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2016年12月20日

「けしからん」という言葉の、現在進行形での変化

言葉は生き物で、時代と共に変化するとはよく言われることだが、今まさに変化しつつある言葉として「けしからん」というのが挙げられると思う。ニュアンスがなんとなくビミョーに変わってきているような気はしていたが、それはネット界隈では既に認められた既成事実であるようなのだ。

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「けしからん」を辞書で引くと、漢字まじりの表記は 「怪しからん」 で、意味としては 「道理や礼儀にはずれていてよくない、無礼だ、不都合だ」というようなことと解説されている。ところが最近は「ちょっとヤバいけど、実は歓迎」ってなニュアンスで使われているような気がしていたのである。そしてそれは、ネットスラングとしては既に公認であるようなのだ。ピクシブ百科事典には、次のようにある(参照)。

本来の意味

相手の非常識 (非道徳的) な言動に怒ったり、憤慨する時に使う。
例 嘘を付くとはけしからん。

ネットスラングとしての意味

自分の欲求(主に性欲)をくすぐられた場合に使用し、怒りや憤慨を装って妄想を展開している。

ニコニコ動画などでは子猫動画などかわいらしいものに対しても使われる。
無理やり文章にすると 「私の欲望を刺激して堕落させようとする。けしからん」か。

なるほどなるほど。そういうようなことなのだね。一応は憤慨を装いながら、「も、もっとドンドンやってくれ!」というバレバレの本心を表現する言葉に変化しているわけだ。サザエさんのマンガで波平さんがカツオを 「けしからん!」 と一喝していた時代からは、ちょっとした変化を遂げているのである。

新時代の「けしからん」を視覚的に確認したい方は、Google で画像検索してみればすぐにわかる。ここでは(当ブログの品位のために)敢えてリンクしないでおくので、どうしても見たい人は、自分で検索してもらいたい。

で、この「けしからん」という言葉は、元々の成り立ちからしてそんなような方向に進みやすい萌芽を持っていたようなのである。ネット上の「由来・語源辞典」によると、次のように説明されている(参照)。

本来の形は「けしからず」で、形容詞「異(け)し」の未然形に打ち消しの助動詞「ず」がついた語。「ず」の連用形「ぬ」の終止法が広まるにつれて「けしからぬ」と変化し、さらに「けしからん」となった。

「異し」は、「普通と違い異常だ」という意味で、「けしからず」とはそれを否定したもので、つまり「もっと異常だ」ということであり、そこから「とんでもない、不届きだ」の意になった。

なるほど。「普通と違い異常だ」という意味の「けし」を否定したら、本来は「フツーじゃん!」てなことになるはずなのだが、「けしからん」の場合は「フツーの異常よりさらにずっと異常だ」と、まったくフツーじゃない意味合いを持つようになったわけなのである。

元々「フツーじゃない」言葉なので、「ヤバいけど、歓迎!」というようなニュアンスになってしまうのも、無理からぬところという気がするのである。

 

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