「石パン」 という食べ物
「堅い食い物」と言えばいろいろある。まず思いつくのがフランスパンとか、堅焼きせんべいとかで、これらは表現するとすれば 「カチカチ系」 だ。
「歯ごたえ系」とでも表現したくなるのが、たくあんなどの漬物で。酢昆布などもその流れだろう。コチコチに堅いわけじゃないが、噛み切ろうとすると、その繊維が難敵になる。その他に「もっちり系」と表現されるものがあり、歯ごたえのある餅などが挙げられる。
しかし多くの場合、「堅くて噛めない」というほどのことはない。そもそも「堅くて噛めない」というほどのものが食品として存続するのは難しい。多くの食品は、そのままでは堅くて食いにくいものを煮炊きするなりして、食べやすくしたものだ。
しかし世の中には、その常識を打ち破る食い物がある。上の写真は、讃岐の善通寺参道にある熊岡菓子店の販売する「石パン」というものだ。先日讃岐に行った時、「金比羅さんは何年か前に行ったし、今回はそこまで足を伸ばす時間がないから、善通寺参りをするか」と、軽い気持ちで寄ってみたのである。
善通寺は四国八十八箇所霊場の第七十五番で、真言宗善通寺派の総本山としても名高い。行ってみると大変立派なお寺で、参拝客も大勢いた。そして帰りに寄って軽い気持ちで買ったのが、この「石パン」である。
熊岡商店は、葛飾柴又の商店街を思い出させるような、昭和の雰囲気溢れる店作り(参照)で、結構人気店らしく、客が列をなしている。私もいろいろな種類のお菓子を買ったのだが、最も衝撃的なのがこれだった。
何しろ、堅くて噛めない。本当に噛めない。まさに「石」である。あまりの堅さに、しばらくは口の中でしゃぶっているしかない。5分ぐらいしゃぶるうちに、少しは唾液でふやけて噛めるようになる。
話のタネにと友人知人にも食べさせたが、「堅い!」と言う人はあっても(というか、100% そう言うのだが)、「まずい」という人はいない。「おいしい、クセになる」という。しかしとにかく堅くて噛めないので、いくらクセになっても量は食べられない。だから太る心配もあまりない。
この食べ物の発祥は、兵隊の非常食料として作られたものであるらしい。なにしろカチカチで水分が少ないから、日持ちがする。1ヶ月は常温でも大丈夫らしい。
「これはパンと思うからいけない。アメ玉と思えばいい」という人もいた。アメ玉のつもりでしゃぶっているうちに、最後にはなんとか食えるようになる。確かにそう思えば、一粒で長く楽しめる。
とにかく、私がこれまで食べた食い物の中では、最高に堅いものだった。
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コメント
う~む、この話は来年の四月一日ネタにとっておいてもいいのでは?
投稿: ハマッコー | 2017年4月24日 09:11
ハマッコー さん:
いえいえ、これは嘘のない本当の話ですってば ^^;)
投稿: tak | 2017年4月25日 00:26