「エスカレーターの手すりにつかまろう」 という気持ち悪いポスター
「うひゃあ!」と思ってしまったポスターがある。日本民営鉄道協会に加盟する鉄道各社や商業施設が展開しているらしい「みんなで手すりにつかまろう」というキャンペーンのものだ。降りエスカレーターの右側にブルーのスーツ姿の男性、左側にピンクのコート姿の女性が異様なほど整然と並び、手すりにつかまっている。
「こんな世の中はゴメンだ!」と思うのは私だけじゃないはずだ。マジでファシズムを感じて気持ち悪くなってしまう。いったいどんなつもりで、こんなデザインのポスターを採用したのだろう。「エスカレーターに乗ったら、片側空けずにしっかり並んで手すりにつかまれ」と主張する人たちって、こういうのを見て心地良く感じるのだろうか。
一方、日経ビジネスは "「エスカレーターで歩くな」 と無茶言う人の末路 江戸川大学の斗鬼正一・社会学部現代社会学科教授に聞く" という記事を載せていて、私はこっちの記事の内容の方がずっとしっくりくる。
記事中で斗鬼教授は、エスカレーターにおける「片側空け」は世界中の先進国の都市部に見られる自然発生的なルールであるとしている。私の経験則からしても、それはまったく特殊なことじゃなく、取り立ててどうこういうほどのことでもないと思っている。
鉄道各社は「片側を歩いたり走ったりすることで事故につながる」と言っているが、かといって両側を塞ぐことで安全が確保されるかと言ったら、それはきわめて疑問だと思う。空いたエスカレーターの途中の一つのステップだけ両側がふさがれていたとしたら、私なんか「こいつら、どんな悪意があるんだ?」と、思ってしまう。
「中には急ぐ必要のある人もいるんだから、ちゃんと通してあげなよ」と思ってしまうのだ。私個人としては、「片側を十分に空ける」乗り方の方が、ずっと安全だと思う。接触の危険があるのは、狭い隙間を無理に駆け上がったり駆け下りたりする時だ。
件の記事は、「とりあえず新しいルールが作られるまでは、歩きたい人は止まっている人に気をつけて、止まっている人も歩いていく人のためになるべくスペースを空けるなど、互いに思いやりながらエスカレーターを使うしかなさそうですね」という言葉で結ばれているが、私はそれに全面的に賛成するものである。
ちなみに思いっきり個人的な感覚で言ってしまうと、私は「エスカレーターに乗るとき、皆、なんでわざわざ止まるんだろう?」と不思議に思っている。それまで歩いてきたんだから、わざわざ止まる方がずっと面倒くさい。
これはまあ、私が幸いなことに足腰丈夫なので、「ことさらに止まるよりは歩き続けて、さっさと登り切る方がずっとせいせいする」と思っているからこその、個人的わがままだとは十分承知している。だから「わざわざ止まるんじゃねえよ!」なんて叫んだりは決してしない。
しかし空港なんかによくある「歩く歩道」だと、「こんなので、なんでわざわざ立ち止まるんだろう?」と、マジで不思議なのだよね。
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コメント
これは駅や商業施設に掲示されているのでしょうか?某国のマスゲームを見るような、またはウォーホル等のポップアートが持つ批評精神というかブラックユーモアをひしひしと感じますね。
おそらく、人々がビジュアルからメッセージを読み解く能力が低下している昨今、このくらい「きっついわ~」な感じでないと伝わらないと思ったのでしょう。このくらいどぎつくやれば、ほとんど瞬間的にしか目に触れない駅のポスターであっても、「ああ、なにかあったらこっちが困るんだから、手すりを持ってちょ!って言いたいんだななるほど」と伝わるでしょうね。いわはや。
投稿: 萩原ゲンセンカン主人 | 2017年8月14日 15:01
萩原ゲンセンカン主人 さん:
>「ああ、なにかあったらこっちが困るんだから、手すりを持ってちょ!って言いたいんだななるほど」
私が受け取ったメッセージも、これでした。
「ウチとしては、言うだけは言ってるんだから、何かあっても責任追及なんかしないでね」 ってことですね。
投稿: tak | 2017年8月14日 15:21
確かに気持ち悪いポスターですね。甲子園球児が並んで入場行進するのも気持ち悪いと感じてます。
オリンピックの入場行進はいつの間にかバラバラになって歩くスタイルになったので結構なことです。
投稿: ハマッコー | 2017年8月15日 21:01
ハマッコー さん:
甲子園の入場行進は、あれ、股を不自然に高く上げ、その結果上体を微妙に左右に揺らして、その上で一糸乱れず揃ってるので、実にカッコ悪く、気持ち悪いです。
高野連の趣味の悪さが、あの入場行進に集約されているような気がしています。
なぜか日本では 「股を高く上げて!」 というのが奨励されるようですが、あれはダサいです。北朝鮮の軍隊はまた極端すぎですが。
投稿: tak | 2017年8月16日 06:10
えっとですね このポスターは 元々 片側の男性だけと 女性だけバージョンがあってですね、「エスカレーターにのるときは 片側を開けましょう。」というものだったのです。 男性版が関西向け 女性版が関東圏むけですかね。 (笑い)
というのは冗談ですが、私は片側見事にが空いたエスカレーターって このポスターと同じくらい気持ちが悪いです。 件の記事の結論にも イマイチ賛成できなくて、エスカレーターしかないところは仕方がないですが、階段併設ならば 「階段を歩けよ 。」と思ってしまいますね。
と 言いつつわざわざブロックする人も理解できませんが。
投稿: Sam.Y | 2017年8月16日 21:43
Sam.Y さん:
見事に片側が空いているのに、歩いて昇る人が誰もいなくて、片方に乗り切れない人の行列待ちができているというのも、確かに気持ち悪いですね。あれは異常です (^o^)
投稿: tak | 2017年8月19日 22:37
福祉に関わる仕事をしております。鉄道会社がこのようなキャンペーンをしているのは、障害者団体からの要請に応じているのです。視覚障害者や右側か左側限定で並ぶことができる人など、障害には色々なパターンがあり、エスカレーターでは歩かないというルールが、全ての障害者にとって安心できるのです。鉄道会社が、なぜ正直にPRしないのかはわかりませんが。
投稿: ニシケン | 2017年8月21日 14:16
ニシケン さん:
そういう事情があるとは知りませんでした。それならそういうことで、ちゃんと説明すればいいのにと思います。
時々、左側で止まり、右側が空いているエスカレーターで、右側に止まって乗っている人がいますが、そんな時は、左側の人がそのステップのところだけスペースを作って、歩く人を通してあげたりしていますね。
慣れさえすれば、こうした配慮もできると思います。
投稿: tak | 2017年8月22日 00:21