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2017年2月 4日

Dress like a woman (女らしい服装をしろ) というお話

本当にそう言ったのかどうか、確たるソースさえアヤシいのだが、ドナルド・トランプが「ホワイトハウスで働く女性には、女性らしい服装をしてもらいたい」と発言したという、いかにもありそうな話が俄然一人歩きしちゃっていて、Twitter は "#dresslikeawoman" のハッシュタグで大賑わいになっている (参照)。

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Twitter をちょっとのぞいてみればわかるように、アップされている写真や画像は、たいていトランプの求めているような「女性らしい服装」なんかじゃなく、かなり勇ましいとかマニッシュとかのばかりだ。そしてどれもみな「美しい」ってのがいい。

私は昔から「〇〇らしく振る舞う」ってのが、どうにも居心地悪く感じてしまう性分で、何をやらせても「らしくない人」と思われてきたところがある。「〇〇らしくない」存在ではあっても、「あいつらしい」と思ってもらえさえすれば、受け入れられるものである。

まあ、「らしくない」といえば、ドナルド・トランプ自身ほど「大統領らしくない」人もいない。私がいくら「らしくない」のが好きといっても、ああいうのはちょっとディレクションが違いすぎて笑ってしまうほかない。最も大統領らしくない振る舞いをする人が、女性には女性らしい服装を求めるというのも、なかなかのパラドックスである。他人にことさらに礼儀作法を求めるやつが、最も無礼なんてのは、よくある話だ。

鈴木清順の伝説の名画『けんかえれじい』に、おもしろいくだりがある。高橋英樹演じる主人公の南部麒六は、旧制中学を舞台に喧嘩に明け暮れる名物男。岡山の中学でも喧嘩事件を起こし、会津の喜多方中学に転校を余儀なくされるが、その中学の校長室に麗々しく飾られているのが「良志久」(らしく) という掛け軸だ。

校長は 「男は男らしく、学生は学生らしく」と、本分を守ることを厳しく言い渡す。ところがここでも南部麒六は、会津中学の連中と華々しい集団果たし合いをして勝ってしまう。すると、あれだけ「学生は学生らしく」と言っていた校長が、戦果を聞いて大喜びではしゃぎまわってしまい、真面目一方の教頭がうろたえながら、会津弁で「校長ぉう〜! らはぁすぃぐぅ!」と叫ぶのがなかなかよかった。

それから "like a woman" と言ったらどうしても出てくるのが、Bob Dylan の ”Like A Woman" である。忘れられないのが、The Concert For Bangladesh 1971 での、Leon Russel, George Harrison との共演版だ。

歌詞の中で繰り返されるのは、このリフレイン。(一部引用だから、JASRAC はおとなしくしていてね)

She takes just like a woman.
She makes love just like a woman.
And then she aches just like a woman.
But she breaks just like a little girl.

なにしろノーベル賞作家の歌詞だから、結構象徴的で訳しにくいが、ざっといえば「彼女は一人前の女らしく物事を進める/彼女は一人前の女らしくセックスする/彼女は一人前の女らしく痛みを感じる/だけど、小さな女の子みたいにボロボロになる」というような感じだ。

大統領も、小さな男の子みたいにボロボロになるかもしれないしね。

 

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