右翼同士で内輪揉めが始まった
先月 27日の「例の森友学園の問題で思うこと」という記事で、「昔の左翼運動は小さな違いで分裂に分裂を重ね自滅したが、教育勅語や靖国神社のお好きな人たちの情緒的結束力というのはかなりのもので、思いっきりまとまってしまう」と書いたが、ごく最近はどうやら事情が違ってきてしまったらしい。右翼同士でも、揉める時にはいろいろ揉めてしまうもののようなのだ。
昔、三島由紀夫は東大 (駒場) での全共闘との討論集会で、「たとえば安田講堂で全学連の諸君がたてこもった時に、天皇という言葉を一言彼等が言えば、私は喜んで一緒にとじこもったであろうし、喜んで一緒にやったと思う」と発言した。右翼というのはこのくらいの度量の広さというか、情緒的共感力というか、そんな感じのメンタリティを持ち合わせているものと思っていた。
ところが近頃の森友学園問題をみていると、どうやらそうした美しい気概は消え失せてしまったようで、右翼的な姿勢の目立つ政治家たちが、ひたすら保身に走るようになっている。これまで(表面的には)理念先行で突っ走ってきた右翼の世界も、実利的な損得を無視できなくなったということのようだ。
そうなると当然ながら、三島の憧憬の根源であった「天皇という言葉の一言」などはまったく聞かれなくなる。損得がからむと、右翼といえども根本的理念などに構っていられなくなるもののようだ。
安倍首相は先月半ばまでは「妻から(籠池)先生の教育に対する熱意は素晴らしいと聞いている」と言っていたのだが、2月下旬に入ってからは「教育の詳細は全く承知していない」「『がんばれ』とか園児に言ってもらいたくない」などと手のひら返ししてしまった。昭恵夫人の新設予定だった小学校の名誉校長就任にしても、森友学園側は「承認してもらった」 と言い、首相サイドは「断った」と言い張っている。
稲田防衛大臣に至っては、森友学園の代理人弁護士として出廷したことをトボけようとしてトボけ切れず、あげくの果てに「失礼なことをされた」とか「一切関係を絶ってます」とか、言わなくてもいいことまで口走っている。裏で何があったか知らないが、憂国の女傑としては、はなはだセコい印象だ。
橋下徹元大阪府知事は、「大阪府が無理筋の認可を出したのは、『近畿財務局の方から、これはもうなんとか条件付きでもいいから認可を出してくれ、出してくれ』と圧力をかけられたから」などと、露骨なまでに国に責任をなすりつけようとしている。この人、「国の言うことなんか簡単には聞かん」という姿勢が売りだったのに、あれは単なる営業用ポーズだったのか。
その一方で、巷には籠池氏にすさまじい絶叫エールを送り続ける、チョー純真な愛国オバサンもいて、なかなかエラいことになっている。その声は、YouTube で聞ける。(参照)
このオバサン、かなりうるさいが、何かあったらトボけりゃいいと思っている政治家たちよりは、ある意味ブレることもなくしっかり忠義立てしているともいえそうだ。潔いといえば潔い。それは「損得抜き」の立場にいるからだろうね。
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コメント
魑魅魍魎という言葉は森友問題にぴったり。
投稿: ハマッコー | 2017年3月17日 20:31
ハマッコー さん:
籠池さんという人は、その思想信条を別にすれば、キャラとしてはそんなに無茶苦茶なわけではなく、ただシンプルな人という気がします。
学校法人認可云々の手続きに関するちょっとアヤシい小手先のトリックなんかは、ほかのケースでもありがちなことと言えます。きっとその方面のプロの入れ知恵でしょう。
アヤシいのはその取り巻き連と、安倍さんの周辺、そのあたりを忖度しすぎたお役人関係に他なりません。その辺りに魑魅魍魎の巣がありそうです。
投稿: tak | 2017年3月17日 22:48
森友学園問題における注目人物の説明が的確ですね。感心しつつためになりました。とくに、橋下徹氏への指摘と、最後の段落の内容が皮肉がきいていてよいと感じます。右翼の分裂というのもその通りなのでしょうね。
投稿: esc | 2017年3月18日 15:27
esc さん:
うむむ、そこまでシリアスにコメントしていただいちゃうと、かえって恐縮です。ありがとうございます。
投稿: tak | 2017年3月19日 22:58