難読中の難読地名「十六島」
一泊二日で出雲に出張し、今帰って来たところだ。出雲といえば、一昨年 2月に行った「出雲市十六島町」という地名の町を思い出す。出雲大社の後背の山をぐるっと時計回りに回り込んで日本海岸に出て、さらにその先に角のように張り出した、ちょっとした半島状の断崖絶壁に囲まれた海が「十六島湾」という。その辺りが「十六島町」だ。
上の写真が一昨年冬に撮った十六島湾の写真で、対岸に見えるのが出雲大社の後背の山地である。つまり、絶海の孤島ではないが、陸の孤島と言ってもいいというか、その言い方がものすごく似つかわしいところだ。
で、問題は「十六島」の読み方で、これがとてつもない難読地名なのである。「さて、何と読むでしょう」というクイズを出されても、フツーに推し量ることができるようなものじゃないから、初めから正解を書いておく。「うっぷるい」と読むのだ。私の知る中でもトップランクの難読地名だ。
この地名を初めて聞いた時、アイヌ語が語源なのかと思ったほどで、実際にアイヌ語語源説というのもある(参照)。しかし北海道からあまりにも遠いので、ちょっと信じがたい。東北や北陸ぐらいまでは、アイヌ語を語源として考えるとしっくり来る地名がいくらでもあるが、出雲はいくら何でも遠すぎる気がする。
同様に朝鮮語の「巨岩」を意味する「ウルプロイ」が語源だとする説もあるが、これもまたにわかには信じがたい。こうした 「外国語で似た言葉がある」 というもっともらしい語源説は、言い出したらキリがない。
で、いろいろ調べてみると、「打ち振るい」が語源という説がある。十六島特産の「十六島海苔」を食すと、災いを振るい落とすというので、「打ち振るい海苔」と言われ、それが十六島の地名となったというのである(参照)。
まあ、そこまでもっともらしくこじつけなくても、冬には地を震わすほどの荒波が打ち付けるということから、「打ち振るう」が「うっぷるい」の語源になったとういう説は少しは信憑性があるように思われる、日本の古代では、今の「はひふへほ」を「ぱぴぷぺぽ」と発音していたわけだし、今でも複合語では 「風邪っぴき」 などと半濁音が復活してしまうことがある。
湾の中なら波も静かになるんじゃないかと考えられるかもしれないが、なにしろ西に向かって開けた湾なので、冬の季節風をまともに受けて、しかも湾の奥の岩場に集約されてしまうので、すごい波になる。岩海苔取りも、ちょっと荒れたら命がけだ。
また、出雲風土記にも出てくる 「於豆振 (おずふれ、おつふり)」が「うっぷるい」の古い形の地名であるとして、「小津」という地名から変化したものとの説もある(参照)。これもまた捨てがたい。
で、その語源はいいとして、どうしてまた「十六島」という漢字が当てられたのかという疑問も残る。何しろ、この辺りにはそんなような島なんてないのである。これは本当にわからない。もしかしたら、岩海苔を採る岩場を「シマ」と言って、それが沢山あるから「十六島」という漢字が当てられたのかもしれない。
というわけで、難しい話はこのくらいにして、十六島特産の岩海苔「十六島海苔」は、本当においしいという話で締めたい。出雲に旅すると、あちこちのちょっとした店で食べることができるし、土産物屋でも買える。今回は買い忘れてしまったので、ちょっと残念な気がしている。
| 固定リンク
「言葉」カテゴリの記事
- 画びょう、押しピン、プッシュピン・・・ 同じ物? 別物?(2024.09.03)
- 「異にする」を「いにする」と読んじゃうことについて(2024.09.01)
- 茨城の「いばらき/いばらぎ」より根源的な問題(2024.08.26)
- 「流暢」「流ちょう」「悠長」、そして「流調」(2024.08.21)
- 感じのいい人って、そんなこと言うんか!?(2024.08.12)
コメント