「胡散臭い」の「胡散」を煎じてみた
「胡散臭い」という言葉があって、「アヤシい」とか「疑わしい」みたいな意味で使われている。しかしこの言葉の元になった「胡散」というのはそもそも何物で、どんな臭いなのだろう?と疑問に思う人は、案外少ないようなのである。
この「胡散」というのは、実は煎じ薬で漢方薬の一種である。虫下しに効くと言われ、大正時代までは庶民の間で盛んに用いられたが、寄生虫の激減とともに、今では薬局に行ってもほとんど見ることができなくなった。
そしてこの胡散という薬は、煎じる際にかなりクセのある強い臭いを発生すると伝えられているのである。そのため窓を開け放して換気しないと、いつまでも臭いが残ってしまうので注意が必要とまで言われていた。
さらにこの薬、飲む人の体質との相性問題があって、効く人にはとてもよく効くが、効かない人も少なからずいるというもののようで、「飲んでみなければわからない」ところがあったというのである。それで胡散を煎じる時の臭いは、「効くんだか効かないんだか、信用できない」みたいな意味合いも込めて「胡散臭い」と言われるようになったという。
その臭いを一度でいいから実際に嗅いでみたいものと思っていたが、既に「幻の薬」と化してしまっているので、その願いはなかなか叶えられなかった。しかしこのほど、富山の友人を通じて「日本生薬堂 謹製 漢方調剤 胡散」という貴重な薬を入手することができたのである。
薬袋にはもっともらしく「煎じる際に強い臭いが発生します。換気にご注意下さい」という注意書きがある。なるほど、臭いに特徴があるというのは本当のようだ。袋を開けると、ティーバッグに入った「胡散」が 2袋出てきた。このティーバッグに鼻を近づけて臭いを嗅いでみたが、ちょっと紅茶のような香りがするだけで、とくにどうということはない。
煎じてみるに当たっては、台所に臭いが残っては困るという妻の要望で、キャンプ道具を庭に出し、野外調理用のコッフェルを何年ぶりかで使ってやってみた。キャンプ用ガス・ストーブがゴォーッと勢いのいい音を立て、コッフェルの中はすぐに沸騰する。そして放り込んでおいた「胡散」のティーバッグが湯の中で踊り始めた。
沸騰の前からなんだか妙な香りがすると思っていた。アンモニアを強くしたような、ということは、犬のおしっこに似た感じがしないでもない臭いである。そしてグツグツたぎり始めると、その臭いがどんどん強くなり、鼻の奥を刺すような刺激臭と化した。結構強烈なもので、風下に立つと目に染みる。
煎じる時間は 40分程度と書いてあり、20分を過ぎた頃からだんだんと臭いのピークが過ぎて、40分で火を止める頃には、さすがに目に染みるほどではなくなった。
しかしこれは、かなり飲みにくい。顔を近づけると「オェッ」となっちゃうのだ。昔の人は本当にこんなのを飲んだのだろうか。よほどの忍耐である。こちらは寄生虫がいるわけでもなんでもないので、裏の土手に捨てて、2袋めは決して煎じないことに決めた。
「胡散臭い」というのは、思っていたよりずっと強烈なものだった。
【4月 2日 追記】
恐れ入ります。大方のご想像の通り、毎年恒例のエイプリルフール・ネタですので、本気になさらないでください。
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コメント
そうだったのか!
会津出身の祖母が、作っていたのはこれだったか!
いやぁ、タイヘンに時間がかかることと、洗濯物が一気にダメになる刺激臭…。
思い出せないなぁ。
えーっと、「前胡散」ってのが膏薬であって…。
へ〜、そうなんやぁ〜。
投稿: 乙痴庵 | 2017年4月 1日 12:22
あれっ? いつも飲んでる紅茶のティーバッグと同じ形している。透けて見える中身も紅茶っぽいし、なんか胡散臭いなぁ。
投稿: ハマッコー | 2017年4月 1日 18:18
にほんしょうやくどう…ググってみたけどヒットしないわ~。よっぽど知る人ぞ知るメーカーなのね。で、原料はなんなんですかね~。まさかマジで犬のおし…それはないわよね~。ちなみに、わんこのおし○こよりにゃんこのソレのほうが臭いのよね~。お隣の国ではいまだに「ばあちゃんに言われてるから」ってこの手の「虫下し」を定期的に飲んでる人がいるみたいね~。
なんか、多少の「虫」はむしろ体にいいらしいから、あたしはこの薬、いらないわ~。
投稿: 野兎毬子 | 2017年4月 1日 22:01
乙痴庵 さん:
「前胡散」という漢方薬は本当にあるんですね。知りませんでした (^o^)
これにきちんとひっかければ、もっともらしさが増したかもしれませんね。うぅむ、詰めの甘さがあったかも。
投稿: tak | 2017年4月 1日 22:16
ハマッコー さん:
>いつも飲んでる紅茶のティーバッグと同じ形している。透けて見える中身も紅茶っぽいし、なんか胡散臭いなぁ。
そ、そうかなあ ^^;)
日が変わるまでは、そうとしか言えませんです。
投稿: tak | 2017年4月 1日 22:18
野兎毬子 さん:
犬と猫を同時に飼っていたことがありますが、おしっこの臭さは、どっちがどっちと言えない気がしますよ。もっとも、犬は庭で、猫は家の中で飼っていたせいかなあ (^o^)
お隣の国では、猫のおしっこを虫下しにしてるんですか? 知りませんでした。
寄生虫ダイエットなんてのもあるらしいですけどね。
投稿: tak | 2017年4月 1日 22:21
ジャコウ猫のウ○コ(の中の未消化のコーヒー豆)コーヒーもあるから、にゃんこのおし○こが原料の虫下しもあるんじゃないかしら。知らないけど(おいおい)。
あ、今思い出したんだけど、昔、うちに来てた「富山の薬売り」の人もそんなような薬、持ってたわね。あの人、最近見ないわね。ネット販売のほうが効率的だからやめちゃったんでしょうね。ちぇっ、なんでもネットかよ。ネットなんてもう飽き飽きだぜ(おいおい)
投稿: 野兎鞠子 | 2017年4月 1日 22:35
あ、もう2日になっちゃった...。
しかし、毎年のことながら、ホントうまいもんです。
投稿: さくら | 2017年4月 2日 00:45
野兎鞠子 さん:
富山の薬売りは、来てくれるのが楽しみだったなあ (^o^)
投稿: tak | 2017年4月 2日 09:03
さくら さん:
エイプリルフール企画を始めて、暦が一回りしちゃいました。そんなになるんですね。
投稿: tak | 2017年4月 2日 09:06
これ、袋もわざわざ手作り(?)されたんですか?(笑)
投稿: 山辺響 | 2017年4月 3日 09:40
山辺響 さん:
ええと、袋のように見えますが、印刷した紙をちょいちょいっと折っただけです ^^;)
投稿: tak | 2017年4月 3日 23:34
ああ、ネタには引っかからなかったけど、そこで騙されている(笑)
投稿: 山辺響 | 2017年4月 4日 19:03
山辺響 さん:
いくらエイプリルフールでも、そこまで手の込んだことはしたくないという、中途半端な面倒くさがりです (^o^)
投稿: tak | 2017年4月 4日 23:56