュースが飛び込んできた。ひえ〜! その手があったか!! ウッディ・ガスリーズ・グランドチルドレンと思っている私としては、戸惑いながらも嬉しい。
巷では「今年こそ村上春樹」なんて言われていたが、私は密かに「それは絶対にない」と思っていた。なぜかと言われても答えに窮するが、直感として彼はノーベル文学賞っぽくないのである。彼は自分でもそう思っているらしいから、それは確かなことなんだろう。
だって、あるじゃん。芥川賞っぽくない作家とか、三島由紀夫文学賞っぽくない作家とか。スコット・フィッツジェラルドもレイモンド・カーバ—も、ノーベル文学賞をもらってないし、どうしたってそんな感じじゃないのである。その辺のところ、村上春樹自身は見極めてるのかもしれない。審査員ががらっと変わらなきゃ無理なのだ。
一方、ボブ・ディランなら完全に納得だ。多分、当人はニコリともしないだろうが。
ネットを見ると、「音楽もありなのか」「それなら長渕剛もありか」なんて反応があったりするが、おいおい、そんなことを言ってたら、世界で馬鹿にされるぞ。ディランの詩が文学であることは既にしっかりと認められたことなのだ。
今じゃあまり言われなくなったが、米国のビートニクからの系譜を知らないと、今回の彼の受賞は理解できないかもしれない。私の勝手な思いとしては、アレン・ギンズバーグやジャック・ケルアックの分まで一緒にもらったんだという気がしてしまうのだ。
何しろ「音楽」であるとともに、いや、それ以上に「詩」(現代詩)なのだよ。だからノーベル文学賞なのである。彼のアルバムは 6枚がグラミーの殿堂入りしているが、彼の作品はグラミー賞よりもノーベル文学賞の方がずっとふさわしいと思う。
上の写真は、私が LP で持っているディランのアルバムである。”SAVED” 以後は ダウンロードして iPhone の中にあるだけなので、形としてのジャケットは、写真にある 12枚だけだ。ああ、ジャケットを眺めるだけでも、ハイティーン時代からの思い出が体の中を駆け巡るよ。
ここでこれ以上ディランを語り始めたら眠れなくなってしまうから、今日のところはここまで。
【日付が変わって追記】
「ギョエテとはわしがことかとゲーテ言い」 というジョークがあるが、放送の世界でもネットの世界でも 「ボブ・デュラン」 と誤記したり、間違って発音したりするケースが多いのに驚いている。夜中の TBS ラジオの女子アナも「ボブ・デュラン」と連発していた。これって、女子アナだけじゃなく、原稿を書いた記者も知らなかったってことなんだろうね。
近頃は「デュランとは俺がことかとディラン言い」である。"Dylan" をどうやったら「デュラン」と読めちゃうのさ? と聞いても、当然ながら元のスペルも知らないんだろう。Duran とか Durand とかじゃないのだよ。その辺の所、よろしく。
そんなこんなで、リアルタイムで Bob Dylan を聴くことができた自分の幸せを思ってしまっている。
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コメント
ああ、tak先生はやはり「ディランズ・チルドレン」世代なのですね。私も小学生のころ、ディランの曲をラジオなどで聴いてはいたのですが、根が「ミーちゃんハーちゃん」なものですから、どうしても見た目が目立つアーティストのほうに行ってしまいました。というか、バカガキにはその深さなどわかるはずもなく。いや、お恥ずかしい。
でも、私の好きなジミ・ヘンドリックスやデヴィッド・ボウイ、イアン・ハンター(モット・ザ・フープル)などがディランの曲をカバーしたり、影響を受けたりしたことを公言していたので、ディランの偉大さは知っている…つもり?いやいや、お恥ずかしい。
今からでもディランを聴き込んでみましょうかね?いやいやいや、かえすがえすお恥ずかしい。
投稿: 萩原水音 | 2016年10月13日 23:13
片隅で聴いておられた方の話なら、少々…。
投稿: 乙痴庵 | 2016年10月14日 12:16
萩原水音 さん:
>「ディランズ・チルドレン」世代なのですね。
年から言うと、ボブ・ディランは、「偉大なる長兄」って感じの世代ですね (^o^)
彼の真骨頂は、やっぱり 「詩」 だと思うのですよ。今回ノーベル文学賞をもらうことで、それが再認識されました。
投稿: tak | 2016年10月15日 01:07
乙痴庵 さん:
この騒動で、彼を聞く人がふえると思いますが、とくに日本人は英語のハンデがあるので、聞いてすぐに深入りできるとは思われません。時間がかかると思います。
投稿: tak | 2016年10月15日 01:09