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2017年2月 6日

「万歳三唱の作法」を巡る冒険

「代理選挙」と言われた千代田区長選挙で、小池都知事が支持する石川雅己氏が圧勝した。個人的には 5選目というところにちょっとひっかかってしまうが、まあ、与謝野さんよりはいいか。で、下の写真は当選を喜ぶ小池さんと石川さんである (毎日新聞一面より)。

170206

この写真を見て、「小池さんって、そつのない人だなあ」と思った。というのは、万歳の手の平が内側を向いているからである。些細なことだが、これが「正しい万歳の仕方」と言われている作法で、一方、手の平を正面に向けるのは「ごめんなさい、降参です」と言っているようなものだから正しくないと、ことさらにこだわりのある人は主張する。

2010年に衆議院の木村太郎議員(自民党)が、当時の鳩山由紀夫首相の万歳三唱(手の平を正面に向けていたらしい)について、「正式な万歳とは違うように見受けられた。日本国の首相として、万歳の仕方をしっかりと身につけておくべきだ。首相は作法を知っているか」と質問主意書を出したことがあった。これなんか、「ことさらなこだわり」の典型例だろう。

巷間、明治時代に発布された太政官布告と称される「万歳三唱令」というものが流布しているらしく、そこには「万歳の発声とともに右足を半歩踏み出し、同時に両腕を垂直に高々と挙ぐるべし。その際、両手指がまっすぐに伸び、かつ両掌過ちなく内側に向くこと肝要なり」(原文は漢字カタカナ混じり) と書かれているという。これが木村氏の「質問主意書」の根拠となったらしい。

しかしこの「万歳三唱令」というのは偽書ということが明らかになっていて(参照:国会図書館データベース日経新聞記事)、実際にはそんなお触れが出されたことはない。そもそも万歳の時の手の平の向きなんて意識している日本人は滅多にいないし、ましてや右足を半歩踏み出すなんて、見たこともない。で、この時の答弁書は「万歳三唱の所作については、公式に定められたものがあるとは承知していない」という素っ気ないものだった。

私としても万歳の時の手の平の向きなんてどうでもいいと思ってはいるが、世の中にはいろんなイチャモンをつけたがる人がいるので、何かの行事で万歳をする際には、予防線を張る意味で、手の平だけは一応内側に向けている。実際に、「あんたの万歳の仕方は間違ってる」としゃしゃり出る人を目撃したこともあるし、「あいつは万歳のしかたも知らない」なんて陰口をたたくやつもいるのでね。

というわけで、「おっ、小池さんも、お隣の石川さんも、きちんと予防線を張ってるな」と思ったのである。写真を見る限り、後ろにいる人たちはそんなこと全然意識していないみたいだけど。

とまあ、今日はそれだけのお話。

【同日 追記】

「万歳三唱令」 の画像が見つかった。なかなかよくできているが、「明治二十二年四月一日施行」とあるのがミソだ。(参照

私もこれくらいできのいいエイプリルフール・ネタを作りたいものだ。

 

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コメント

「万歳三唱令」自体は偽物ですが、そこに書いてある万歳のやり方は本物ですよ
ちなみに掌を外に向けるのは朝鮮人の「将軍様マンセー」のやり方だそうです(日本から伝わって独自のスタイルになった)
日本人としてはオリジナルを使用したいですね

投稿: ゼロ | 2017年8月 1日 16:17

ゼロ さん:

>掌を外に向けるのは朝鮮人の「将軍様マンセー」のやり方だそうです

念のため、Google で画像検索しましたが、それらしいのは見つかりませんでした。

動画検索では、「マンセー」 に合わせて皆が拍手するというのが見つかりました。

投稿: tak | 2017年8月 1日 21:18

「そこに書いてある万歳のやり方は本物ですよ」というからには、最低でも典拠を示すのが読む人への礼儀のように思います。

投稿: 山辺響 | 2017年8月 2日 18:51

山辺響 さん:

同意。

投稿: tak | 2017年8月 2日 19:59

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