不倫報道を巡る、週刊誌とワイドショーのアヤシい関係
一昨日の「政治家の不倫という話題に群がる大衆心理」という記事で私は、政治家の不倫報道には興味がないが、「この種の話題に群がりたがる大衆心理ということだったら、かなり興味がある」と書いた。というわけで、今日はその続編である。
この記事に、ハマッコーさんから「政治家やタレントの不倫という話題に群がるのはテレビ局や週刊誌であって一般大衆ではないと思いますよ」というコメントがついた。これは鋭い指摘で、実は私もそんなような気はしていた。
ハマッコーさんは、「個人的には政治家やタレントの不倫の記事が載っているからと言って週刊誌に 400円も払う気は全くありません」と書かれている。確かにその通りで、週刊文春の発行部数は公称 68万部とされており、この数字を素朴に信じたとしても、日本人の約 175人に 1人しか読まない。号によって多少の変動はあっても、読んでいるのはどんなにオマケしてみても、人口の 1%以下だろう。
では、どうしてそんなにまでマスコミは、スキャンダルのスクープ合戦にしのぎを削るのか。
多くの日本人は、この種のニュースをテレビのワイドショーで知ることになる。まともなニュースでは、あまり取り上げないからね。ということは週刊誌にとって、テレビのワイドショーで「今週の 『週刊〇〇』 によりますと……」という枕詞で取り上げられることは、我々が思っている以上に重要な意味をもつのだろうと思われる。
要するにこれって、結構な宣伝効果があるはずなのだ。広告費を一銭も払わなくても、テレビが勝手に、しかも大々的に宣伝してくれるのだから、政治家やタレントのスキャンダルのスクープは、文春や新潮にとって、ものすごく 「おいしい」。
その証拠に、スキャンダル・ネタを重視する文春、新潮は、ワイドショーが盛んに宣伝してくれるおかげで、週刊朝日、サンデー毎日などよりずっと発行部数が多くなっている。読売ウィークリーなんて、とっくの昔に廃刊に追い込まれてるし。つまりこの種のスクープ合戦は、読者の関心に応えるという以上に、提供する側の都合が優先している。
芸能ネタ専門みたいな女性週刊誌は、タレントの不倫を報じてワイドショーに乗り、宣伝効果を上げられるが、文春や新潮などは媒体の性格上、ちょっとつつけばいくらでも湧いて出てくるタレントのスキャンダルをのべつ報じるわけにもいかないので、代わりに政治家のスキャンダルを報じることになる。(タレントのスキャンダルも全然報じないわけでもないようだが)
一方、テレビ局が週刊誌に載ったネタをワイドショーで取り上げるのは、コストをかけずに、もっともらしい、しかも小難しい政治経済ネタなんかより圧倒的に 「わかりやすい」 ネタで、放送の時間帯を埋められるからだ。つまり業界内の都合で、互いにもちつもたれつのメリットがある。それだけのことなのだろう
スキャンダル・ネタが週刊誌とワイドショーに、読者や視聴者の「知りたい」というニーズを遙かに上回る勢いで、というか、まったく別の次元のパワーでばかすか飛び交うのは、こうした事情からとしか思われない。
中には不倫の当事者の政治家やタレントをもっともらしく非難することで、いかにも「自分は清く正しい日本の庶民」と思い込んで自己満足したり、TV カメラに向って深々と頭を下げられると、自分に向って頭を下げられたと勘違いして溜飲下げたりする人もいるのかもしれない。でも、それって具体的には何の得にもなっていないよね。
その昔「指三本」 の宇野宗佑首相の辞任につながる不倫を大々的にスクープしたのは「サンデー毎日」で、その当時の編集長を務めていたのは鳥越俊太郎氏だった。その鳥越氏が東京都知事選に出馬して、「女子大生との不適切な関係」なんてスキャンダルを書かれたのだから世話はない。
まことにもって「因果は巡る」である。
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コメント
もっと言うならば「不倫報道を巡る、週刊誌とワイドショー及びコメンテータのアヤシい関係」と言ったことでしょうか。
最近暇なので、そういう番組をつい見ちゃいます。
コメンテーターが何を言うか少々興味があるからです。
みんな番組の流れに逆らわないように慎重に言葉を選んで発言しているだけですね。それで結構な金子が手に入るのですから相当オイシイ。
「私は聖人じゃないので他人の不倫にコメントしません」
と言っちゃったら、翌日から居なくなりますね。
投稿: ハマッコー | 2017年9月14日 00:28
ハマッコー さん:
なるほど。
当たり障りのないコメントをしていればいいというのも、結構 「おいしい」商売なのでしょうね。
投稿: tak | 2017年9月14日 19:00