「素性」って、「そせい」とも読むのね
今朝ラジオを聞いていたら、2016年に注目されたシンガーの一人として、シーア (Sia) というオーストラリア出身のシンガー・ソングライターが紹介されていた。彼女のことを知らない人でも、"This Is Acting" というアルバムの "Alive" という曲ならどこかで聞いたことがあるかもしれない。
"I'm still breathing" (まだ息してるわよ)という繰り返しが印象的で、youtbe 動画は土屋太鳳のダンスとのコラボが結構素敵だ。見ておいて損はないと思う。
で、ようやく今朝のラジオの話に戻る。本題は "Alive" の話ではなく、相変わらず「言葉」のお話。ラジオで解説していた某音楽評論家が Sia のことを紹介するのに、「この人、『ソセイ』を明らかにしたがらない人なんですが……」と言っていた。「ソセイ」の「ソ」にアクセントを置いている。
「ソセイ?」 …… 一瞬考えてしまったが、「もしかして『素性』を『ソセイ』と読んじゃってるのか?」 と思い当たった。シーアは顔出し NG だった時期もあったほどで、確かに「素性(すじょう)を明らかにしたがらない歌手」として知られている。
「まったく、もう。近頃の音楽評論家ってやつは、漢字の読み方を知らないのかよ!」と、ちょっとカリカリしたが、そこはさすがに我ながら還暦過ぎのオッサンの用心深さである。「もしかして『ソセイ』って読みもあったりしたら、カリカリしちゃったこと自体が恥になっちゃうもんね」と思い返し、念のため iPhone を取り出してインストールしてある『大辞林』で「そせい」を引いてみた。
すると、何と言うことか、「素性」には「ソセイ」という読みもあるではないか。意味として次のように書いてある。
① 本来の性質。すじょう。
② 《言》 [feature] 音的、統語的、あるいは意味的な単位を構成する部分的な特性。ある特性があることを+、ないことを−で表す。例えば、+round (円唇性)、+N (名詞のこと) など。
2番目の意味は言語学の学術用語 (原語は "feature") なので、結構ややこしい話になっているが、とにかく「素性」は「すじょう」とも「そせい」とも読むもののようだ。とはいえ、「すじょう」の方がずっと一般的なのは言うまでもない。今月 5日の "「分別」と書いて「ぶんべつ」「ふんべつ」と読む分別" という記事に、この 「素性」 という言葉も加えておくべきだったかもしれない。
で、そもそも、かの音楽評論家は、「素性」を「そせい」とも読むことを知っていたのか、あるいは知らずにそう言っていただけなのか。ここでは「わからん」ということにしておこう。
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コメント
ふむふむ、私、へなちょこ校正者ですが「そせい」と読むのは知りませんでした(汗)。
しかしこの場合、話の流れ的には、普通に「すじょう」と言うほうが適当なんじゃないですかね。一般的に、耳で「そせい」と聞いたら、別の言葉を思い浮かべてしまいますからね。
投稿: 萩原水音 | 2016年12月19日 13:57
萩原水音 さん:
>しかしこの場合、話の流れ的には、普通に「すじょう」と言うほうが適当なんじゃないですかね。
それはまさにその通りなのでありますよね。
>一般的に、耳で「そせい」と聞いたら、別の言葉を思い浮かべてしまいますからね。
自分の 「組成」 を明らかにしたがる人なんていませんしね (^o^)
投稿: tak | 2016年12月20日 00:43
「すじょう」で変換すると私のATOKでは「素姓」が先に出ます(もちろん「素性」もその次に出ます)。一般的にはどちらなのだろう。
「そせい」でも出ることは出るな……。
百人一首に選ばれている「素性法師」は「そせいほうし」ですね。
投稿: 山辺響 | 2016年12月26日 14:13
山辺響 さん:
私の 『大辞林』 では、「素性・素姓・種姓」 の順に表示されていて、どれも同じ意味ということになってますね。
とはいえ、「種姓」 は、人ではなく 「モノの由緒や由来」 について使うようで、「種姓のはっきりしない刀」 という例文が出ています。
投稿: tak | 2016年12月26日 14:51