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2016年11月19日

地震の震度階級の最大が 「震度 7」 ということについて

ちょっとだけ古い話になってしまうが、今年 4月の熊本地震から 2週間ぐらい経った頃、評論家の山根一眞氏が "テレビ報道者も間違う「震度最大10」の誤解" という記事を日経に寄稿している。テレビの報道番組で複数の出演者が、「震度7以上の地震が来たら〜」とか「今後、震度8の地震が来たら〜」とか口走っていたというのである。

Photoこれ、ごくフツーの常識問題だから、現在の震度階級では 「震度 7」 が最大というのを知らないジャーナリストがいるというのは、ちょっとビックリである。しかしもっとビックリの事実がある。

山根氏が教鞭を執る獨協大学で、それを学生に話したところ、「震度は 10 まであると思っていた」、「ニュースで震度 7 と知ったが、震度 10 ほど大きい地震ではないという誤った認識をしていた」などの感想が多く寄せられた。震度 7 が最大であると知らない学生が圧倒的多数だったというのである。何だかなあ。

というわけで、山根氏は震度階級をわかりやすくするために、10段階に規定し直すことを提案している。現在の 「震度 0」 から 「震度 7」 までを数えると、ちょうど 10段階ある。これは 1996年以後、震度Ⅴ と 震度Ⅵ が、それぞれ 「弱、強」 に分割されたためだ。だったら、「震度 1〜10」 までの 10段階で表す方がわかりやすいというのである。

これ、上の図で見れば一見合理的でわかりやすいように思えるが、私としては「いかがなものか」と思ってしまう。というのは、「震度7以上の地震が来たら〜」という無知なジャーナリストの発言も、決して完全無視していいとも思われないからだ。

事実、戦後しばらくまでは 「震度Ⅵ 烈震」 が最大と規定されていたのだが、1949年に 「震度Ⅶ 激震」 が加えられた。しかしすぐにはそんな大きな揺れは観測されず、実際にその「震度Ⅶ」の地震が起きたのは、それから 46年も経った 1995年の阪神淡路地震(今は「兵庫県南部地震」というのが正式名称らしい)が最初だったのである。

ところがそれ以後、2004年の中越地震、2011年の東日本大震災、2016年の熊本地震 (2回) と、干支が一回りのうちに 4回も「震度 7」が発生してしまった。日本列島だけでなく、どうやら世界が大きな地殻変動期に入ってしまったらしいのである。

ということは、近い将来に「震度 7」では表しきれないようなとんでもない地震が発生しないという保証は、どこにもないのである。山根案に沿ってすっきりと 10段階の震度階級にしてしまってから、想定以上の大きな震度の地震が起きてしまったら、どう対応すればいいのだ。

現在の震度階級が「数えてみれば区切りのいい 10段階」になっているというのは、「たまたまそうなっているだけ」なのだ。今後どう変わるかわからないことを、現在の常識のみですっきり規定してしまうと、その常識が覆された時の対応が難しい。

自然現象を必要以上にすっきりまとめたいという発想は、自然破壊につながる人間の浅知恵であるとすら思ってしまうのだよね。

 

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コメント

もともと震度というのは、揺れの大きさではなく被害の大きさを示す指針です。
例えば震度7は、「建物の30%以上が倒壊」していたら震度7である、と判定されたわけで、言葉の意味としては「被害度7」の方が近いのです。
同じ揺れでも、古い家屋が多ければその地域は震度7で、新しい地域は震度6、ということもあったわけです。
現在から考えるといい加減ですが、情報通信手段や地震計が未発達だった時代には、例えば電報1本打てれば上級自治体や国に被害状況を迅速に伝え救援・支援活動に役立てる、という役割がありました。
その後地震計が各地に普及し、揺れの大きさから即座に震度を出せるようになりました。
阪神淡路大震災で震度6範囲内の揺れであっても建物の被害に差が出たことから、建物に影響が出やすい5と6を細分化し現在に至ります。
つまりもともと人間の都合で考え出された数字ですから、誰もがわかりやすいように変更することは理に適っていると私は思います。

別記事でも書きましたが塾講師をやっていまして、震度は受験生泣かせのネタの1つです。
震度に8以上は無いこと(マグニチュードにはあるので混同しやすい)・5と6には強弱があること・震度ゼロの存在、というように注意点が多いのです。
冒頭の大学生の混乱も理解できます。

takさんの、それ以上の揺れに対する畏れ、もわかりますが、現状でもどんなに大きな揺れが来ても震度8が創設されることはなさそうですから、10段階表記にしても同じことではないかなと思います。

危機感の無い例えだと思いますが、野球の「沢村賞」のようなものじゃないでしょうか。
沢村賞の基準がありますよね?
ではそれをはるかに超える結果を残した場合は?
それも沢村賞ですよね。
震度7も(あるいは改正されて震度10も)、国民生活に壊滅的な影響を与える揺れ、という意味であって、それより上の数字が必要とは思えないのです。

投稿: らむね | 2017年1月10日 23:41

らむね さん:

昔は 「震度 5」 で家が倒壊すると言われていましたが、今は耐震構造の進化で、そんなこともなくなりました。

そんなわけで、「震度 7」 まで段階が増えて、しかも設定されてだいぶ経ってから実際の 「震度 7」 を体験することになりました。

今後、耐震康応や地球の地盤の変化で、さらに大きな震度を認定しなければいけないことになるかもしれません。そうなると、性急に 「震度 10」 を最大として整合性をとったつもりでいても、さらに 「震度 11」 なんてものを設定しなければいけない事態になるかもしれません。
(ならないかもしれないけど)

気象庁が 「5弱、5強」 「6弱、6強」 なんてややこしい設定のしかたをしたのも、「震度 10」 までの 「余裕」 を確保しているのかもしれません。
(考えすぎかもしれませんが)

まあ、現時点で 「震度 10」 を最大として設定するのは、あまり意味がないかと思います。

投稿: tak | 2017年1月12日 22:05

wikiの「震度」によると、地震計のデータを計算式に当てはめて小数点以下まで求め、四捨五入して震度を出すようです。
現状では6.5以上はすべて震度7とするそうで、takさんの懸念に沿えば、7.5以上の地震が起きた時に、震度8を設定するか議論になりそうです。
ただ同じくwikiの「震度7」によると、いままで発生した震度7の揺れは、東日本・熊本含め数値上は6.5~6.7に収まるようで、7.5以上ともなると想像もつきません。
そんな地震が起きないことを祈りたいですね。

投稿: らむね | 2017年1月13日 01:48

らむね さん:

本当に 7.5 以上の地震なんて来ないように祈ります。
(大地震は、揺れてる間に恐ろしいだけではなく、後々まで大変すぎます)

投稿: tak | 2017年1月13日 16:32

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