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2017年2月23日

世の中に 「堂々たる駄々っ子」 が増えている

北陸への出張に出ている間、見逃していた新聞をざっと眺めてみると、まあ要するに、世界は 2人の駄々っ子にかき回されているみたいなのである。2人の駄々っ子とは、もちろん、ドナルド・トランプと金正恩だ。

170223

昨年末までは「ドナルド・トランプの頭の中って、一体どうなってるんだ?」と、わけのわからなさを感じていたが、年明け頃からそんなことはなくなった。要するに「わかりやすすぎるおっさん」なのである。あんまりわかりやすすぎるので、初めのうちは難しく考えてわからなくなっていたのだった。

この人、特別深い考えなんかないようなのだ。ただ単純に思ったことは口に出さないと気が済まないし、口に出してしまったらやらずには気が済まない駄々っ子なのである。「深い考えがない」というのはもう公然の事実のようで、とにかく客観的な現状分析なんかしていない。自分の思い込みだけで突っ走る。

まともな現状分析なんかしていないから、とにかく「なんじゃ、そりゃ?」と言いたくなるような認識をまくしたてる。そのもっとも顕著な話が、「大統領就任式には史上最大の人数が集まった」という発表だ。誰がどう見ても世迷い言なのに、側近のケリーアン・コンウェイ大統領顧問に「オルタナ・ファクト(alternative facts: もうひとつの事実)」とまで言わせている(参照)。

こんなめちゃくちゃな論理で政治をやられたら、国民はたまったものじゃない。気に入らない事実は「ジャーナリズムが作ったでたらめ」と決めつけ、自分の気に入る「オルタナ・ファクト」だけをわめき散らすというのは、誰かさんともろに共通する手法だ。

誰かさんというのは、もちろん北朝鮮の金正恩で、今回の金正男暗殺事件にしても、「我が国の顔に泥を塗るための韓国の陰謀だ」なんて言い張っている。この国はいつもこの調子で、「オルタナ・ファクト」のオンパレードだ。まともに取り合うことさえ馬鹿馬鹿しい。

そして米国までがそんなふうなことになっているのは、「堂々と駄々っ子でいさえすれば、どうにでもなる」という風潮を作ってしまいそうで、困ったことだというしかない。で、そんな見地で世界を見回すと、世の中には堂々たる駄々っ子が増えてきているようなのだ。妙に大人でいるよりも、駄々っ子でいる方が楽だし、少なくとも損にはならないというようなことになってしまいつつある。

これは由々しき問題だよ、まったく。「堂々たる駄々っ子」じゃなくて「申し訳なさそうな駄々っ子」とか「おずおずした駄々っ子」(両方とも、「そんなのありか?」と言われそうだが、案外「あり」なのだよ)なら許せるんだけど。

【語句についての注釈】

"Alternative facts" という英語を 「オルタナ・ファクト (もう一つの事実)」 と言い換えるのは、あまりいい翻訳じゃないと思うのだが、ほかに適当な日本語が見当たらないので、ちょっと気持ち悪いけど我慢している。ううむ、何と言ったらいいのだろう。

 

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