宝くじは「夢を買う」のだという大衆心理
世の中には「宝くじ」というものがあり、とくに「年末ジャンボ」とかいうのを毎年楽しみにしている人もいる。「そんなもの、当たりゃしないよ」というと、「いいんだよ。宝くじというのは、『夢』を買ってるんだから」などと、発売元の宣伝文句を素朴に信じているようなことを言う。
「同じ金を出すなら、夢なんかより現実を買いたい」と、至極当然のことを言うと、「あんたは、夢がないなあ」なんてなことをのたまう。いや、それは完全に逆だろう。私は夢ならちゃんと持っているから、金で買う必要なんかない。そっちこそまともな夢がないから、金で買おうとしているんだろうに。
その昔、知り合いの男がものすごく分厚い宝くじの束を持っていた。「どうしたのか」と聞くと、「年末ジャンボを 10万円分買った」と言う。なんとまあ馬鹿なことをするものかと思っていたところ、そいつは正月早々、会社の金を使い込んでいたのがバレてクビになり、その年の暮れには刑務所送りになった。
使い込んだのは、2000万円あまりだという。彼は使い込みがバレる前に年末ジャンボで使い込んだ分の金額(あるいはそれ以上)を当てて、こっそり返そうとしていたのだろう。しかし、1000円分買えば 20万円当たるというならともかく、10万円で 2000万円がチャラになるなんてことはまずない。そんなこともわからない頭の構造だから、会社の金も平気で使い込む。
それにしても、宝くじというのは本当に当たらない。私も若い頃にほんの数回だけ買ったことがあり、1度だけ 1000円で 2万円(だったかな?)当たったが、すぐに「宝くじは当たらないもの」と悟り、それ以後は手を出したことがない。ということは、私の宝くじ収支は非常に稀なことに、少しだけ黒字のはずだが、それは「ほんの数回」で止めたからだろう。長く続けたら、大抵大赤字になる。
宝くじファンは「買わなきゃ当たらない」と言うが、「買ってもまず当たらない」という確率論と経験則を信じようとしない。これだけ当たらないというのは、相当高い寺銭(正式には「控除率」というらしい)を取っているのだろうと思っていたが、最近急に思い立って、ネットで調べてみたところ、驚異的な数字と知った。控除率はこんな具合だ。(参照)
日本の地方公共団体が運営する宝くじ - 55%
スポーツ振興くじ(toto) - 50%
(中略)
日本の公営競技 - 20%〜30%前後
「日本の公営競技」 というのは、要するに競馬や競輪のことだ。作家の安部譲二氏が「中央競馬の寺銭はヤクザよりひどい」みたいなことを言ったと聞いたことがあるが、それと比べても、宝くじの寺銭はひどすぎる。
要するに、宝くじを 1000円買ったら、平均して 450円しか戻ってこないということだ。たまに数万円ぐらい当たってウハウハ言ったとしても、続けているうちに半額以下しか回収できない。「夢を買う」という宣伝文句の実体は、「はかない夢しか買えませんよ」ということである。
宝くじを買い続ける人というのは、「自分だけは特別」で、平均的確率とは別の次元で生きているから、「いつかは当たる」と信じているのだろう。「自分だけは交通事故に遭わない」などと信じるのを「正常化の偏見(normalcy bias)」というが、実際は宝くじで一等賞に当たるよりも交通事故で死ぬ確率の方が高い。
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コメント
私は一度も宝くじを買ったことがない。
あれは買った瞬間に55%失う痛みを「夢?」が覆い隠してしまう。もう麻薬ですね。
といっても他人が買うのは大賛成です。
投稿: ハマッコー | 2017年9月20日 19:55
まさに「人」の「夢」で「儚い」を現実的に実施しているショーバイですね~。
と言うか、周りで当たったって話を聞いた事がないのですが、本当に当たってるのかなぁ(苦笑)?
投稿: Senna | 2017年9月20日 20:09
ハマッコー さん:
一度も買ったことがないのは、賢い選択ですね。
投稿: tak | 2017年9月21日 06:36
Senna さん:
当たってる人も、確かにいるんでしょうけどね。
その幸運が自分に回っていることを期待しているうちに、大損するわけでしょう。
投稿: tak | 2017年9月21日 06:39