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2016年10月 3日

百貨店は付き合いきれない業界

日経ビジネスに「誰がアパレルを殺すのか」というシリーズがあり、その中に「百貨店 3社トップ激白、“衣料崩壊” 後の針路」という記事がある。「百貨店の大閉鎖時代を乗り切る次の一手は?」という副題付きだ。

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私はずいぶん前から 「オリンピックと百貨店は歴史的使命を終えかけている」と言っている(参照)ので、百貨店があちこちで閉鎖してもちっとも驚かない。むしろ遅すぎるぐらいだ。中国人観光客の 「爆買い」がカンフル剤になって、寿命をちょっとだけ長引かせていただけである。

周囲の人間に「最近、百貨店で服を買った?」と聞いても、大抵は「う〜ん、20年前ぐらいに 1度買ったかも」なんて返事が返ってくる。今でも服は百貨店で買うなんて人種もいることはいるが、それは同じような服を他のチャネルで探せば、半分以下の値段で買えると知らない人たちである。

確かに昔は百貨店や名の知れた専門店以外で買った服は、品質的に問題があったりした。しかし今のアパレル製品なんて、どこで買っても 90%は中国製である。ある程度の値段を出しさえすれば、品質的には大した違いはない。むしろユニクロなんて過剰品質じゃないかというぐらいのものだ。

私が百貨店業界に違和感を覚えるのは、自らの顧客を第三者に対して「お客様」という名で語ることだ。冒頭で紹介された記事を読めば、それはわかる。高島屋の社長のコメントをちょっと引用してみよう。こんな感じである。

「売上高に占める婦人服のシェアは2割を切っている状態。拡大はもはや望めず、下振れをいかに食い止めるかという状況になってきている。お客様が求める方向へシフトし、身の丈に合った削り方をしていく」

顧客に直接呼びかけるならば「お客様」というのもまだわかる。しかし自らの顧客のことを第三者に向かってまで「お客様」なんていうのは、私の知る限り百貨店業界ぐらいのものである。フツーの業界ならば新聞記者の取材に対しては、客観的に「顧客の求める方向へ……」といったような言い方をする。

私は「別にどうでもいいお前の客のことを、第三者の俺に対して『お客様』なんて言うのは、単に気持ち悪いわ」と思う。これは繊維業界紙の記者やアパレル業界団体の職員として働いた経験からの、率直な印象である。

百貨店が自らの顧客を誰に対しても「お客様」なんて言い方をするのは、自分たちの業界を「特権的な存在」と思っている妙なエリート意識の反映なのだ。そしてその言い方をビジネス新聞までその通り踏襲して書く。新聞記者は「読者様の求める方向へ」なんて決して言わないのに。

そのあたりが「古すぎる奇妙な感覚」だと、私は言うのである。周辺まで含めて、ちょっと付き合いきれない業界である。

 

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マーケティング・仕事」カテゴリの記事

コメント

今はなき父は服は全て「M越」で誂えていました。高度成長期でしたからね。そういう顧客が現在もまだいるとしたら、とにかく離したくないという思いが、対外的にも「お客様」という呼称を使うあたりにひしひしと感じられますね。
私も百貨店は好きですが、なんせ貧乏なので商品を見るだけで終わりですw。

投稿: 萩原水音 | 2016年10月 4日 13:17

>すでに『百貨』を扱うという意味での百貨店の定義はどんどん緩くなってきた。百貨店はビジネスモデルそのものが問われている

こういう考えは30年以上前から百貨店の経営者が口にしていたことです。
”何を今更”ですよ。

有名百貨店には有名私大卒がごろごろいます。
入社後三か月間は甲斐甲斐しく仕事をしていますが、その後は徐々に態度が変化していき、一年後にはめでたく百貨店マンが誕生します。取引先に対する自分たちの優越的な立場にすっかり気が付いた男たちです。

取引先には毎日のように ”売り上げ!売り上げ!” を叫び、時には現金持ってきて売り上げとして入金しろとまで迫ってきます。口の利き方もヤクザそのものでしたね。
マーケティングなんて概念はゼロでした。現状を見て当然の結果だとおもいます。

売り上げのためには顧客の生命を危険にさらすことも厭いません。消防法上商品を置いてはいけない場所に商品を置きます。避難階段にも商品を置いて倉庫にします。

消防署の査察の日程情報も事前に得ており査察当日には違法状態を解消し、消防署員による査察が終わった五分後には違法状態に戻す作業が始まります。情報は符丁で伝えられます。その見返りもあると考えるのが自然でしょう。

繰り返しますが、
”売り上げのためには顧客の生命を危険にさらすことも厭わない”
これが業界の裏の顔なんです。

連中の口から ”お客様” なんていう言葉を聞くとTAKさんとは別の意味で ”つき合いきれない業界” だと思いますね。

投稿: ハマッコー | 2016年10月 4日 21:12

萩原水音 さん:

高度成長期に 「服 (とくにスーツ) は百貨店で買うもの」 という 「刷り込み」 をされた年代が、既に新しいスーツを買う必要のないライフスタイルになったので、はっきり言って、百貨店には 「お客様」 なんてほとんど残っていないんですよ。

洋服の売り場を診ても、買うような物なんてなくて、地下の食品売り場がわずかに賑わっているだけですね。

投稿: tak | 2016年10月 4日 21:24

ハマッコー さん:

だいぶ百貨店業界の内情に通じていらっしゃるようで、ご指摘の点はほとんど 「その通り」 ですね。

>"百貨』を扱うという意味での百貨店の定義はどんどん緩くなってきた"

今頃になってこんなことを言うようでは、浦島太郎どころではないですね。フツーだったら、恥ずかしくて言えない昔話の類いです。

>有名百貨店には有名私大卒がごろごろいます。

伊○丹は慶応ボーイばっかりでつるんでますね (^o^)

何度か書きましたが、「お役人と商社マンと百貨店社員は、仕事そのものよりも出世の好きな人種」で、さらに、客よりも自分の方が偉いと思っています。

「お客様」 なんていいつつ、実は自分の方が偉いと思っているのですから、その嫌みな感覚が発散されるんです。

「俺たちに 『お客様』 と呼んでもらえるんだから、お前ら、ありがたく思え」 と言っているようなものです。

投稿: tak | 2016年10月 4日 21:36

ふ~ん(失礼)。あくまでも消費者目線で言へば「消費の殿堂」たる百貨店は、すでにその使命を終えてしまつたのでせうね。
デパートで両親と楽しく買い物をするのが夢だつた「高度成長期の昭和の子ども」にとつては、何か寂しいやうな気がします。

投稿: はぎ腹みづ寝 | 2016年10月 4日 22:20

はぎ腹みづ寝 さん:

今は郊外のショッピングセンターが 「消費の殿堂」 というか、「消費の市民文化会館」 になってるんでしょうね。

なにしろ子どもが少ないから、子ども目線で造っても儲からないです (^o^)

投稿: tak | 2016年10月 5日 09:57

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