シンバルを土に埋めるという荒技
1週間前の話になってしまうが、TBS ラジオの『日曜天国』という番組に、ドラム奏者の、むらたたむさんという女性がゲストで登場していて、「シンバルを土に埋めると、いい音になるらしい」という話が出た。ドラマーの中には、実際にそうする人がいるらしい。
「土に埋めるなんて、大島紬みたいだな」と思ってしまった。大島紬というのは奄美大島の独特の土壌の中に埋めることで、染料が化学反応を起こしてあの深い色合いが出るという。シンバルも土に埋めて多少錆びさせてからの方が、いい音になると主張する人がいるというのである。
実際問題として新品のピカピカのものより、いい具合にサビが浮いて熟成されたシンバルの方が、シブい音が出るような気もする。そういえば、いい感じのドラマーのシンバルで、ピッカピカの新品というのはあまり見ない。
しかし、本当のところはどうなんだろう。聞き比べたこともないし、単なる都市伝説に過ぎないような気もする。一流のドラマーのシンバルがピカピカじゃないのは、単に年季が入っているだけという方が説得力ある気もするし。
それに土に埋めるにしても、1週間やそこらではあまり変わらないだろうから、結構長期間埋めておかなければならないだろう。なかなかスパンの長い話で、そんなことをする度胸のある人はそんなに多くないんじゃあるまいか。
ここまで考えて、「シンバルを土に埋める」というのは、大島紬というよりジーンズの「ケミカルウォッシュ」のようなものだと気付いた。放っておけばそのうちに実現できる効果を、時間をかけずに無理矢理獲得するという点で、とても似ている。
ケミカルウォッシュというのは、昔の旧制高校のバンカラ学生が、制服や帽子、マントを石でこすったり、手拭いを醤油で煮しめたりしていたという伝統と共通すると思っている。ケミカルウォッシュや、その原型のストーンウォッシュは、日本で誕生した加工法だからね。だから「シンバルを土に埋める」というのも、とても日本的な発想かもしれない。
そもそも、楽器を土に埋めるなんていうのは、シンバル以外には考えられない。同じ金属でも金管楽器なんか埋めたらとんでもないことになるだろうし、そもそもトランペットがサビサビだったりしたら恥だろう。ましてや自分の楽器を土に埋めるギタリストなんていない。
シンバルを土に埋めるという荒技、実際にやってみた人がいたら、是非コメント欄でその効果をレポートしてもらいたい。
【2023年 5月 23日 追記】
実際にやってみた上で、YouTube に公開している人がいた。「使用前/使用後」の音も比較できる。実際に聞いてみると、確かに「枯れていい音」になっている気がする。
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コメント
へぇ~、土にねぇ。検索したら結構ヒットしたわ。あたしはドラムはあんましやったことないんだけど、PAを通して聞いているぶんにはそれほど違いがわからなくても、プレイヤーからしたら、新品のシンバルのシャンシャンした音って、そばで生音で聞いてると耳障りなのかもね。ギターも古いほうが木が枯れていい音がするっていうのはあるし、ギターの弦も切れる寸前が「枯れた音」でいいっていう人もいるわよね。
あたしは不器用だからあんましギターはうまく弾けないけど、ドラムだったら音階があんましないからリズム感だけでいけちゃうかもね。今からドラム始めてみよっかな!とりあえずスネアとシンバルだけで。質屋さんで買って(笑)
投稿: のうさぎちゃん | 2017年8月21日 22:28
のうさぎちゃん:
私はギターを弾いて半世紀以上になりますが、古い方がいいと思ったことはないですね。今使っているギターは 30年ものですが、とくに音がよくなったとは思わないです。
弦は音の違いがあって、パフォーマンスの途中で 1本切れて急遽張り替えた時なんかは、新しい弦だけ妙にシャリシャリ染ますけどね。
投稿: tak | 2017年8月22日 00:26