「医薬部外品だから効くんだ」 という CM にビックリ
最近、ビックリ啞然としてしまった CM がある。クルマを運転していたところ、アリナミン V のラジオ CM で、「これって医薬部外品だから効くんだ」というナレーションが流れ、耳を疑った。「じゃあ、医薬品だと効かないってわけ?」と、言いたくなってしまうではないか。ググってみたら、テレビ CM 版もあり、YouTube にアップされている。
改めてよく聞いてみると、CM の登場人物はまず「これって、エナジードリンクと何が違うの?」と呟き、その次に 「医薬部外品だから効くんだ」 と言っている。好意的に解釈すれば、「医薬部外品はエナジードリンクよりも格上のカテゴリーと解釈され、ということは、エナジードリンクは信用できないけど、医薬部外品なら効いてもいいよね」 という意味で言っているのだろう。
しかし「医薬部外品だから効くんだ」という部分だけを切り取ってしまうと、ビミョーに「医薬部外品だから」の部分にアクセントを置いていることもあって、自然な流れとして「医薬品は効かないけどね」と、言外に言っているような印象を残す。こう言っちゃナンだが、どうにも言葉足らずの CM である。
言葉足らずということで言えば、大西英男議員の、例の「がん患者は働かなくていい」という野次のニュースを思い出してしまう(参照)。大西議員という人はこれまでにもいろいろな問題発言をしていて、まあ、よくよく言葉のセンスがない人である。巫女さんよりもずっと公式にしゃべる機会の多い政治家さんのくせに。
ただ今回の野次に関しては、本人は「喫煙可能な店で働かなくてもいいのではないかという趣旨だった」と弁明している。つまり、「がん患者は、なにも煙草の煙がモクモクしている店で働かなくてもいいじゃないか」という意味だったらしい。(参照)
百歩譲ってこの弁解の言い分を認めるとしても、ちゃんと働こうとしているがん患者の就労機会を狭めてもいいのだという意味になってしまい、弁護の余地はない。ただ、前後の話のつながりを無視して、「すべてのがん患者は働かなくてもいい」と言ったように聞こえかねないニュースの伝え方は、ちょっといかがなものかと思わざるを得ない。
去年の「巫女さんのくせに」発言が決して女性蔑視発言というわけではなかったことは、当ブログでも書いている(参照)。オヤジ趣味丸出しの不愉快発言ではあるけどね。
で、「がん患者は働かなくていいよ」という部分や、「巫女さんのくせに」という部分だけを抜き出してセンセーショナルに伝えたいという人は、「医薬部外品だから効くんだ」 という CM に関しても、「医薬品への信頼を揺るがす問題 CM」 (医薬品会社の CM なのにね)として大きく取り上げなくちゃおかしいだろうと思うのだよね。まあ、武田薬品は広告料をどっさりくれるから、言いにくいだろうけど。
【同日 追記】
驚いたことに、アリナミンの CM には「医薬品だから効く」というバージョンもあると知った。「どっちが本当なの?」と聞きたくなってしまうが、アリナミン A(医薬品)と V(医薬部外品)の違いのようで、だったら、V の方は 「医薬部外品でも効くんだ」 ぐらいに言わなきゃ、節操が問われるよね。(本当に効くかどうかは別として)
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コメント
薬効が確かな順に、
医薬品
医薬部外品
その他健康食品
ということを、消費者が知っているという前提で作られているCMですよね。
僕は社会に出てしばらくしてから知ったなあ。
そのあたりも考慮したCMを作ってもらいたいですね。
デザインでいうところの、ユニバーサルデザインのように。
投稿: らむね | 2017年5月24日 01:21
らむね さん:
「薬効が確かな順」 かどうかにについては敢えてふれませんが、その順番を知っている私も、ナレーションを聞いて 「なぬ!?」 と驚きましたから、少なくとも 「ユニバーサル」 な CM とは言えませんね。
投稿: tak | 2017年5月24日 07:15
私も、結構言葉の「舌足らず」の言い方には過敏に反応するタイプですが、この「医薬品部外品だから効く」というCMに関しては全く違和感を覚えなかったです。言われてみれば、takさんのおっしゃる通りなのですが。
遥か昔に、化粧品に「医薬部外品」が初めて登場した時、売り子さんに(今は化粧品カウンセラーと言いますね。)勧められて使用したら、ひどくかぶれてしまったことがあります。それまで化粧品で肌トラブルなど皆無だっただけに、「医薬部外品」とは「医薬品」に次ぐ作用・副作用をなすものだと思い知りました。
なので、「普通の化粧品」や「健康食品」は求められる効果は「穏か」または「効果あまりなし」、その代わり副作用のようなトラブルも少ない、対して、「医薬分外品」は
比較的「しっかりとした効果」が期待できるが、その分トラブルリスクも増すもの、という認識でおりました。
「医薬部外品だから効く」という言葉に対して、比較対照物が「医薬品」である可能性が当然有り得ることに思い至りませんでした。確かにこの言葉はおかしいですね。
投稿: K.N | 2017年5月25日 10:04
K.N さん:
「医薬部外品って、結構キツいんだよね」 ということを実感的にご存じの方にとっては、さらりとスルーできる表現かもしれませんね。
ただ、私なんかあまり病気しなくて、クスリ関係には疎いもので、「何それ?」 と思ってしまいます。
フツーの感覚だと (本当に効くかどうかは別として)、「医薬品だから効く」 「医薬部外品でも効かないわけじゃない」 ぐらいの認識でしょうから 「医薬部外品だから効く」 という言い方は、ちょっと衝撃的ですらありました。
それとも、日本人の大多数の認識は 「医薬部外品は効く」 「医薬品はもっと効く」 ということなのかなあ。
日本人、薬好きだから 「そんなの常識」 と言われたりして。
(コメントのミス入力に関しては、修正させていただきました)
投稿: tak | 2017年5月26日 02:12