ポスト・グローバリズムを本気で考えなければ
いやはや、昨日は米国大統領選のドナルド・トランプの勝利で、つくづく身の不明を恥じたわけだが、総得票数で言えばヒラリー・クリントンの方が少しだけ多かったという事実が報じられたのは、ちょっとした救いだった。2000年のジョージ・ブッシュ対アル・ゴアの選挙戦同様に、得票数が少なかった方の候補が、妙な選挙制度のおかげで選挙人獲得数では上回り、勝ってしまったのである。
ジョージ・ブッシュはさらに 4年後の選挙でもジョン・ケリーと大接戦を演じ、この時は総得票数でもケリーを辛うじて上回って 2選目を果たした。しかしこの時、米国の民主党支持者たちは 「米国の 49%は彼に投票したわけじゃない」 として、"Sorry, everybody" (ごめんね、みんな) というサイトを作ってキャンペーンを立ち上げた。
このサイトにはものすごく多くの米国人が、”Sorry" というカードを掲げた顔写真をアップロードして、世界に謝りまくったのである。このことは同年 11月 18日に、「米国の半分は申し訳なく思ってるらしい」という記事で紹介した。
そして今回も、米国民の半数は世界に対して謝りまくりたい心境になっているらしく、例のサイトは 11月 9日の時点で、「逃げ隠れせず、近くアップデートされます」という予告を掲げている。おそらく 12年前よりもずっと痛恨の面持ちで謝りまくる人たちの写真とコメントが、続々とアップロードされるだろう。
ただ今回に関しては、”Sorry" と謝りまくるよりも、既に激しい抗議運動が始まっている。12年前よりも事情はずっと深刻だ。
今回の結果は行きすぎたグローバリズムからの揺り戻しが、我々の思っていた以上の激しさで世界を席巻していることを示しているだろう。「隠れトランプ」 が多かったというのは、要するにそういうことだ。ヨーロッパ各国における排他主義的な極右政党の躍進、英国の EU 離脱などといった動きと、軌を一にするものと考えていい。
つまりトランプの勝利は、実は伏線がたっぷり張られていて、驚くに足るものじゃなかったのだ。多くのジャーナリストは、その伏線を軽く見過ぎていたのである。
グローバリズムは途上国の中間層に富をもたらしたが、一方で割を食っているのが先進国の中低所得層である。彼ら (いや、私自身を含めて、「我々」 と言った方がいいのかもしれない) の生活はちっともよくならないどころか、むしろ苦しくなっているのだ。それは 11月 6日の痛恨の記事で書いたとおりである (参照)。
「排外主義、孤立主義では、経済は成長しない」 なんて言われても、「そんなの関係ねえ。どうせ俺たちは株なんか持ってないんだから、株価が暴落したって構わない。それより目先の仕事が欲しい」というわけだ。実現可能だろうが不可能だろうが、中身があろうがなかろうが、とにかくこれまでの政治家が決して口にしなかったような、耳に心地良く響くだけの底の浅いアジテーションを受け入れてしまうのである。
この動きは必ず日本にも波及するだろう。安倍内閣の「日本万歳」だけでは大衆は動かなくなり、一方で「ネット右翼」はより先鋭化する。
今回の民主党予備選でヒラリー・クリントンの対立候補となったバーニー・サンダースは、この辺りの事情にうまく対応できる人だったと思うのだが、いかんせん、周囲がそのことについてまだまだ無自覚で、彼の主張は十分な広がりを持つに至らなかった。グローバリズムからの揺り戻しをどうコントロールするかなんてことを、誰もまともに考えず、「英国は愚かな選択をしたものだね」と冷笑しているだけだったのだ。
ここまで来ると日本としても、「TPP を推進する」なんて呑気なことを言っている場合じゃない。それに代わる枠組みを考えなければならないことに、早く気付くべきなのだ。その点でも、安倍内閣はこのままでは周回遅れになってしまう。でもまあ、日本人全体が周回遅れ気味なんだから、しょうがないか。
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